2022年から2023年に掛けてのウインターシーズンは、降雪となった地域が多く、また降雪予報や警報が発報となった地域も多かったことから、スタッドレスタイヤを購入した方も多いことでしょう。地域にもよりますが、3月になるとスタッドレスタイヤはそろそろ終わりにして、夏タイヤへ履き替え直そうという時期になってきます。
タイヤの交換も保管も業者任せという方はとくに大きな心配はいりませんが、作業前に空気圧チェックくらいは行ったほうがいいでしょう。タイヤの交換作業&保管を行う業者に空気圧をチェックしてもらってもいいですが、交換作業のハイシーズンになると「やっておきます」と言われて、そのままとなる可能性もなきにしもあらずです。
ガソリンスタンドなどで空気圧を確認し、均等に減っている場合は指定空気圧まで空気を補充しておきます。1本だけが極端に減っている場合は、パンクかバルブ不良の可能性があります。その場合はパンク修理、もしくはバルブ交換などの処置をおこなって指定空気圧まで空気を補充してから業者に預けるようにしましょう。このときのパンク修理は、車載のパンク修理キットは使ってはいけません。業者にパッチやスティックを使った修理をしてもらいます。修理後は走行しゴムが発熱することで加硫という現象がおき、タイヤとパッチやスティックが一体化します。変形することでパッチやスティックとの密着性が上がるという効果もあるので、修理してそのまま保管ではなく少し走ったほうがいいでしょう。
さて、自分で交換する方への情報です。スタッドレスタイヤをクルマから外す前に、夏タイヤの空気圧をチェックしましょう。もし1本だけが極端に減っている場合は、やはりパンクかバルブ不良の可能性があります。夏タイヤに交換してから修理に持っていくよりも、タイヤ単体で修理してもらったほうが楽なので、スタッドレスタイヤを履いたままで、まずは夏タイヤの修理を行いましょう。
スタッドレスタイヤを外したら、どこに装着されていたタイヤかがわかるように養生テープに「右前」などと書いたものをホイール内側に貼っておくといいでしょう。同時に空気圧のチェックを行いましょう。
ふたたびタイヤを取り付けるときは「右前」と「右後」といったように前後のローテーションを行うといいでしょう。ローテーションの基本は、山が多く残っているものを駆動輪に装着することです。4WDの場合は基本駆動方式がFFなら前輪用が山が多め、FRならば後輪用が山が多めというのが目安です。タイヤ&ホイールを洗ったあとは、マーキングのテープがはがれたり、はがれやすくなるので貼り直しも大切。布ガムテープは糊が残りますし、紙のクラフトテープはテープそのものが残ってしまうので使わないようにしましょう。
トレッドから異物を除去できたら、タイヤとホイールを洗います。洗車時に普通にタイヤ&ホイールを洗う感覚の作業でかまいません。ただホイールの裏側はあまり洗う機会がないので、このときにキレイにしておきます。もしホイールの内側がベットリと油で汚れていたら、ドライブシャフトブーツの破れなどが考えられるので、ディーラーや整備工場で点検&修理を受けたほうがいいでしょう。また、少しスキルのある方はブレーキパッドの残量点検なども行うといいでしょう。ジャッキでクルマを上げている(リジッドラック=ウマなどに乗せていない)場合は、絶対にクルマの下に入ってはいけません。
タイヤ&ホイールを洗ったら、よく乾燥させてから収納となります。タイヤワックスなどは使わないのが原則です。収納するには屋内や物置の中がもっともいいでしょう。タイヤは紫外線とオゾンを嫌います。屋内や物置なら紫外線を少しでも防ぐことができます。オゾンの影響も少なくて済みます。オゾンは新鮮な空気が流れると運ばれてきますので、1本ごとにビニール袋などに収納するのが理想です。外置きやベランダ保管する際はエアコンの室外機や洗濯機などモーターを使う装置は、モーターからオゾンを発生させていることが多いので、それらの近くには置かないようにしたいものです。
タイヤの収納時に縦置き(クルマに装着されているときと同じ方向)がいいのか? 横置きがいいのか? はよく議論されるところですが、半年くらいの保管であれば空気をきちんと入れておけばどちらでも問題ないとされています。置き方よりも空気圧のほうが大切で、空気圧が低くなってしまうと、タイヤが変形してしまうので、そのほうが問題だといいます。ただし、横置きで重ねる際はタイヤとタイヤの間に段ボールなどを挟んでおかないと、サイドウオールの刻印が写ってしまい見栄えが悪くなることもあります。タイヤを横置きで重ねるときは、印刷されていない段ボールを間に挟むといいでしょう。印刷面がサイドウオールに触れると、段ボールの印刷がタイヤに写ることがあります。
夏タイヤの装着はホイールナットやホイールボルトを対角線で締めていくことを基本とします。ホイールボルトを使っている欧州車や一部の国産車の場合は、ホイールボルトの治具(セッティングボルトと呼ばれることも多い)を利用すると装着が楽になります。ボルトでもナットでも、いきなり工具で締めるではなく手で数回転は楽に回ることを確認します。そうすることで斜めに締め付けることを防止できます。手で締めたあとは、工具で軽く止まるまで締め付け、最後に増し締めします。
増し締めの締め付けトルクは非常に大切なもので、弱ければナットやボルトが緩み、強すぎるとスタッドボルト(クルマ側のボルト)やボルトをねじ切ることもあります。いずれもホイールの脱落につながるので、規程トルクで締めることが大切です。規程トルクで締めるにはトルクレンチで行うのがもっとも簡単(バネばかりとレンチを使う方法もあります)です。最近はトルクレンチもリーズナブルな価格で販売されているので、自分でタイヤ交換をする方は持っているといいでしょう。規定トルクについては、取扱説明書に記載されている場合もあります。記載のない場合は、ディーラーやメーカーのお客様相談室に聞くといいでしょう。10km程度走行したら、ふたたび締め付けトルクを確認することも大切です。