中身はほぼレーシングプロト!
パガーニはイタリアの新興スーパーカー・スペシャリストで、元ランボルギーニ在籍のデザイナー、オラチオ・パガーニによって1992年に設立された。7年の開発期間を経て発表されたゾンダC12は、高度なエンジニアリングと個性的なスタイリング、卓越した高性能によってセンセーションを巻き起こし、世界中のセレブリティのアイドルとなった。2011年に登場した2作目・ウアイラは、ゾンダのコンセプトをさらに発展深化させ、ごく少数の恵まれたユーザーに向けて少量生産されている。
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ウアイラの車体主構造はレーシング・プロトタイプにきわめて近く、カーボンファイバー・チタン混成モノコックの前後に鋼管スペースフレームを締結した超軽量構造だ。ミドシップに縦置きされるパワーユニットは、メルセデスAMG製の6リッターV12気筒に2基のターボチャージャーを追加したもので、最高出力730PSを発揮し、7速シーケンシャル・トランスミッションを介して最高速度370km/hを可能とする。さらに、フロントとリアの4枚の可動式フラップ、リアエンドのディフューザーにより高度な空力コントロールを実現。
ウアイラにはさまざまな限定バリエーションが存在し、ディテールやカラーリングは注文主ごとのビスポークでもあるため、個々に仕様が異なり、まったく同一の個体は2台と存在しない。ちなみに、奇妙な響きの車名は、創業者の故郷アルゼンティンの先住民族が信仰する風の神に由来する。
完成した時のカタルシスが抜群のキット!
アオシマのウアイラはパガーニ車初の1/24プラモデルで、実車の綿密な取材を元に設計開発されたフルディテール・キットである(注:作例制作時の2018年においては初のプラモ化、その後アオシマからはゾンダF/ゾンダC12Sも製品化されている)。総部品点数約280、車体フレームからサスペンション、エンジン、トランスミッションなど、この特異なスーパーカーの個性的なメカニズムを余すところ無く再現し、ガルウィング式ドアは開閉可能、前後カウルも脱着可能だ。
特筆すべきはその設計思想で、製作工程のすべてにおいて、1/24に縮小された実車を組立てているような、驚くべきリアリティを堪能できる。実物の構造からかけ離れた部品構造に堕している箇所はほとんど無い。
もっとも、これだけ部品が多いキットでは、成型品の製造上の誤差と、塗装・接着による微妙なズレの蓄積は末端に行くほど膨大で、組み立ては決して容易でない。実車同然にフレームにメカニズムを組み込んでからエクステリアを被せる構成なので、「仮組みは入念に」というプラモデル組み立ての定石が通用しないのだ。組み立てながらボディパネルの合わせをその都度チェックし、辻褄を合わせていくしかない。
作例はこの辻褄合わせが上手くいかず、エクステリアの取付けに際して、本来は不要なはずの大手術を施す羽目になった。私の失敗が、これからこのキットに取り組む読者諸兄の参考になれば幸いである。しかし、完成時のカタルシスという点において、これほど強烈なキットは他に類を見ない。じっくり腰を据えて取り組んでいただきたい。