いろいろなことが難しかった2020年もそろそろ秋かというころ、バス会社がマニアックなツアーを4つ企画しました。
その内の一つは残念ながら最少催行人員に達しなかったため中止になってしまいましたが、他の3つは臨時日も設定されるほどのものもあるなど大盛況。
それぞれにテーマがありなかなかに楽しいツアーだったので内容をぜひお知らせしたいと思い3回に分けてお届けすることにいたしました。
第2回は京阪京都交通が主催した“前後扉バス・ラストスパート大撮影会!!”です。2000年式三菱ふそうエアロスター(KC-MP717M)2台に乗って撮りました。京阪バスから移籍してきた車両です。
2020年度廃車になる前後扉バスでかやぶきの里に向かう
今回も方向幕車ツアーと同じJR亀岡駅西口を出発して京都府南丹市美山町のかやぶきの里を目指します。北へ50キロ強、山間の道をゆったりとした道のりです。
ほぼ中間地点の“スプリングスひよし”で休憩と形式撮影。
駐車場にはツーリングバイクも多数やってきたし、隣接するバーベキューガーデンではテントを張ったりすでにバーベキューモードだったりという家族連れで賑わっていました。
店内では薪、バーベキュー用材料も売っていたので道具さえ持ち込めば良さそうです。
人が多かっただけにそこにやって来た2台の大型バスとそれを取り囲むファン達にも注目が集まり、いろいろ声をかけられました。内容を説明すると、「じゃあせっかくなので私も」と撮る人も多かった。楽しいひとときです。
美山町までの道路沿いには農家の倉庫に使われている、京阪京都交通の前身である京都交通の廃車体もしっかり解説付きで車窓から見学しました。モノコックの車体なのでかなり古いですが、ボディや塗装の状態も比較的いい。
自然文化村の古民家で昼食と美山名産の牛乳を楽しむ
お楽しみの昼食タイムは写真のようになかなかのものでした。ごはんと味噌汁のおかわりができたのも嬉しかった。
食後には美山ふるさと株式会社地域振興部竹村さんから“美山牛乳”と“美山みるく珈琲”のサプライズ差し入れをいただきました。これはおいしいとみなさん。聞けば美山牛乳は殺菌消毒方法が独特なので牛乳が苦手な人でもおいしく飲めるのだそうです。一度試してみてください。
通常運行車両もやってくる駐車場で形式撮影と“幕回し”
これも定番のアトラクションです。LEDなのに“幕回し”とはこれいかに???
通常運行中の、これも古めの三菱ふそうエアロクイーンと日野セレガとも並べて撮れるチャンスもあったので楽しみも倍増。
それを怠ると火災事故にもつながりかねない、重要なエンジンルームの点検手法や肝の部分を教えてもらうという時間もあり、また一つ知識が増えました。こういうおまけもファンには嬉しい。
かやぶきの里を走る前後扉バスを撮る
今回のハイライトはかやぶきの里を走る前後扉バスを撮ること。
思い思いのポイントで待ち構え、自然文化村とかやぶきの里の間を往復するバスを撮影しました。由良川に沿う鞍馬街道(美山かやぶき由良里街道)はなかなか風光明媚です。
GoToキャンペーン中の休日とあってか行楽客で賑わっていて、かやぶきの里を散策したりお花畑で写真を撮ったりと楽しそうでした。
駐車場には数台の観光バスの姿もあり、ああこのまま……と思いました。この時は。
日帰りツアーのGoTo地域共通クーポンは当日しか使えないので、生産者の名前入り美山のコシヒカリ2キロと引き換えました。
“前後扉バス”は絶滅危惧種
ツーステップである前後扉バスは、交通バリアフリー法施行以降路線バスのワンステップ化、ノンステップ化が進み絶滅間近なムードです。
前後扉車は前から乗って後ろから降りるにしても後から乗って前から降りるにしてもドアが両端にあるので動線は一本。
対してワンステップ、ノンステップバスは後には扉はないし中扉より後にはステップがあるし、動線も交錯するので乗客はあまり行きたがらない。そうなると使われない空間も出てくるし、混雑路線では「後にも行って!」と運転士が余計なアナウンスをしなければならないし、そのためにダイヤが乱れることもあります。バリアフリーなのは前扉から中扉までなので座席数も少なく、座席を必要とする乗客ですでに埋まっているので後から乗った人はそのままそこに立っているかステップ上がって後の空席に行くかの選択を迫られるという光景もよく目にします。
ステップがなく乗れるけど乗ってからが何かと不都合なバスと、よっこいしょとツーステップを上がり下りしなければならないけど乗ればフラットだし使える座席も多いしというバスとどちらがバリアフリーで乗客にやさしいか?とぶつぶつ言いたくなります。
でも車いすの乗客にはノンステップかワンステップでなければ乗り降りできないので(過去にはステップをぱたぱたと折りたたんでリフトになる路線バスが存在した)やはりノンステップバスなのかななんて思います。
ツアー参加者へのおみやげが魅力的
このツアーの参加者向けのおみやげセットが良かった。記念乗車証、昭和54年10月19日版の旅客運賃表、マスクホルダー、クリアファイルバス好きをくすぐるものでした。
さすが情熱あふれる仕掛け人が考えただけあります。
コロナ禍のこのツアーで何かあったらシャレになりませんので、主催者も問診票の提出を求め、検温、消毒、社内換気に万全を期し細心の注意を払って開催していました。
参加者も社内サイレントを意識しつつ存分に楽しんでいました。
久しぶりのイベントでしたが、一日外で全身に自然の空気を当てることは、こんなときだからこそ気持ちいいし、心身の健康を保つためには必要なことだと思います。きっと。参加者もみな楽しそうにしていらっしゃった。そんな姿を見てもああいいなと思う次第です。
取材・写真・文:大田中秀一
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