元祖SUVの1台とされるフォードの4WD
2021年、20年以上のブランクを経て復活したフォード・ブロンコ。いわば今に続くSUVの源流のひとつであるブロンコだが、その初代モデルの登場は1965年のことである。
戦後、民生用に販売されたジープは四輪駆動の走破性により様々な局面で重宝され好評を博したものの、やはり、あまりにもヘビーデューティすぎるのが難点だった。そこで生まれたのが、乗用車的な快適性と豪華さや、レジャービークルとしての利便性を盛り込んだ、新しいタイプの自動車である。そうした市場を開拓したのは、トラックメーカーであるインターナショナル・ハーベスターが1961年型として発売した、インターナショナル・スカウトであると言われている。そして、これに続けとばかりに登場したのが、1965年8月に1966年型として発売されたフォード・ブロンコだ。
ホイールベース92インチ(2337mm)のボディはスカウトよりもかなり小型であったが、ボディ形状などは非常に似通ったもので、ジープ的な荷台一体型の車体を基本とした。ラインナップは、オープンボディの“ロードスター”、キャビン部分にスチール製ルーフを持つピックアップの“スポーツユーティリティ”、そして荷室部分までをルーフで覆った“ワゴン”の3種。ロードスターはドアを持たず側面ボディパネルが切り欠かれており、スポーツユーティリティとワゴンのルーフは着脱が可能だった。なお、さらに遅れて登場した競合車種シボレー・ブレイザーやダッジ・ラムチャージャーとは違い、ブロンコはフレームから新規に設計された、全くのニューモデルであった。エンジンは170-cid(2.8L)の直6を基本に、289-cid(4.7L)のV8をオプション設定。
ブロンコの各年式の違いは僅かなものだが、簡単にその変化を追ってみると、1967年ではスポーツユーティリティの名称がピックアップに変更、1968年には前後サイドマーカーを新設。1969年にはロードスターが消滅し、ウィンドシールドを可倒式から固定式に変更、ワゴンのルーフも着脱不可となった。1970年ではオプションのV8が302-cid(5L)へと排気量アップし、サイドマーカーの位置が高くなっている。目立った変化のない1971、1972年を挟んで 1973年型ではピックアップが消滅し直6エンジンが200-cid(3.3L)に大型化、またV8搭載車からは「302」エンブレムを省略。1974年以降も変更はわずかなポイントに終始しながら、1978年型で2代目にモデルチェンジを果たした。弱点であった小型なボディは大型化され、ホイールベースは104インチ(2642mm)となっている。
アーリーブロンコ初のキット化、実車デビューから半世紀後に実現!
ここでお見せしているブロンコは、2016年にレベルから完全新金型で発売された1/25スケール・プラモデル(85-4320)を制作したものだ。初代ブロンコ初のキット化で、年式の明記はないが、1969-71年型の再現となっている。しかしナンバープレートからすると1973年となるが、キットのパーツをそのまま組むと、1972年の半ばに追加設定された“レンジャー”仕様となってしまう。説明書では、1973年型にするにはエアクリーナーに若干手を加えるよう指示。なお、このキットはその後、バギーとトレーラー付きピックアップなどのバリエーション展開がなされている。
キットは全体的に柔らかめのプラで成型されており、ボディは本体とフロントウィンドシールド、ルーフに分割されている。また、サイドマーカーやバッテリーなどはボディと一体成型されているが、これらはできれば別パーツとしてほしかった所だ。ウィンドシールドは塗装前に接着しておいた方が良い。このとき左右のサイドウィンドウとルーフを仮留めして、シールドの傾斜角が狂わないように注意する。ルーフ部分は、作例で用いたキットはすこし歪みが生じていたので、熱を加えて修正した。また、右後端に段差があったので、ここはプラ棒を接着して修正している。説明書ではルーフは着脱式となっているが、結局接着してしまった。実車も1969年式以降は固定化されている。各ウィンドウは接着しろがわずかなので、接着は慎重に行いたい。作例は’71年式のつもりで制作したので、ボディカラーは同年フォード・トラックのカラーチップを参考に、「HOLLY GREEN」を選んだ。クレオスC66デイトナグリーンにC2ブラックを加え、チップより明るく調色。ルーフ部分は「PURE WHITE」。ピュアホワイトと言っても純白ではなく、かなりグレイがかった色だ。C316ホワイトFS17875 にGX1クールホワイトと少量のブラックを混ぜている。
インテリアはディテールもよく表現されている。注意点としては、リアシートをフロアに接着するとき角度が定まらない点が挙げられる。説明書では指示されていないが、メーターのデカールが小さいので、貼り付け前にダッシュボードのメーター部分を黒で塗っておこう。
シャシーは説明書をよく見て、接着できるパーツをできるだけ一体化して塗装しよう。車高とトレッドはそのままで良いようだ。タイヤはトレッドパターンの向きに注意してセットする。キットの箱絵を見ると左右でパターンが逆になっていたり、説明書のイラストを見るとこれまた違っていたりと、なんとも困ったものだ。ホイールとホイールキャップはどうも径が小さいように思われる。ホイールのモールドは良いので、作例ではキャップを付けずにおいた。個体差もあるだろうが、ホイールをタイヤにセットするとゆるい物があるようだ。スペアタイヤキャリーは接着せずにおけば、写真のように可動式として楽しめる。作例は黒く塗装したが、ヒンジも含めてボディ色のものもあるようだ。
エンジンルームは説明書やパッケージ写真では半ツヤ黒となっているが、ここはボディ色でダクトなどのみ半ツヤ黒のようだ。作例ではプラグコードを追加している。箱側面の説明には「289-cidエンジンを再現」とあるが、デカールは「302」が付属。グリルはライトリム以外はシルバーなので、プライマーを塗布後C8シルバーをペイントした。「FORD」の文字はデカールも付くが、塗装の方が良い。色はモンザレッド。リアのナンバーフレームは半ツヤ黒ではなく、ボディ色が正解のようだ。キットに付くのは’73年のナンバーのみなのでジャンクから「FORD」のマークを流用した。