徐々にパワーアップを重ねていき…
ベルキットのフォード・エスコートRSとその作例については、前編の記事(下の「関連記事」参照)ですでにお伝えしたので、ここでは実車のエスコートMk1について、もう少しくわしく触れてみよう。
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エスコートは、現在のフォーカスに繋がるヨーロッパ・フォードの小型車で、1968年に登場した。当時は欧州のフォードは統一されておらず、イギリス・フォードの車種としてデビューしたエスコートであるが、1969年からはドイツ・フォードでも生産されることとなる。ヨーロッパ・フォードは前年の1967年にすでに設立されており、言うまでもなくこれは車種の統合に向けた動きであった。
当時のイギリス・フォードのラインナップの中では、コルチナよりさらに下に位置するベーシックカーがこのエスコートであり、かつアングリア105E(1959年登場)の後継車という位置づけである。エスコートの名は、さらにその先代のアングリア(100E)におけるエステート(ワゴン)のネーミングとしてすでに使われていたものでもあった。エスコートはこの後六世代にわたってその歴史を紡いでいくのだが、それぞれMk1~6と呼んで区別される。
初代(Mk1)エスコートのボディサイズは、全長3980mm/全幅1570mm/全高1350mm、ホイールベース2400mm。当時の日本車で言えばカローラくらいの大きさである。ボディはモノコック式、レイアウトはFR、サスペンションは前ストラット/後ろリーフリジッド。なお、フロントの足周りは英国のそれと他国のものとで異なる設計となっていたという。
そのスタイリングは、1960年代後半のトレンドであったコークボトルラインを採り入れ、丸みを帯びたものとなっていたのが特徴だが、サイドウィンドウの面積が小さめに採られているところに、若干の古臭さもあった。ボディ形式は2ドアと4ドアのセダン、そしてエステート(ワゴン)とバンがあるが、エステートはリアオーバーハングが長く、そのぶん全長も少し長い。4ドアは登場から約2年後に追加されたものであった。欧州全体でエスコートはなかなかのヒットを記録したが、特にイギリス国内での成功は大きなものであったという。
最終的にはベースモデルの倍以上のパワー、フルチューンでは200ps超え
エスコートのエンジンは1.1/1.3Lの直列4気筒OHV、いわゆるケント・ユニットで、最高出力は前者が40/45ps、後者が48/51psとなる(それぞれ2種の仕様があった)。スポーティさを売りにしたエスコートだけに、このあと高性能モデルが徐々に追加されていくこととなるが、その始まりが1300GTというモデルで、これはエンジンにウェーバーのキャブを装着するなどし出力を64psへ向上、サスペンションも強化したものである。同じエンジンを搭載したエスコート・スポーツ(1300スポーツ)も追って登場、こちらはさらにフロントフェンダーのフレアが拡大されていた。
次いで加わったのがエスコート・ツインカムで、これはロータスの1.6L DOHC(105ps)を搭載するモデルである。このツインカムから発展したのが本題のRS1600で、こちらはコスワース製1.6L DOHC 16バルブ(115ps)を積む。ここまで述べたGT、スポーツ、ツインカム同様ボディは2ドア・セダンだが、無論サスペンションやブレーキは強化され、軽量アロイホイールを装着。外観では2分割フロントバンパーが特徴となるが、これはエスコート・ツインカムも同様だった。RSはRally Sportの頭文字だが、その名の通りラリーで無敵の強さを発揮することとなる。
1973年には、2Lの直4 SOHC(100ps)を搭載したRS2000も加わるが、これは本国アメリカにおけるフォード・ピントのエンジンを載せたものであった。1975年にはモデルチェンジを行い、Mk1は7年に及ぶモデルライフを終えた。