細部まで考え抜かれた仕立てのガレージはまさにテーマパーク、ターンテーブルに載った愛車が吹き抜けからも楽しめる造り
「いつかはスーパーカーを、という想いは常に持っていましたし、当初から”ガレージありき”の家にすることは決めていたので、ほぼイメージは固まっていました」
「ただ、あせることなく理想に向かって、じっくり家づくりに取り組んだつもりです」
そう語ってくれたのは、今回ご紹介するガレージのオーナーであるKさんだ。足掛け6年にわたった、そんな家づくりのパートナーとして選んだのは「積水ハウス」である。
「ある意味特化した家ですので、建築家さんに依頼することも考えましたが、住宅メーカーさんがどこまで対応してくれるのかという興味もあり、何社かに相談しました。その中で最も親身になって話を聞いてくれたのが、積水さんだったんです」とはKさん。
別の側面から見ると、Kさんがイメージする間口を持つガレージを盛り込み、なおかつ家族が快適に暮らせる二世帯住宅を実現するために、鉄骨住宅を得意とする同社に依頼するというのは、ある種の必然だったのかもしれない。
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ターンテーブルに2枚のガレージドア
さて、実際にガレージを見ていくと、それまでにたくさんの実例を見て独自に研究を続けてきたというだけあって、細部まで考え抜かれた仕立てとなっていることがうかがえる。
たとえば、家の正面側の手動シャッターを開けると見えるもう1枚のシャッター。K邸は前後を道路で挟まれる位置に建っており、クルマの出入りに使用する方に電動タイプを設置している。両側にあることで、切り返しなくクルマの出し入れができるだけでなく、開け放てば即時の換気も可能というわけだ。そして必見といえるのが、真紅のフェラーリが乗ったターンテーブルだろう。
これは前述の両側シャッターと共に出し入れの際にも活躍するが、実はほかにもKさんのふたつの希望を満たすために欠かせない装備なのだ。ひとつ目は、フェラーリの美しいボディラインをあらゆる角度で楽しみたいというもの。念願の愛車を手に入れた方なら当然のごとく叶えたい要望だ。
ドライブインシアターにもなるガレージ
ふたつ目はスクリーンを設置することで、ドライブインシアターのように使うというアイデアだった。試行錯誤の末、実際にはスクリーンを設置するのではなく、白くフラットな壁面に投影することに落ち着いたようだが、クルマの中から映画を楽しむというのはなんとも面白い発想だ。
「ホームシアターの使用頻度は高くない」というコメントを、ガレージライフ誌の取材先で何度か聞いたことがあるが、Kさんの場合、事前に使い方のイメージをしっかり固めて設置したようだ。
さらに、この壁面スクリーンを使うと、レースゲームも愛車に乗った状態で楽しむことができる。実際に座らせていただいたが、これが意外に新鮮で、リアルなゲーム映像を見ていると、本当にクルマで走っているような気分になってくる。
「FMトランスミッターを介して車内のスピーカーから音を出せば、さらに臨場感がアップしますよ。ただあまりにリアルなだけに、最初はGがかからないことに違和感を覚える人もるくらいです」
なんとカラオケもできる!
一方、ガラスで隔てられたラウンジでは、”クルマを見ながらの一杯”も楽しみのひとつだ。コンパクトなホームバーが供えられたラウンジには、オーディオやカラオケシステムも設けられ、Kさんお得意のカラオケも満喫することができる。
「特に防音工事を施しているわけではないのですが、この部屋は家の中心部にあり、ガレージと玄関で音を吸収してくれるので、近隣に迷惑をかける心配はほとんどありません」
「トイレもありますし、靴を履いたまま入れるようにしているので、来客時にも脱ぎ履きのストレスはありませんね」
ガレージを中心とした導線も、きっちりイメージして仕立てられたK邸。ガレージに盛り込みたい要素について考えると、きりがないほど浮かんでくるものだが、そんな時は「なにをしたいか」「どう動いたらストレスが少ないか」といったイメージをすることで自然と絞られるようだ。
ときにはターンテーブルのような複合型のアイデアが浮かび上がってくるのかもしれない。「家の中にあるテーマパーク!」、Kさんのガレージはそんな空間であった。
◆GARAGE OWNER’S CHECK
・一番気にいっているところは?
生活空間とは異なる雰囲気が気に入っています。ターンテーブルも導入してよかった。
・ちょっと失敗したところは?
ガレージではインターフォンが聞こえないことが判明。追加で子機を取り付けることに。
・次の夢はなんですか?
ホビースペースをさらに充実させたいですし、いつかはランボルギーニも手に入れたい。
・読者へのアドバイスを!
両側に道路がある土地はガレージにとっては思いのほか便利です。また、スーパーカーの
場合、歩道の切り下げ工事ができるかどうかも、実は重要なポイントです。
◆COMMENT FROM A BUILDER
初めてお会いしてご要望を伺った際、自らイラストや資料をお持ちいただいたほど、Kさんはイメージをしっかりお持ちでした。ですから、まずはそのご要望をプランに落とし込み、如何にうまくまとめるかが私たちの最初の仕事でした。
弊社は重量鉄骨の家を得意としていますので、ゆったりとした開口、ラウンジとのつながりなど、Kさんの求めるイメージには合っていたと自負しています。
また、吹き抜け部分は、どうやったらクルマがいちばん美しく見えるかを、CADを使いながら何度も確認しつつサイズを決めたのも印象的ですね。打ち合わせだけで約5年、足掛け6年にわたる長期のプロジェクトでしたが、その分私たちにとっても思い出深いお宅です。
取材協力:積水ハウス株式会社 埼玉北支店