奇抜…でも美しい!前衛と伝統が融合したクーペ
イタリアでは、自動車はまず格好良いことに重きが置かれるという。フェラーリ、アルファロメオ、マセラティ、ランチア……どのメーカーの車種もそのスタイリッシュさで(もちろん熱い走りも)我々を魅了してきたものだが、斬新さと美しさの絶妙なバランスで見る者を圧倒した一台に、アルファロメオGTVを挙げることができるであろう。
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「GTV」とは、かつてのジュリアクーペやアルフェッタにも使われた、アルファロメオ伝統のネーミングだが、ここでその名前が指すのは、1990年代から2000年代前半にラインナップされていた4人乗りFF 2ドア・クーペのGTVのことである。車名の「V」が示すのは、「Veroche(=速い)」の頭文字。そのデビューは1994年10月のパリ・オートサロンでのことで、同時に、基本デザインを共用するスパイダー(1966年デビューのあのスパイダーの後継車)も発表された。
そのボディスタイルはピニンファリーナが手掛けているが、丸目4灯ライトをボディパネルに穿たれた孔から覗かせたフロントマスク、ボディを上下に分割するかのような斜めのエッジなどを特徴とする、非常にインパクトの大きいものであった。実際に担当したのは鬼才エンリコ・フミアで、彼自身はこのデザインを「1981年のアウディ・クオーツがルーツ」と説明している。
クオーツはショーカーだが、確かに丸4灯ライトを持っており、中央のアウディ・マークと並ぶと、その意図は明確である。ボディサイドにはやはり上下に二分するかのようなプレスが入るが、クオーツの場合は斜めではなく水平だ。また、直接のルーツとしては1991年のアルファロメオ・プロテオの名も挙がっており、確かに同様のモチーフが見られるが、こちらは丸6灯であった。
GTV/スパイダーのプラットフォームはフィアット・ティーポをルーツとするものだが、スポーツカーとして力を入れた設計がなされている証拠に、リアサスペンションは専用のマルチリンク式が採用されている。これはアルミ製のサブフレームに、同じくアルミ製のサスアームを組み合わせたもの。一方、フロントサスペンションは155と共通のストラット式である。また、各部のボディパネルにはKMCと呼ばれるコンポジット素材を使用し、軽量化を図っていた。
エンジンは当初、1.8Lと2Lの直列4気筒DOHC 16V(ツインスパーク)に、2LのV型6気筒SOHCターボの、3種類を搭載。日本に正規輸入されたのはまずV6のみであった。1997年にはV6エンジンが3Lに排気量アップ、DOHC 24バルブへと進化した。このエンジンを搭載したモデルは2001年から日本市場にも導入されている。1998年の細部変更を経て、2003年には比較的大きなマイナーチェンジを実施。盾型グリルが縦に伸ばされた新デザインになるとともに、V6エンジンの排気量を3.2Lに拡大した。GTVはこうして10年以上の年月を生き延び、2006年に生産終了となっている。
タミヤ製プラモデルは4気筒ツインスパーク
最後までスタイリングの新鮮さを失わなかったGTVだが、プラモデルとしては、タミヤがリリースした1/24スケール・モデルが唯一のキットである。これは1996年に発売されたもので、もちろん初期型の再現だ。すでに述べた通り、初期のパワーユニットは2L V6ターボと直4ツインスパークの2種類で、キット化されたのは後者の仕様である。タミヤはヨーロッパ市場を意識して、量販グレードを選んだものであろうか?
キットは、その特異なスタイリングや内装のみならず、シャシー下面、さらにはエンジンまで再現したフルディテール・モデル。基本的には特に変わったことをせずとも美しく組み上がる製品であるが、その美点をさらに引き出す工作については、工程写真のキャプション、そして追って公開する後編の記事をお読みいただきたい。