躍動感を凝縮したスタイリング、ジャストサイズの高い機動力によって、いまや路上を席巻するまでに成長したコンパクトSUVカテゴリー。そのなかにあって、ひと際輝いて見えるのがキャプチャー。そう思わせる要因はどこにあるのかを検証してみたい。
ルノーらしい懐の深さと先進テクノロジーを融合
2020年の欧州SUV販売台数ナンバーワン。ルノー・キャプチャーに乗ると思い出すのは、この事実だ。ここ数年で急に増えたコンパクトSUVの中でも、総合力でトップに思えるからである。
スタイリングが人気の源泉であることは間違いないだろう。先代が確立したダイナミックなフォルムをシャープに仕立てつつ、上質感も身につけた。ボディサイド上下のクロームのモールが、フォルム全体を大人っぽく見せている。
一方でCシェイプのデイタイムランニングランプが目を引くフロントエンド、同じCシェイプをコンビランプに取り入れたリアエンドは、かなりの存在感を示す。大胆な造形を違和感なく取り入れてしまう技、さすがルノーだ。
ボディサイズはCセグのハッチバックに近い全長と全幅を持ち、背はさらに高い。おかげで日本の道でも不自由しない取り回しでありながら、16cmもの前後スライドを持つリアシートを備え、ラゲッジスペース容積は通常で536Lを誇るなど、コンパクトSUVらしからぬ空間を実現している。
フランスでも日本でも好敵手となるプジョー2008は背が低めで、フォルクスワーゲンTクロスやトヨタ・ヤリスクロスはやや小柄。ひとクラス上の空間を目指して開発したという新型キャプチャーのアドバンテージを感じる。
インテリアはポップな印象が強かった先代と比べると、かなり落ち着いた。クオリティの高さは、このクラスのベンチマークとされてきたフォルクスワーゲンより上。一方で、メーターやセンターディスプレイは必要以上の装飾を抑え、疲れにくい環境としている。ルノーらしいと思えるのは、トランスミッションのセレクターレバーを電気式にしたことにともない、センターコンソールを上下2段にしたこと。この柔軟な発想力はさすがというほかない。
このボディを走らせるのは、新開発の1.3L直列4気筒ターボエンジンと7速DCTだ。ルーテシアと基本的に同じ構成だが、最高出力は154ps、最大トルクは270Nmにアップしている。
ここまで車名を挙げたライバルたちは、すべて3気筒エンジンを積む。それらと比べると、やはり4気筒の滑らかさは格別だ。力の余裕も段違いで、エンジンをさほど回さなくても欲しい加速が手に入るので、静かでさえある。
しかも新型では、これまでルノーの弱点とされてきた先進運転支援システムが大幅にレベルアップした。もともとルノーが持つロングドライブの快適性が、アダプティブクルーズコントロールなどによって、さらに引き上げられた。
新型キャプチャーはプラットフォームも新世代だ。ルーテシアに続く採用となるCMF-Bを使用する。のんびり流しているだけだと強烈な印象は残らないが、ペースを上げていくと、俄然良さが際立ってくる。とにかく揺れない。
路面からのショックを巧みにいなし、車体が水平移動していくようなフィーリングが心地いい。 ステアリングの切れ味もちょうどいいレスポンス。それ以上に、路面の感触をそのまま届けてくれるようなインフォメーションがありがたい。だから乗り始めて数分もすれば安心して切っていける。
先ほどまでフラットライドを提供していたサスペンションは、コーナーに入ると軽く沈み込み、4輪をしっとり路面に接地させ、安定感と安心感をドライバーに届けてくれる。演出めいた動きがないからこそ、自信を持ってドライビングを満喫できるのだ。
こういうクルマをベストセラーに押し上げる欧州の人たちに、あらためて感心した。日本で暮らす欧州志向のクルマ好きにも、このパフォーマンスは響くはずだ。
【specification】ルノー キャプチャー インテンス テックパック
■全長×全幅×全高=4230×1795×1590mm
■ホイールベース=2640mm
■車両重量=1310kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1333cc
■最高出力=154ps(113kW)/5500rpm
■最大トルク=270Nm(27.5kg-m)/1800rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/ドラム
■タイヤサイズ(F:R)=215/55R18:215/55R18
■車両本体価格(税込)=3,190,000円
■公式ページ https://www.renault.jp/car_lineup/captur/