これまでのロールス・ロイスのショーファー・ドリブン志向とは一転、ドライバーズカーとしても楽しめるモデルとしたことで、同社の歴史上最も成功したモデルとなったゴーストが2代目へとバトンタッチした。“脱贅沢”がテーマの新型は、果たしてどんな世界観を見せてくれたのか。
これまで体験したことない極上のドライブフィール
2009年に、ファントムとは異なるコンセプトを掲げて登場したゴーストは、年間販売900台を記録するなど、ロールス・ロイスの116年の歴史のなかで、最も成功したモデルだという。これはこれまでのショーファー・ドリブンに加え、ドライバーズカ―としての資質を備えたのが理由のひとつに挙げられる。それらを受けて2代目へとスイッチした新型ゴーストのコンセプトは「ポスト・オピュレンス(脱贅沢)」だ。
これは現在さまざまな業種で注目を集めている手法で、きらびやかな装飾などを廃し、素材には上質なものを用いることで、シンプルさを極めたスタイルを指す。なるほど新型ゴーストの内外装を眺めてみても、滑らかなボディラインにモダンなインテリアなど、嫌味のないデザインが見て取れる。
そんなゴーストに早速乗り込み、スイッチひとつでクローズしてくれる電動ドアを閉めいざ走り出すと、そこにはこれまで体験したことのないドライビングワールドが待ち受けていた。まずは乗り心地。これはスムーズなんてひと言で片付けられるレベルではない。多少荒れた路面はもちろん、かなりの凸凹道でもまるで何事もないかのように走り抜けていく。ところどころにある段差を乗り越えるときは、ショックに対応するためについつい身構えてしまうのものだが、そこも呆気なく通過してしまうのだ。
ゴーストでは、新開発の「アッパー・ウイッシュボーン・ダンパー」と呼ばれる、サスペンションアームにダンパーを装着した機構と、これにカメラで前方の路面を読み取り、減衰を事前に制御する「フラッグベアラー・システム」を組み合わせた「プラナー・サスペンション・システム」を採用しているのだが、まさしくこの効果であろう。ちなみにGPSで前方のカーブを認識し、事前に最適なギアを選択する「サテライト・エディット・トランスミッション」も備わっている。
これだけ乗り心地がいいと、ハンドリングが犠牲になっているかと思われがちだがさにあらず。ステアリングフィールそのものは軽めのレベルだが、路面からのインフォメーションはきちんと伝えてくれるし手応えもしっかりしている。今回は試乗ルートにワインディングロードも用意されていたが、想像するよりもかなりのハイペースで、しかも快適性を損なうことなく駆けぬけることができた。
ゴーストに搭載されている6.75L V12ツインターボユニットは、最高出力571ps、最大トルク850Nmというスペックが与えられているが、吹け上がりも極めて滑らか。一般道をクルージングしている際にはその存在をほとんど感じさせないほど静かで、まるでモーターのようだ。絶妙だと感じたのがトルク特性で、発進時など強めにアクセルを踏み込んでも、後席の乗員が不快にならないよう、あえて急激な加速とならないように配慮されている。
そういうわけで、リアシートの居住性は、さすがロールス・ロイスと感じさせる極めて快適なものだ。もちろんその筆頭に挙げられるのは、前席以上にしなやかな乗り心地であるが、左右独立してオーディオやナビを操作できる電動ディスプレイや空調といったショーファーでは基本的な装備のほか、ひじ掛け後方にはワインクーラーまで用意されている。ちなみにこのワインクーラーは、ビンテージもののシャンパンと通常のもの用に合わせて、温度調整ができるという。
この新型ゴースト、余計な贅を廃しシンプルさを追求した内外装に、極上の乗り味を獲得したことで、さらなる成功は約束されたようなものだろう。