【国内試乗】「メルセデス・ベンツSクラス」持てる最新テクノロジーのすべてを搭載したフラッグシップ

2021/05/10 12:00

8年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型Sクラスが待望の日本上陸を果たした。常に最先端テクノロジーを搭載するフラッグシップというだけあって、デザイン、安全性、快適性といった、高級車に求められる要件に、これでもか! というくらい新機軸が投入されているという。早速、その完成度を確かめてみよう。

絶妙なスタイリングと慣れを要する新機軸

昨年9月の発表会はオンラインだったし、11月の国際試乗会には行けるはずもなく、年をまたいだ今年3月になってようやくメルセデスの新型Sクラスとの初対面を果たした。スタイリングは天地方向に薄くなったように見えたが、実際には従来型と比較すると全高のみならず、全長も全幅もホイールベースもトレッドも拡大されている。ただ、全長も全高も50mm以上長くなっているのに全高の伸び幅はわずか10mmなので、ボディのディメンションにおける比率からすると低く見えても当然だったのかもしれない。全体的に従来型よりも若干カジュアルになった気もするいっぽうで、メルセデスのフラッグシップらしい重厚感も漂い、威圧感は薄いが威厳は保たれている絶妙なスタイリングだと思った。

ヘッドライトには高精細な照射を実現するDIGTALライトを初採用。リアエンドは、三角形で横に長い特徴的なデザインの2分割型のリアコンビネーションランプによりワイドでシャープに見せるとともに、昼夜問わずSクラスとすぐに分かる造形を採用する。

新型Sクラスには標準とロングのボディが用意されていて、現時点でのパワートレインはいずれも3L直列6気筒のガソリンとディーゼル、駆動形式は4輪駆動の4マチックのみ。価格は1293万円から1724万円までで、ここだけ眺めていると「やっぱりいいお値段だな」とため息のひとつも出るが、BMWの7シリーズやレクサスのLSと比較するとグレードによってはSクラスのほうが安く、実はかなり戦略的な価格設定になっていることが分かる。

快適性と安定した走行性を発揮するエアマティックサスペンション、様々な天候や路面状況化で最適なトラクションを発揮するフルタイム4WDの4マチックを全車に標準装備。

プラットフォームは新設計で、MRAIIと呼ばれるもの。エンジンを縦置きにしたモデル用の新しいアーキテクチュアで、2月に発表となった新型Cクラスもこれを共有する。参考までに現在のメルセデスのプラットフォームは次の通りである。
MFAII=A/B/CLA/GLA/GLB
MRA=E/CLS/GLC/AMG GT4ドアクーペ
MRAII=C/S
MHA=GLE/GLS
MSA=SL
MFAIIはエンジン横置き、MRA系はエンジン縦置き、MHAはMRAをベースにしたSUV用で、この他にリアトランスアクスルのAMG GTクーペ/ロードスター、ラダーフレームのGクラスは専用のプラットフォームとなる。

高速走行から渋滞時まで、ステアリングに手を添えているだけで自動加減速やステアリングをアシストしながら車線をキープするアクティブステアリングアシストなど、安全性を高めドライバーの疲労を軽減する、最先端の安全運転支援システムを搭載。

サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーンに相似した形状の4リンク、リアがマルチリンクで、空気ばね+電子制御式ダンパーを組み合わせたエアサスペンションが全車に標準装備されている。このエアサスにアクチュエーターを組み合わせたフルアクティブサスペンションのe-ABCの初期導入は見送られたようだ。60km/hで逆位相と同位相を切り替える後輪操舵も標準装備だが、日本仕様は最大ステア角が4.5度のもの。本国には10度の仕様も存在するが、これは特定の駐車場でのみ使用可能な自動駐車機能使用時の角度である。

従来から徹底した遮音対策を行なってきたSクラスだが、新型では「MO-S」と呼ばれるサイレントタイヤを初採用。

今回はS400d 4マチックとS500 4マチックロングの2台を同時に拝借。いずれもAMGライン装着車だったのでタイヤ&ホイールは20インチ(標準仕様は18インチ)を履いていた。標準ボディとロングの差は全長で110mm、ホイールベースも110mmなので、この110mmはそのままBピラーからCピラーの部分に充てられていることがわかる。

