このまま歴史の狭間に埋もれさせるには惜しい!! 2代目ロータス・ヨーロッパは野蛮さを武器にしてドライバーのやる気を掻き立てる小さなスーパースポーツ

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ラグジュアリーなエリーゼとして産み落とされ、2代目ヨーロッパを襲名したロータス・タイプ121。僅か500台程度しか生産されず、歴史の狭間に埋もれようとしている。このクルマの本性は狂気にも似た意外性を含んでいる。

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従順ならざるラグジュアリーの一撃

2代目ロータス・ヨーロッパことヨーロッパSは失敗作の烙印を押されている。5年ほどの製造期間に500台ちょっとしか生産されなかったからだ。不人気の本当の理由はわからないが、当時このクルマのステアリングを握った時、ラグジュアリーを謳いながら少しもそうではなかったことだけは覚えている。

歴史を俯瞰したとき、ロータスと名の付くクルマでラグジュアリーを売りにして成功したモデルがあっただろうか。当のロータスはブランドのカバレッジを広げようとして挑戦していたが、市場はそれを求めていなかったのだと思う。

ラグジュアリーではないとしたら、ヨーロッパSとはどんなクルマだったのか? コクピットは変えようもなく窮屈。直線路ではサイズ感を超えて伸びが良く、ウェット路面ではターボが狂気的な一面を垣間見せることがあった。雨の高速道路で料金所からゼロスタートしたときには3速に入ってもまだ盛大なホイールスピンが止まらなかったほどである。

ロータスは何より軽さとドライバビリティを重んじるブランドであり、ことエリーゼ/エキシージに関しては、スーパーチャージャーこそあれターボは採用していない。エリーゼのシャシーにターボ・エンジンを組み合わせたのは、オペルのそれと2代目ヨーロッパだけなのである。

ロータスはエリーゼをマーク2に進化させるにあたり、再びGMの協力を仰いでいる。エリーゼ・マーク2のエンジンはすでにトヨタ製に決まっていたため、GMはオペル/ボクゾール・ブランドのスポーツカー生産を要求した。エリーゼのアルミバスタブシャシーを利用し、GM製の2リッター・ターボを組み合わせたオペル・スピードスターは2000年から2005年まで生産された。その翌年からはオペル用のパッケージングを利用したロータス・ヨーロッパSがデビューしている。

もしかしたらヨーロッパSはヘセルの工場に残されていたオペル用のリアサブフレーム(ホイールベースがエリーゼより3センチ長くなる)とターボ・エンジンの有効利用だったのかも(?)。そうではないにせよ、今あるリソースで何か作れないかと考えた彼らは、エリーゼより少しだけマシなラゲッジルームと革内装を盾にしてヨーロッパSをラグジュアリーモデルだと言い張り、その結果としてマーケットにほとんど受け入れられなかったというのが真実だろう。

そう、ヨーロッパSはラグジュアリーモデルではない。その正体は、最も過激なエスプリ・ターボとして知られるスポーツ300にも通じる従順ならざるロータスだったのである。

21世紀のターボ車でありながら、ヨーロッパSはABSしかドライバーズエイドを備えていなかった。ホイールスピンを愉しむのも止めるのも、全てはドライバーの右足に掛かっている。野蛮さを武器にしてドライバーのやる気を掻き立てる類のロータスは、見方を変えれば限定500台の小さなスーパースポーツだ。挑戦してみる価値は大いにある。

写真:近藤浩之 取材協力:AC マインズ カー・マガジン508号より転載

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2022/12/25 11:30

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