メルセデス・ベンツEクラスとともに、アッパーミドルクラスを牽引する5シリーズが、そのEクラスに追従するタイミングでフェイスリフト。フロントエンドのデザイン変更がもっとも分かりやすい変化だが、実は全身をバージョンアップするほど内容は多岐に渡る。文字通りの深化である。
48Vマイルドハイブリッドの本格導入がニュース
5シリーズの現行モデルは2017年に発売が開始され、セダン(G30)とツーリング(G31)を合わせてこれまで全世界に向けて約60万台が出荷されてきた。そして今回、両モデルともにLCI(ライフサイクル・インパルス)を実施。これはBMWの社内用語でフェイスリフトを意味するもので、モデルサイクルの半ばにセールスの中弛み、商品の鮮度低下を回避するために行なわれるカンフル剤的なリフレッシュメントである。
まずボディは、全高と全幅、ホイールベースには変化がないものの、セダンでは+27mm、ツーリングでは+21mmと、わずかだが全長が伸びてともに4963mmとなった。空力特性もセダンのCd値が0.23、ツーリングが0.26と、こちらもわずかに改善されている。
エクステリアの変更でまず目に付くのは、2列のL字型デイドライビングライト持つ新型LEDヘッドライトで、オプションでレーザーライトおよび対向車両を幻惑させないBMWセレクトビームも用意。7本の縦格子が並ぶキドニーグリルのフレームは中央で繋がってさらにワイドになり、やがて一体化されるであろうモノキドニーを暗示する。フロントエプロン両端にはクロームフレームを持つ縦長三角形のエアインレットが新採用されているが、Mスポーツ場合はここにメッシュグリルを装着した大型エアインテークとなる。このほか、オプションで軽量かつ空力特性を向上させた20インチ・エアパフォーマンスホイールがサイドビューを引き締める。
リアエンドは3次元フォルムのL字型リアコンビネーションライトユニットの採用に加え、バンパー形状が水平になり見た目にワイドな印象に。また、エキゾーストのエンドパイプはすべてのモデルで台形にカットアウトされている。
インテリアは様々な音声操作が可能な最新のオペレーティングシステム7.0が標準装備となり、ドライバーの正面には12.3インチ、ダッシュボード中央には標準で10.25インチ(オプションで12.3 インチ)のコントロールディスプレイが装備される。
今回のフェイスリフトにおいて、パワートレイン関連でもっとも大きな進化は48V-mHEVの導入である。すでに昨年秋に4気筒の520dおよび520d xDriveで採用が始まったこのシステム、クランク直結タイプのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)は文字通り発電機とモーターが一体化したユニットで、 出力は8kW(11ps)を発生。そして12Vとは別に用意された48Vバッテリーにエネルギーを蓄積し、アイドリングストップだけでなく、25km/hから160km/hでの低負荷コースティング時にエンジンを停止させた際のエネルギー供給だけでなく、加速時のブースト効果も併せ持つ。
もちろん、ドライバーアシスト(ADAS)も限りなくレベル3に向けて進化をしており、車間距離コントロール付きクルーズコントロール、追越し禁止標識認知機能付きのスピードリミットインフォメーション、緊急ブレーキ付きフロントコリジョンウォーニング、歩行者認知市街地緊急ブレーキ、アダプティブブレーキアシストなど盛り沢山である。
コネクティビティも一層充実。スマートフォンインテグレーションに関しては、これまで標準だったApple Car Playに加えてAndroid Autoも車内接続が可能になっている。
2020年型5シリーズの生産は、これまでどおりバイエルン州のディンゴルフィング工場が担当。ここは7シリーズや8シリーズなど、BMWのアッパーミドルクラス以上のモデルの生産拠点となっている。ドイツでの発売開始は今年7月からとアナウンスされているが、価格はまだ発表されていない。