大きな安らぎを感じさせる水平基調のインテリア。機械式スイッチ類を極力減らし、エアコン操作をはじめとするほとんどの機能は、中央部に位置する12.8インチの有機ELメディアディスプレイのタッチパネルで行う。ドライバーの顔、指紋、声やPINコードによる認証によって、シートポジションやお気に入り設定などを読み込むことも可能。さらに進化したMBUXでは、今回初めて前後席それぞれ左右計4席のどの席から発話されているかを聞き分け、個別に対応してくれる。アンビエントライトも大幅に改良され、周囲の明るさに応じて日中モードと夜間モードが自動で切り替わる。ただ室内を彩るだけでなくMBUXで音声入力を行っているシートをハイライトしたり、警告で赤く点灯するなどの機能も備える。

運転席に座るとステアリングの奥とセンターコンソールに置かれたふたつの大画面液晶にまずは目が行くが、シートスイッチを動かそうとしたら動かず、静電式になっていてちょっと驚き、その先にヘッドライトスイッチがあってさらに驚いた。右ハンドルならステアリングの右下のダッシュボード部分に必ずあったヘッドライトスイッチがドア側に動いていたのである。自分の知る限り、メルセデス史上初のことだろう。

コクピットは、メーターパネルとセンターディスプレイのスタイルに一新。速度計などの表示が立体的に見える3Dコックピットディスプレイはオプション設定。シート調整スイッチは触れるだけの静電式に変わり、ライトスイッチがドア側に設置されたのはメルセデス・ベンツ初の試み。

ステアリング上のスイッチも静電式で、センターの有機ELディスプレイはタッチ式だから、機械式スイッチのクリック感はもはや(ほとんど)存在せず、今後こうしたスイッチが自動車の標準となっていくのだろうけれど、「呼ばれたらちゃんと返事しなさい!」と母親によく叱られた昭和のおっさんには、指にフィードバックのない操作性に慣れるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

オプションのARナビゲーションは、センターディスプレイだけでなく、ヘッドアップディスプレイ上にクルマの動きに合わせて矢印が実際の路上の映像上に表示され、わかりやすく誘導してくれる。

実は昭和のおっさんはヘッドアップディスプレイも苦手だった。Sクラスのそれは、10m先に77インチの画面を見ているのと同じ距離感で視認性がすこぶるいい。プロジェクターの技術を応用して130万画素の高精細画像としたこともその要因だろう。フロントウインドー越しの実風景に矢印を重ねるARナビも悪くなかった。

新型Sクラスのシートは人間工学を考慮し、心地よく、疲労しにくいようにデザインされている。さらに後席の快適性に磨きをかけ、ロングボディに用意されるオプションのリアコンフォートパッケージでは、写真のフットレスト付きエグゼクティブリアシートのほか、メルセデス初となる後席エアバッグが装備される。

「ハイ、メルセデス」のかけ声で立ち上がる音声認識機能は、発声者の位置までも認識するようになった。つまりドライバーが「ちょっと寒い」と言えば、温度設定が変更されるのは運転席のみといった具合である。デジタルデバイスがなくてはならない存在となる時代がもうすぐそこまで来ている。

クルマの基本性能も抜かりなく熟成

400dが搭載するチョクロクディーゼルターボのOM656型はメルセデスの既存モデルに多く採用されているエンジンで、個人的にはメルセデスの現行エンジンの中でもっとも好みである。ターボで過給するもののターボラグはほとんどなく、チョクロクらしい滑らかな回転フィールのみならず、1200rpmから発生する700Nmという強力なトルクのおかげで、力強い加速が常用域のどこでも味わえる。そもそもNVが上手に抑えられたディーゼルユニットなので、ラグジュアリーセダンの心臓としてもまったく遜色はない。

