V12+PHEV を搭載する孤高の存在でありフラッグシップ、レヴエルトを公道で試乗。サーキットで放たれた大パワーからは想像できないほど日常域にもフィットしてユーザビリティは高く、この2面性こそが旗艦スーパースポーツの真価と言えるだろう。

フラッグシップの真価はオンロードでも盤石

1千馬力を超えるスーパーカーを都内で乗って一体何がわかるのか？ と考える人は少なくないはず。だが筆者はレヴエルトをすでにサーキットで試乗済み。となれば気になるのは一般的な速度域の部分である。そう、今回は絶好のチャンスだったわけだ。

宇宙船を代表する航空宇宙エレメントからの着想と伝統のデザイン手法を織り交ぜることで、アイコニックなバックスタイルを確立。

富士で試乗したレヴエルトの走りは図抜けていた。ウェット路面＋1025psという尻込みしそうな状況がほとんど気にならなかったのだ。最高速こそ自重して230km／hまでに抑えたが、それくらいなら余裕たっぷり。ひとつ気になったのはV12エンジンの迫力が控えめに感じられたこと。これはヘルメットを被っていたこともあるはずだが、せっかくのレブリミット9500rpmの官能性も、サーキットでは電動化で抑え込まれている（？）という気がしたのである。

V12気筒エンジンと3基の電気モーターにより、システム合計出力は1015psを発揮。0→100km/h加速はわずか2.5秒を記録する。

ところが今回、都内で走らせたレヴエルトの印象はサーキットとは違った。けたたましく目覚め、背後で唸るV12の存在感は圧倒的で、ストラーダ（標準）で街中を走らせている限り、エンジンが主でモーターが従という本来あるべき関係性が感じられたのだ。

統一感のあるデザインと一貫性のあるカラーとグラフィックを採用したユーザーインターフェイス。走行コマンド操作は新しいユーザーエクスペリエンスが採用される。

一方サーキットではほとんど味わえなかったチッタ（EV走行モード）にも感銘を受けた。スーパーカーを電動走行させたら極太タイヤが巻き上げる小石や風切り音等々、あらゆるノイズが車内にこもりそうなものだが、レヴエルトはかなり静かで、乗っている車種を忘れさせるほどだった。

先代のアヴェンタドールよりもステアリングホイールに操作系コマンドが集中。

チッタモードではノイズの少なさと比例するように乗り心地も良好だったが、可変ダンパー装備のクルマによくあるただ減衰力が落ちてフワつく感じではない点が素晴らしかった。そもそもカーボンファイバー製のモノコックの減衰がよく効いているので、アシが引き締まっている印象はそのままに、不快な入力だけが吸収されている感じなのだ。

ダッシュボード中央上部には縦型のタッチスクリーン、助手席には横型のサブスクリーンが備わる。

もうひとつ感銘を受けたのは、ACCの完成度だった。ステアリングコラムの左下に生えた小さなレバーで操作することからもアウディ由来とわかるシステムは、性能的には特筆すべきものではない。けれど他のスーパーカーでは普通のレベルに達しないものも多かったので、レヴエルトのそれは安心感を覚える。渋滞時の再発進も完璧に決めてくれるし、割り込みの感知にもしっかり対応できている方だと感じられた。

メーターパネル右側にあるバッテリーメーターは75％くらいの残量でEV走行可能距離6kmと示されていることが多かった。心許ない数字に思えるが、回生とエネルギーの放出を積極的に行なうシステムのようで、EV走行モードで電力を使い込まない限り、バッテリーの性能に不満はなかった。スーパーカーらしくEV走行でもずいぶんとパワフルだったが、それでも街中ではちゃんとハイブリッド（PHEV）車として機能しているのである。

21世紀のイタリア車はおしなべて信頼性が格段にアップしている。それでも日本車やドイツ車ほどではないという思い込みが抜けない筆者にとって、複雑な機構を内包しているレヴエルトのいきなりの完成度には驚かされるばかりだった。しかもサーキットでは一線級のパフォーマンスを多くのドライバーが容易に引き出すことができるのである。

オフィシャルテクニカルパートナーを結ぶブリヂストンが専用開発したハイパフォーマンスモデル用の「ポテンザ・スポーツ」を装着。

かつてのスーパーカーは普段使いで辛く、全開走行でも心許なかった。その部分が代替わりの度に改善されてきたわけだが、レヴエルトでは独自の電動化システムによってピンとキリの部分が長足の進歩を遂げていたのである。ピークの性能の向上だけでなく、全体的なカバレッジが広がった点にこそ最新のフラッグシップ・ランボの真価があるのだ。

【Specification】ランボルギーニ・レヴエルト
■車両本体価格（税込）＝65,430,000円
■全長×全幅×全高＝4947×2033×1160mm
■ホイールベース＝2779mm
■トレッド＝前：1720、後：1701mm
■車両重量＝1772kg
■エンジン型式／種類＝ー／V12DOHC48V
■内径×行程＝95.0×76.4mm
■総排気量＝6498cc
■最高出力＝825ps（607kW）/9250rpm
■最大トルク＝725Nm（73.9kg-m）/6750rpm
■モーター形式／種類＝ー／永久磁石同期電動機
■モーター最高出力＝前：150ps（110kW）※一基あたり、後：150ps（110kW）
■モーター最大トルク＝前：350Nm（35.7kg-m） ※一基あたり、後：150ps（15.3kg-m）
■バッテリー種類＝リチウムイオン電池
■トランスミッション形式＝8速DCT
■サスペンション形式＝前後：Wウイッシュボーン／コイル
■ブレーキ＝前後：Vディスク
■タイヤ（ホイール）前：265/30ZR21、後：355/25ZR22

問い合わせ先＝ランボルギーニジャパン TEL0120-988-889