【海外試乗】世界初の油圧連動式エアサスペンションを採用。究極のパフォーマンスとラグジャリーを実現したスーパーSUV「ランドローバー・レンジローバー・スポーツSV」

レンジローバー・スポーツに新たなモデルが加わった。ブランド史上最もパワフルかつダイナミックで、最高のパフォーマンスと比類なき走破性を備えたという“SV”の実力は如何に?

サーキット走行も許容するスーパースポーツSUV

新型レンジローバー・スポーツSVでポルトガルのアルガルヴェ・サーキットを走る。
もっとも、いくらハイパフォーマンスモデルとはいえ、相手は全高1.8mオーバー、車重は2.5トンの巨漢である。ひとたびタイヤのグリップが失われたら、どんな挙動を示すか想像もつかない。そこで私は、やや慎重すぎるペースから走り出し、徐々にスピードを上げていくことにした。

アンチロールバーを持たない6Dダイナミック・エアサスペンションは各輪が自由にストロークできるため、モーグルコースを走破するのはお手のもの。このときは標準装備のパイロットスポーツ・オールシーズンのタイヤを履いていた。

しかし、サーキット走行用に装着したミシュラン・パイロットスポーツS5はなかなか音を上げる気配を見せない。やがて、かすかなスキール音とともに、ステアリングやシートからグリップの抜け欠ける予兆が伝わってきた。そこからさらに攻めれば、ときには後輪が、ときには前輪がおだやかにスライドし始めるが、ステアリングやスロットルペダルを使ってこれをおさめるのは実に容易。しかも、このときはかなりの横Gが身体にのしかかっていた。

車名は先代のSVRからSVに改められたが、シリーズ中のトップパフォーマーとの位置づけは不変。V8エンジンは635psと750Nmを発生。0→100km/h加速は3.8秒、最高速度は290km/hをマークする。

「このタイヤを装着している状態では最大1・3G、標準装着のパイロットスポーツ・オールシーズンでも1.1Gを記録します」
助手席に腰掛けたインストラクターが、私の心を読み取ったかのようにそう話しかけてきた。

オプション設定される23インチ・カーボンホイールは世界初の装備。カーボンセラミックブレーキは世界最大級のパッド面積を誇るという。

1.3Gといえば、最新のスーパースポーツカーに匹敵する数字。これを、本格的なオフロード性能も確保しながら達成したのだから、その技術力は驚異的といって差し支えないだろう。
実は、私が必要以上に慎重なペースでサーキットを走り始めたことには理由があった。これに先だって、レンジローバー・スポーツSVで公道を走っていたのだが、しなやかな足回りがもたらす乗り心地があまりに快適だったため、「これはサーキットでの限界走行では腰砕けになりかねない」と予想していたからだ。ところが、私のそんな心配が杞憂に終わったことは、前述のとおりである。

4本出しのテールパイプはカーボンファイバーのカバー付き。アクティブ・エグゾースト・システムから発せられるエンジン音が常に控えめなところも好ましいところだ。

なぜ、レンジローバー・スポーツSVは、公道でも驚くほど快適なのにサーキット走行も楽々とこなせるのだろうか? その最大の秘密は、新開発の6Dダイナミック・エアサスペンションにあるといって間違いない。
これは、サスペンションダンパーの油圧回路を前後左右で結びつけることにより、ロールやピッチといったボディの動きを自ら抑えるシステムのこと。その基本的な考え方はマクラーレンのプロアクティブ・ダンピングコントロールと共通している。さらにいえば、このダンパーシステム自身がロールを抑える効果を持っているため、アンチロールバーが不要となっている点もマクラーレンと同じだ。

上質な素材で品よくまとめられたインテリア。スポーティなデザインのSVパフォーマンス・フロントシートにはマッサージ機能も装備。13.1インチのタッチディスプレイを用いるインフォテイメント系は最新世代のものを用いる。

おかげでレンジローバー・スポーツSVは圧倒的な万能性を発揮。ちなみに、アンチロールバーを持たない6Dダイナミック・エアサスペンションにはオフロード走行時のロードホールディング性を改善する効果もあるので、1輪が浮き上がるような過激なモーグルコースもなんなく走破できた。

BMWと共同開発した4.4LV8エンジンは絶対的な性能が優れているだけでなく、いついかなるときでもレスポンスよく柔軟にパワーを生み出してくれて扱いやすい。レンジローバー・スポーツSVには、まさにうってつけのパワーユニットだ。

そうした走行性能にも増して強調しておきたいのが、内外装のエレガントな仕上がりにある。高性能モデルであることを誇示するアイテムはほぼなく、「よく見てみれば」そうと気づく小粋な演出ばかり。しかも高品質でセンスのいいインテリアをそのまま受け継いでいるのも嬉しいところ。その出で立ちは、まさにスポーツを愛する英国紳士そのままといえる。

【SPECIFICATION】ランドローバー レンジローバースポーツSV エディションワン
■車両本体価格(税込)=24,740,000円
■全長×全幅×全高=4970×2209×1814mm
■ホイールベース=2997mm
■トレッド=前:1714、後:1723mm
■車両重量=2485kg
■エンジン型式/種類=─/V8DOHC32V+ツインターボ
■総排気量=4395cc
■最高出力=635ps(467kW)/6000-7000rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1800-5855rpm
■燃料タンク容量=90L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ=前:275/40R23、後:305/35R23
問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン TEL0120-18-5568

フォト=ジャガー・ランドローバー・ジャパン ルボラン2024年5月号より転載

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!