「高級車」はサルーンのものだけにあらず。いまはコンパクトクラスにも言え、ハッチバックやSUVでも小さいからこそ成り立つ高級感を押し出すクルマは増えている。しかし、個性が際立っているかと思えば機能や走行性能が拮抗しているなど、そのクルマ選びは悩ましい。そこでカテゴリーに分けた、購入時に悩むであろうライバルを比較し、モータージャーナリストが買うべき一台を本音で語った! 第2回は「DS3クロスバック vs ランドローバー・レンジローバー・イヴォーク vs ボルボXC40」のデザイン編!
スタイリッシュな上に実を伴う機能性を持つ3台
1990年代後半に人気に火が着いたSUVは、ここ10年の間に世界中で人気が爆発。パーソナルカーとして 当たり前の存在となった。
それだけに、現代のSUVにはスタイリッシュであることが求められている。世界中のメーカーが、手を変え品を変えて、 「シティオフローダー」だの、 「クロスオーバーSUV」だの、はたまた歴史あるモデルのセルフカバーだのを出してくるのは、消費者に少しでも他のメーカーよりカッコイイと思ってもらいたいからだ。
今回紹介するDS3クロスバックとボルボXC40、ランドローバー・イヴォークの3台は、そんな現代のSUVの中でも、特にデザインコンシャスなモデルたちである。デザイン性の高さをクルマの価値として重視する人には、どれも気になる存在だろう。
この3台の中で、最もデザイン的に凝っていて、個性が際立っているのは、DS3クロスバック。クルマの成り立ちとしては、この夏に上陸する新型プジョー208や来年に日本で発売予定のオペル・コルサなどにも採用されているPSAの新世代コンパクトカー用プラットフォームであるCMPプラットフォームを採用した、ちょっと車高が高いコンパクト・クロスオーバーSUVといったところなのだが、とにかくディテールへのこだわりがスゴいのだ。
凝った造形のヘッドランプや、立体感のあるフロントグリル、パールのネックレスを模したというデイタイムランニングライト、彫刻刀でえぐり取ったようなキャラクターライン、大胆さと繊細さを同時に感じさせるメッキの使いなどとにかく凝りに凝っている。
菱形のモチーフがそこかしこに見られるインテリアも、独特な色使いやレザーシートのステッチパターン、ギョーシェ加工が施されたセンターコンソールパネルなどが相まって、独自の世界観を作り出している。だがこのクルマは、スタイリッシュというよりむしろファッショナブルだ。伝統と最新モードが共存した独特なラグジャリーネスの表現は、 「ファッショアイテムとしてのSUVの在り方」を示しているように思える。
一方、XC40はプロポーションが特徴的なモデル。4425mmと、このクラスではやや短めの全長に対してホイールベースは2700mmと長く、1875mmと大きな全幅と1600mmを超えるワイドトレッドを持ち、コンパクトながら堂々としたスタンスを手に入れているのだ。
クリーンな面構成ながら力強さを感じさせるエクステリアは、端正でインテリジェンスを感じさせる。縦型の大型ディスプレイを備えたインテリアも無駄がなく、清潔感と先進性に溢れている。これぞスカンジナビアデザインの真骨頂といったところである。ルックス的にはとてもSUVらしいモデルだが、都会からカントリーサイドまで、シーンを選ばないクルマかもしれない。
英国生まれのイヴォークは、XC40よりさらに全長が短く、全幅がワイドだが、特徴的なウェッジシェイプのデザインがスポーティネスを強調している。現行の2代目はクーペやコンバーチブルも用意され、エッジが立ちまくっていた先代と比較すると、デザインが洗練されて全体的に若干大人しくなったものの、やはりスポーティ指向のデザインだ。
一方インテリアは水平基調で奇をてらったところはなく、レンジローバーの名に相応しい上質な雰囲気に仕立てられている。ビジネスシーンにも使えるクールな都会派SUVといったところだ。
スタイリッシュであることを基準にクルマを選ぶのは、実はなかなか難しい。表層的なデザインだけでなく、ブランドイメージやそのクルマのコンセプト、先進性、時代や文化など、様々な要素を考えなくてはならないからだ。ドライバーのライフスタイルやファッションも考慮する必要がある。
だがクルマ単体で見るならば、それがSUVであっても、ファッションと同様に、基本を押さえながら少し“ハズした”デザインであることが、スタイリッシュであることの大きな要素になるだろう。