「空飛ぶクルマ」ってこういうのでしょ!エブロ製プラモ「シトロエンDS19」を『ファントマ』仕様に改造・後編【モデルカーズ】

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各年式ごとに細かな変更あり

映画『ファントマ 電光石火』に登場するシトロエンDS19パラスの実車と、それをエブロ製1/24スケール・プラモデルで再現した作例については、前編の記事(下の「関連記事」参照)ですでにお伝えした。ここでは、シトロエンDS19の内容とその変遷について触れておこう。

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20世紀を代表する名車・シトロエンDS19は、1955年10月、それまでのトラクシオン・アヴァンの後継的モデルとして、パリサロンで発表された。1.9Lのエンジンと、それを縦置きにしたFF機構こそ従来からのキャリーオーバーであるものの、宇宙船のようなスタイリングが象徴するように、その内容には革新的・未来的な要素が目白押しであった。

その斬新な内容として代表的なものが、サスペンションからブレーキ、ミッション(セミオートマチック)、パワステまでを油圧でコントロールするハイドロニューマチック・システムであろう。特に油圧によるサスペンションの乗り心地は快適極まりないものとして評判となった。ラジエターグリルを持たないという、当時としては革新的なスタイルのボディには、FRPやアルミといった(その頃の)新素材が多用されている。

DSは1975年の生産終了までに排気量アップによってDS21、DS23と発展しており(DS20もあり)、また1967年のマイナーチェンジ(1968年式)では、フロント周りのデザインを大きく変更し、フェンダーとヘッドライトが滑らかな面でつながる”猫目”フェイスに進化している。この”猫目”は丸目四灯ライトだが、内側ランプがステアに合わせて首を振るのも特徴であった。革新的な内容を持つ自動車にはありがちなことであるが、DSも非常な頻度で様々な改良を受けている。以下、この”猫目”になるまでの変遷について、少し細かめに述べてみたい。

当初、フロントのエプロンパネルは縞模様のあるアルミパネル(シルバー)だったが、これは1957年式からボディカラーに変更されている。また、油圧制御をサスペンションのみとするなどした廉価版モデルID19も、この年式で加わった。1958年式では、それまで中央に位置していたエキゾーストエンドが車体左に移動、エンジンルーム内のフードステーが左から右に移り、エランカと呼ばれるナイロンの柄もの生地が内装に加わった(従来はジャージーのみ)。

1959年式ではそれまでは灰皿と一体だった時計がメーター脇に移動。またこの年式では、車室の前後をガラス板で仕切り、後席用に電話機を取り付けたDSプレスティージュも登場している。1960年式ではリアフェンダーが延長され(それ以前は少し短めだった)、バンパー側面が収まる窪みの形も変わるとともに、リフレクターが平板な六角形のもの(IDには以前から採用)に変化。さらに、フロントフェンダー上面には排熱用のルーバーが装着された。この年式では変化が多く、ステーションワゴンのブレークも加わっている。

一見同じに見える丸2灯タイプも年式により多くの違いが
1961年式ではトランクフードにオープナーが追加され、1962年式ではダッシュボードを若干常識的な形状に変更。1963年式ではフロント周りを一新し、グリル/バンパーはくの字型のオーバーライダーが付く新しい形となり、その下のエプロンパネルも形状が変更されている。フロントフェンダーのルーバーは廃止された。

1964年式ではダッシュ下のエンジンカバー部にマップポケットが追加されている。1965年式では豪華版のDS19パラスが登場。装備を増したインテリアには本革仕様もオプションで用意されたほか、外装も専用のホイールキャップやフォグランプ、増加されたメッキの加飾によって華やかさをアップしている。

1966年式では2.1LのDS21が加わったほか、DS19も排気量を2LにアップしてDS19Aに移行。エプロンパネルの形状が改められ(前後2列あった開口部の後列を縦から横向きに変更)、冷却効率の向上が図られている。1967年式ではバッテリー位置が左から右に替わり、ハイドロシステム用のオイルがLHMに変わったことに伴いタンクの色が緑に。そして次の1968年式で、”猫目”の後期型へと移行しているのである。

ここまで述べてきた以外にも細かな変更は多く、模型作りにそうした部分のリサーチを反映させるのも面白いだろう。上述の年式ごとの変更はそれぞれ同時に行われていないものも含まれている。なお、エブロのキットは1958年式の再現と思われる。

作例制作=棚瀬和重/フォト=服部佳洋 modelcars vol.284より再構成のうえ転載

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