2024年4月から一部地域で運用が開始されたライドシェア。一種免許の運転者が自家用車に人を乗せて有料で運ぶことができる新たな取り組みとして注目されたり報道されたりしていることから、この機会にライドシェアのドライバーとしてデビューしてみたいとを考えている方も多いのではないのでしょうか。今回は、ライドシェアのドライバーになるための条件について解説します。
日本版ライドシェアとは?
国土交通省の発表によると、自家用車や一般ドライバーが有償で運送サービスを提供すること(自家用車活用事業)がライドシェアとされています。
道路運送法第78条第3号の「公共の福祉のためやむを得ない場合」を適用し、有償で運送サービスを提供すること(自家用車活用事業)許可をする制度となっています。なお、パブリックコメントの意見を反映し、現時点(2024年4月現在)ではタクシー事業者の管理の下で自家用車活用事業を行わなければなりません。
ライドシェアのドライバーになるための条件とは?
ライドシェアの解禁のニュースやライドシェア開始の報道などを見ると、一般のドライバーがタクシー事業をできると話題になっていますが、ライドシェアのドライバーになるためには、いくつかの条件があります。
国土交通省が公表(2024年3月29日時点)している条件は次のとおりです。
【自家用車ドライバーについて】
1.第一種運転免許(初心運転者期間にあるものを除く)または第二種運転免許を保有し、自家用車活用事業に従事する日前2年間において無事故(自動車の転覆、転落など、事故報告規則第2条に定める「事故」をいう)であり、かつ、運転免許の停止処分を受けていないこと
2.事業者は、運輸規則第36条第2項の規定に基づき行うものと同様の研修(大臣認定講習を含む、ただし接遇等必要な研修科目の受講が必要)および運輸規則第38条に基づき行うものと同様の指導監督を行うこと
3.事業者は、事業者の名称、自家用車ドライバーの氏名、運転免許証の有効期限および作成年月日が記載された運転者証明(電磁的記録でも可)を自家用車ドライバーに対して発行し、携行させること
上記の条件を満たすとライドシェアのドライバーになることができます。
つまり、直近2年間無事故で、免許停止処分を受けていない人が、法律に定められている研修や指導を受けて選任され、事業者が発行する運転者証明を携行しなければならないということです。
そのため、ライドシェアのドライバーになりたいと思った翌日から乗務を開始できるわけではありません。
乗客を乗せるからこそ高い安全意識や対応力が求められる
ライドシェアサービスが始まったものの、ドライバーの安全意識や対応力、乗員・乗客の防犯対策など、問題点や課題は山積みです。
教習指導員の資格を持ちタクシードライバーの経験がある筆者は、ライドシェアのドライバーについて、安全意識や緊急時の対応力を向上させることが優先すべき課題なのではないかと考えています。
今現在のタクシードライバーを見ると、速度超過をしたり、車線をまたいで走行したり、急に止まって周囲の安全確認をせずに発進したりするなど、周囲の交通を妨げる運転をしている乗務員を見かけることがあります。また、乗客と乗務員のトラブルが報道されると、クルマという密室空間が怖いと感じる方もいるのではないでしょうか。
そのため、まずはドライバーの安全意識やトラブル対応を含めた緊急時の対応力を向上させることが重要だといえるでしょう。
現行のライドシェアドライバーの条件を見ると、直近2年間無事故で、必要最低限の研修さえ受ければ、ライドシェアのドライバーとして業務を開始することが可能です。しかし、この条件ではドライバーの安全意識やトラブル対応力を向上させるのは難しいでしょう。
ライドシェアという新たなサービス・制度をきっかけに、運転免許を保有している全ての人の運転技術や安全知識および意識の向上を図る実技講習や研修などを実施することが、より安全で安心な交通社会・ライドシェアサービスを実現する第一歩なのではないかと筆者は考えています。