現状では3L直6クリーンディーゼルのS400dと、ISGテクノロジーを搭載した3L直6ガソリンエンジンのS500をラインナップ。

唯一、アイドリングストップからの発進では一瞬の間と小さな振動を感じるが、それが皆無なのが500ロングである。こちらもチョクロクターボのM256型はISG仕様なので、発進時にはモーターを使用するからだ。ディーゼルと比べると全域でトルクが細いガソリンのチョクロクの欠点を補うために、モーターから電動式スーパーチャージャー、そしてターボへと見事にたすきを繋いできれいな線形のトルク特性としている。いずれのエンジンも9速ATが組み合わされ、トランスファーケースを介して4輪を駆動する。この4MATICの駆動力配分は40:60の固定だが、常に前輪に40%もの駆動力がかかっているとは思えない。感覚的には20:80くらいのFRを操っているようである。

メルセデス・ベンツ初となる格納型のドアハンドルは、キーを身に着けた人がクルマに近づくとドアハンドルが自動でポップアップ。走り出すと自動で格納され、優れた空力性能と静粛性に貢献。

ターンインの時に、操舵初期の応答性がわずかに早くなっているのに気が付いた。ステアリングの切り始めのところにピークがあってすぐに車両が反応するものの決してナーバスではなく、その後はこれまで通りのドライバーの入力に極めて従順なハンドリングとなる。後輪操舵の効果と思われるが、この所作はロングでもまったく変わりなかった。ワインディングロードでもリズムが乱されることなくドライビングが楽しめる。

新たに後輪操舵システム「リアアクスルステアリング」を採用。メルセデスの美徳である小回り性能と俊敏で安定したハンドリングを両立sする。

乗り心地も従来型とは若干異なる。ばね上をゆったりと動かしていたセッティングから、主に伸び側の減衰がやや速くなった。だからといって硬くはなっておらず、路面からの入力はうまくいなしている。高速域でのスタビリティの向上を狙った設定と思われ、速度を上げていくにつれてばね上の動きは収まっていく傾向にあった。ドライブモードをSやS+にしても、乗り心地に大きな変化はないのにロール方向の動きを見事に制御していた点には感服した。

申し分ない広さのトランクスペース。容量は標準ボディで535ℓ、ロングボディで505ℓを確保。クロージングサポーターも装備する。

静粛性は主に上半身周りが向上しているように感じた。これは、ボディの構造部材の中空部分に発泡ウレタンを流し込んだことと、空力の改善による風切り音の低減が要因だろう。ロードノイズも従来型より少なくなっていたが、タイヤをよくみたら「MO-S」の表記があった。「MO」はメルセデスの純正タイヤの仕様を意味し、「S」はサイレントの略だという。インシュレーターの類を仕込んだ専用設計のタイヤだそうだ。
スタイリングやハンドリングなどから、新型Sクラスはややドライバーズカー寄りになったと思っている。それでも乗り心地や静粛性といった、ショーファードリンブンカーとして必要な快適性も最新のデジタルデバイスと共に進化を遂げている。Sクラスはオーナー自らがステアリングを握る場面も多く、市場のニーズにきっちりと応えながらも、Sとしての在るべき姿を絶対に外さないそのまとめ方には脱帽である。

【Specification】メルセデス・ベンツ S400d 4MATIC [S500 4MATICロング]
■車両本体価格(税込)=12,930,000[17,240,000]円
■全長×全幅×全高=5180×1920×1505[5290×1920×1505]mm
■ホイールベース=3105[3215]mm
■トレッド=(前)1645[1645]、(後)1675[1670]mm
■車両重量=2090[2170]kg
■エンジン種類=直6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=82.0×92.3[83.0×92.3]mm
■総排気量=2924[2996]cc
■圧縮比=-
■最高出力=330[435]ps(243[320]kW)/3600-4200[6100]rpm
■最大トルク=700[520]Nm(71.4k[53.0]g-m)/1200-3200[1800-5800]rpm
■燃料タンク容量=85L(プレミアム)
■燃費=12.5[11.0]km/L(WLTCモード)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=(前)4リンク/エア、(後)マルチリンク/エア
■ブレーキ=(前後)Vディスク
■タイヤ(ホイール)=(前)255/50R18[255/50R18](ーJ)、(後)255/50R18[255/50R18](ーJ)
■公式ページ https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/s-class/saloon/explore.html

フォト=郡 大二郎 D.Kori ルボラン2021年月5号より転載

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