2代目大型キャブオーバー車の2軸ダンプ
三菱ふそうの大型トラックと言えば、現在は「スーパーグレート」の名で認識している方が多いだろう。「グレート」という単語がペットネームとして与えられたのは1983年のザ・グレートからで、これが1996年のモデルチェンジでスーパーグレートとなり、現行モデルはその2代目ということになる。トラックは車軸の配置や駆動輪、エンジンの違いなどで型式名が異なるが、ザ・グレートから現在のスーパーグレートまで、正式な型式名はFUやFV、FYなど、頭文字が「F」で統一されている。この型式名はザ・グレートの先代にあたる大型シリーズ(1973-1983年)から継承されたもので、その世代は便宜的にFシリーズと呼ばれる。ではその前は何シリーズかとなると型式名の先頭が「T」なのでTシリーズなのだが、ボンネット型もキャブオーバー型も、中型も小型もT×××(数字)という名づけ方になっていた。小型は最初から一貫してキャンター、中型のボンネット車にはジュピターという名があったが、それ以外はモデルチェンジをしても型式名が変わらなかったりで、区別や線引きに困難な面がある。
三菱ふそうの大型キャブオーバー車は1959年に登場したものが最初となる。これがモデルチェンジを行ったのは1966年のことで、それまで平板2枚だったフロントウィンドウが、キャビンのコーナーに沿って両端を曲面にしたものとなるなど(2枚ガラスなのは変わりないが)、一気に近代化された。一般的にはこの2代目大型キャブオーバーはT9××やT81×の型式名で知られるが、1966年の時点では先代を引き継いでT390やT480などのラインナップだった。
型式がT9××などに変わったのは翌1967年のこと。それまでの搭載エンジンは直列6気筒のDB型であったのが、このとき新設計のV型エンジンDC型(6気筒と8気筒がある)が導入されたためだ。大まかに区別すると、T8××は2軸、T9××は3軸となる。T800はボンネット型、T810がキャブオーバーのようだ。T9××はT951やT931、T910といった型式があるが、2文字目が「5」は6×2(駆動輪が2軸目のみ)、「3」は6×4(2、3軸とも駆動)、「1」が前2軸となる。この時点では従来のDB型エンジン搭載のT480も残っていた。
さて、ここでお目にかけているのは、この2代目T型キャブオーバーのラインナップのうち、2軸のダンプ車であるT810CDを1/32スケールで再現したプラモデル作例である。ベースとしたのはアオシマのT951で、シャシーを縮めて2軸とし、ダンプボデーを完全に自作している。
実はこの作例、ただT810のダンプを作ったと言うだけでなく、1970年代の刑事ドラマ『大都会PARTⅡ』にスタント用車両としてたびたび登場した個体を再現している。キャビン上のデッキ(アンドンがなくステーのみが残る)やナンバープレート、なぜかいすゞ純正品が取り付けられたタレゴム、そしてもちろんカラーリングなど、その特徴を可能なかぎりフォロー。古いトラックを作ろうという場合、細部にリアリティを持たせる手法として、テレビドラマや映画に登場した個体を再現するという方法は、意外とオススメである。
ダンプを作るならやっぱり可動しなくっちゃ!
以下、制作は実車の図面を参考に行っている。まず外側シャシーフレームを図面に合わせ適当な所で切断。外側と内側のフレームを合体、部品番号T#C10をそのまま接着する。補強板は1.2mmプラ板で作り、第2クロスメンバーはT#C7のパーツから切り取ったものを使用、第3クロスメンバーはプラ板で自作。第4クロスメンバーはT#C52を使った。反対側の補強板と外側フレームを接着してフレームの出来上がり。マフラーの位置が変わるので受け部分をプラ板で自作、リアサスは他キットの余り部品(バリューデコトラ「じゃりぱん豚助」から)を流用、デフはキットのものを加工。
次はベッセルの自作。まず横アオリの下側をプラ材より削るが、一部、断面が三角となるので注意。出来たらベースのプラ板に接着、コーナーポストも角度に注意して取り付け。上フチの接着は間隔を一定にするためプラ板で作ったゲージを用いた。左右を作ったら、両面テープでズレないように貼り合わせ外形をヤスリで整え、図面どおりの寸法に揃える。別々に作業するより効率的だ。プラ材から縦骨を削り出し、横アオリに接着していく。横アオリは上に向かって傾斜しているので、マスキングテープでラインを決めてからヤスリ掛け。テールゲートも同じ要領で作った。
プロテクタも図面に合わせてプラ板から切り出し、窓の部分を切り抜く。スリットは縦の部分に0.5×0.75、横に0.5×1.5のプラ棒を交互に接着、連子状にする。固着後ツライチになるよう削り外枠もプラ帯で付け、前面に縦のフレームを接着。底板もプラ板から切り出し、プラ棒の縦根太をスコヤを用いて取り付ける。横根太も同様に接着、最後にエンドパネルを接着する。
自作したプロテクタと横アオリ、底板を接着して組み立てていく。プロテクタには側面と庇もプラ板から切り出して接着し、庇の下面にはフレームを取り付ける。横アオリのヒンジは0.5mmプラ板と伸ばしランナーで自作。テールゲートの上部留め具(ゲート側)はプラ板と真鍮線で自作、可動するようにした。ベッセル前下部の足かけは0.8mm真鍮線で再現。
次に、ダンプのホイスト機構を自作する。まずリフトアームをプラ板を重ねて自作。テンションリンクは後方ブラケットをプラ材の積層から作り、前方のブラケットは3mm角棒から削り出して、両者を1.2mm真鍮線で繋げる。シリンダー基部(サブフレーム側)は6.3mm角棒から削り出し、穴を開けて3mmプラ棒と5mmプラパイプを接着。長さを調節し、シリンダー外筒(7mmプラパイプ)を接着する。0.5mmゴムシートから5mmポンチで滑り止めを抜き、2mmビスにナット、滑り止め、ナットの順でセットし締め付ける。これを2.6mmステンパイプ(内径2mm)に瞬着で取り付け。外筒にセットするとキツかったのでゴムを少しトリミングした。
外筒に収めた状態で動きをチェックしておく。ベッセル側基部は5mm角棒からの削り出しで、こちらもジョイント部に2mmプラ棒を接着。プラ棒から切り出したストッパーを入れ、ステンパイプを瞬着で固定。右側にとび出たプラ棒は切り落とす。サブフレームもプラ材で自作し、可動するように組み立てたホイストシリンダーをセットして動き具合等をチェック。リンク受けは形状が不明だったので他車のものを参考にした。フレーム後端のヒンジを仮付けし、サブフレーム、リンク、シリンダーの収まり具合、スムースにダンプアップするかを確認。フレームにベッセルを載せてみて高さ等をチェック、リンクやシリンダーがシャシーと干渉しないかも見ておく。
前述のように市松模様のタレゴムはいすゞの純正品で、中央に「ISUZU」のロゴが入るが、模型としてはそこまで再現するとかえってややこしくなるので、作例では省略した。プロテクタ側面のハシゴやシャシー側面のサイドガードは真鍮パイプで自作している。