ISがマイナーチェンジを受けた。大幅改良とも言える内容だが、あえての“マイナー”にしたのには狙いがあり、結論を言えばユーザーにとってそれがベストな手法であったから。だからこそ、絶対的に走ることが愉しい、FRスポーツセダンに仕上がったのだ。
あえてのマイチェンに止めた理由とは?
格段にスタイリッシュな姿をまとって新しいレクサスISが登場した。コンパクトFRスポーツセダンというコンセプトが明快に伝わってくる切れ味鋭いデザインは、それだけで視線を惹き付けること請け合いだ。
フォルムはワイド&ローにこだわり、プレスラインを際立たせたシャープな造形。FRスポーツセダンに相応しい、アグレッシブなデザインに生まれ変わった。
この新型IS、実はフルモデルチェンジではなく大掛かりではあるがマイナーチェンジという位置づけになる。つまりプラットフォームは従来から継承されており、IS300の2Lターボエンジン、IS300hのハイブリッド、そしてIS350のV型6気筒3.5L自然吸気というパワートレインのラインナップにも変更はない。
写真はオーカー(茶色)の本革を使用した上質な仕立てとなるバージョンLグレードのIS300h。
開発に際しては、LCやLSが用いるGA-Lプラットフォームを用いたフルモデルチェンジも検討されたが、サイズアップ、重量増、価格上昇を抑えるべく、最終的にこのかたちに落ち着いたという。もちろん、その背景にはマイナーチェンジでも今のレクサスを体現する質高い走りが実現できるという確信もあったそうだ。
実際、シャシーは全面的に変更されている。まずはタイヤサイズを19インチへ拡大することで、グリップの余裕を大幅に高めた。それに合わせてボディは剛性向上が図られ、一方でタイヤサイズ拡大によるバネ下の重量増を相殺するべくアーム類の軽量化も徹底。レクサス初となるホイールのハブボルト締結の採用も、剛性アップと軽量化に大きく貢献するトピックだ。
これらの変更により全幅が伸び、それに合わせて全長も最小限伸ばされているが、それでもサイズはコンパクトと呼べる範疇をキープ。車重も10kg増に抑えられている。
それでも「プラットフォームは一緒でしょ?」という懸念は、走り出せばすぐに霧消する。そのフットワーク、とにかく軽快なのだ。
トランク容量は、ハイブリッド車はガソリン車と比べて9インチサイズのゴルフバック1個分程小さくなる。
カッチリとした剛性感が印象的なボディを土台にサスペンションはしなやかにストロークして、乗り心地は快適。それでいて操舵応答は非常に正確で、まさに意のままという感覚で気持ち良くコーナーに入っていくことができる。
トランスミッションはIS300hは電気式無段変速機(CVT)、IS300とIS350は8速ATを採用。ATはシフトスケジュールの制御が見直され、走りの質感が高められている。
そして立ち上がりでアクセルを踏み込めば、後輪が大地を蹴り出し、クルマを前に押し出して行く、いかにもFRらしい挙動を味わわせてくれるから嬉しくなる。電子制御に頼らず素のポテンシャルの高さが実現したこの爽快な走り味は、スポーツセダン好きには堪らないものがあるだろう。
写真はレクサス IS350 F スポーツ(2WD)で、ダークプレミアムメタリック仕様の19インチアルミホイールやリアスポイラーなどがFスポーツ専用の仕様となる。EPSやスタビライザーなどにも専用のチューニングが施されている。
パワートレインも制御には手が入れられている。まずIS300は8速ATのシフト制御が改良され、Dレンジのままでもクルマとの高い一体感を味わわせてくれるようになった。そしてハイブリッドのIS300hは、エンジンの回転上昇と加速感がリンクするようになり、従来のモタッとした切れ味のなさがだいぶ解消されている。IS350については基本的に変更はないが、それはこの走りを基準に、他の2モデルの味付けを近づけたということだそうだ。
レクサス IS350 F スポーツ(2WD)
今や当然ではあるが、先進安全装備はレクサスの最新のものにアップデートされている。ようやくの電動パーキングブレーキの搭載のおかげでレーダークルーズコントロールに渋滞時の完全停止・再発進機能が備わったのは朗報だ。
レクサス IS350 F スポーツ(2WD)
こんな具合で、実際に見て触れて、走らせれば、進化は明らかな新しいIS。さらにダメ押ししておくと、実は今回、価格は端数が揃えられただけで据え置きとされている。これだけ進化して、このスタイリングを得て価格上昇ナシなのだ。それもまたあえてのマイナーチェンジの大きな理由である。
レクサス IS350 F スポーツ(2WD)
世はセダン不振と言われ、レクサス自身もGSの販売を終了してしまったが、そんな今だからこそFRスポーツセダンの良さを多くの人に味わってほしい、再認識してほしい。それがこの新しいISに込められた願いなのだ。