2~10作目より一世代古いT951がベース
映画やテレビドラマで使用される車両――いわゆる劇中車の中でも、主役同然の存在感を持つものはいくつかあるが、そのインパクトや世の中への影響という意味では、映画『トラック野郎』シリーズ(1975-1979年)に登場するトラックたちほど大きなものはないだろう。もちろんこの映画より前から、トラックをデコレーションする文化は存在していたのだが、それが世間的に広く認知される、ひとつのきっかけとなったことは間違いない。
【画像28枚】トラックはフレームからしっかり組もう!その制作工程を見る
『トラック野郎』シリーズの劇中に登場するトラックは、映画公開当時からプラモデルの題材としても採り上げられていた。バンダイの1/48スケールや1/20スケールのキットが、その代表的なものである。とはいえ、1/48ではやはりスケールが小さく、また再現度という意味では玩具寄りの設計となっており、また1/20ではあまりにスケールが大きく、少々手が出しづらいものとなっていた。どちらも古いキットながらたまに再販が続いているのはありがたいことであったが、スケール派のトラックモデラーとしては不満の残る状況だったことだろう。
そうした状況に風穴を開けたのがアオシマで、2010年頃から、主人公・星桃次郎(菅原文太)の愛車・一番星号を次々とキット化。全10作ある映画の中で、2作目以降は三菱ふそうFUの同じ個体をベースに毎回デコレーションをリニューアルしていた一番星号であるが、アオシマではその違いをきちんとパーツを分けてフォローするという非常に凝った作りを見せ、トラック野郎ファンのモデラーたちから熱い歓迎を受けてきたのであった。
モデラーの心を知り尽くした、価値の高いキット内容
映画1作目『トラック野郎 御意見無用』における一番星号は、FUの先代にあたるT951型であったのだが、2020年にはついにこれもキット化。これよりすこし前に、三菱ふそうT951をノーマル仕様などでリリースしていたアオシマであるから、この製品化も多くの人が予想したものであろうが、実車の資料不足などから、その再現は困難であると伝えられていたところ、ついにその難関を突破してのリリースとなったのである。
専用の新規パーツは前後およびサイドバンパー、各種アンドン、唐草飾り、ハシゴ、ホイールキャップ、ルーフデッキ、拡声器などなど、数え上げるときりがない。もちろんイラストも新規にデカールとシールが起こされるほか、ボデーも新規のものが用意され、それまでの一番星同様に、リアルなオープンボデーと、手軽に作れるクローズドボディの選択式となっている。キャビンの塗り分け用マスキングシールも付くなど、まさに至れり尽くせりだ。
今年は8月に『熱風5000キロ』、10月に『突撃一番星』の、各仕様の一番星号がアオシマから再販されるのだが、ここではそうした状況に背を向けて、いや、それに先立って、この『御意見無用』の一番星を制作、数回に分けてその様子を公開していきたい。まず1回目となる今回は車両の基本部分の仮組みとなるが、画像キャプションとして付した工程解説もじっくりとお読みいただきたい。次回もお楽しみに。