遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!? 連載していた伝説の連載、その進化版がこの『ボクらのヤングタイマー列伝』です。第4回はランチア・デルタということで王道……とならないのが当連載。何とメインは2代目で、前代未聞の初代と3代目を合わせた”夢の”3ショットが実現!
ボクらのヤングタイマー列伝第3回『いすゞ・ジェミニ』の記事はコチラから
え? 2代目ってあの長くて大きなデルタじゃないの? そのくらい2代目デルタはマイナーな存在です
ランチア・デルタを本WEB読者でご存じない方はほとんどいないと思います。HF4WDやインテグラーレのWRCにおける華々しい活躍は説明するまでもないほど。でもデルタは本来、VWゴルフのライバルとして生まれたごくフツウの素朴な1.5BOXカーだったのです。
1979年にジウジアーロ・デザインの優れたデザインとパッケージングを持って登場したデルタは、系譜的にはかのフルヴィアの後継(意外でしょ)に位置します。フィアット傘下に入ったランチアは、リトモの各パーツを流用しつつも、長いトランスバースアームを持つリアサスペンションを採用するなど、そこかしこにランチアの意地を忍ばせていました。そんな”素の”デルタですが、1993年にようやく2代目デルタにフルモデルチェンジを行っています。え? 2代目ってあの長くて大きなデルタじゃないの? と言う方も多いはず。そのくらい2代目デルタはマイナーな存在なのです。
この2代目デルタは、フィアット・ティーポ/テンプラ、クーペ・フィアット、アルファ145/155、ランチア・デドラなどなど膨大な数の派生車を生み出した『ティーポ2/3プロジェクト』に属します。2代目デルタは、デドラのハッチバック版。初代デルタの4ドアセダンがプリズマだったのですが、プリズマが後から追加されたのに対しデルタはデドラの後に出ています。細かいことですが(笑)。デドラと同じくデザインはI・DE・Aで、前後ドアなど数多くのパーツをデドラと共用していました。
2代目はアルファスッドのように切り立ったテールエンドとなだらかなルーフラインが特徴でした。リアクオーターデザインの完成度は、20年以上経った今なお抜群。実はぼく、このクルマのテールは10指の中に入るくらい好きなデザインで、登場した時に受けた”なんてモダンなのだ!”という衝撃は、未だ失われていません。
2代目にもラリーベース車の発表が期待されましたが、初代のインテグラーレは1995年まで継続販売。結果として最後までそれは登場しませんでした。ですが”素の2代目デルタ”にも、『HF』の名を冠した2リッターターボモデルは当初から用意され、上質な内装を持ったハイパワーコンパクトハッチという、”戦う貴族”であるランチアらしいモデルもラインナップしていたのは嬉しいところでした。
ところでなぜ14年も初代デルタが販売されたのかというと、インテグラーレの販売継続と、素のデルタも隠れたヒット作だったことが理由にあげられます。一方、2代目デルタは日本には正規で上陸せず、イタリア本国でもあまり目立たないまま1999年にフェードアウト。2008年にそれまでとは別物のコンセプトを引っさげて登場した3代目が登場するまで、デルタの名は表舞台から姿を消すことになりました。
ということで、今回は大好きな2代目デルタをメインに描いています。2代目はデドラをストーン! と切り落としちゃったコロンとした雰囲気があり、そのイメージを再現出来たのではと思っているのですが、いかがですか?
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。
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