遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返る『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回は英国車で探していましたが、何とか見つけました当連載らしいワイルドピッチ! というわけで、ある意味伝説の1台、MG RV8ですヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第31回『タルボ・マトラ・ムレーナ』の記事はコチラから
時たま常識外からとんでもないボールを投げてくる、ある意味でいかにも英国的な1台です!
英国車を代表するスポーツカー、MGB。その説明に今さら多くのスペースを割く必要もありますまい。全長4m以内で車重も1トンを切り、エンジンは1.8Lの直4OHVでパワーは100ps以下。そんな”ライトウェイトスポーツカーの鏡”みたいなMGBですが、その手のクルマで必ず起こる”モアパワー”のリクエストに対応して、大きなエンジンを積んだモデルがいくつか用意されました。それが3リッター直6の『MGC』であり、3.5リッターV8の『MGB GT V8』であり、そして今回ご紹介する3.9リッターV8の『MG RV8』です。パワーアップの方法として大排気量の直6やV8を積んじゃうのはいかにも古の方法、そして英国流のやり方で好ましいですよね。
1980年代末、ユーノス・ロードスターの登場を契機にロータス・エランが復活したように、MG(ローバー)も新しいスポーツカーを生み出そうという動きになりました。でも新規モデルを生み出す余力がなかったMGは、ヒストリックモデルとも言えるMGBを半ばかなり無理やりにアップデート、1993年に新たな車種を送り出します。それがRV8でした。出た時はびっくりしました。1990年代に入って再びMGBが生産されることになろうとは!
RV8は英国流ライトウェイトスポーツカーを現代に蘇らせてしまったロードスターには真っ向から対抗せず、V8によるパワーとゴージャスな英国流内装が与えられました。190ps/32.4kg-mというスペックは、V8を積んでも車重が1100kg台しかないRV8に充分すぎるほどの性能。それを受け止めるファットになったタイヤはブリスター状オーバーフェンダーに収められ、外観も一気に現代的な装いになっています。とはいえ1960年代のクルマですから、縦に薄く直立したウインドスクリーン、前後に狭いコックピット、小さなドアとなだらかなトランク、リーフリジットのリアサス(!)といった古い設計が色濃く残り、運転しても古典的な乗り味が勝るクルマでした。
30年前に出た車種を現代的に改めて再生産、しかも大排気量のV8を押し込んで内装は超豪華という結構無茶なコンセプトを堂々とメーカーがやってのけたRV8は、時たま常識外からとんでもないボールを投げてくる、ある意味でいかにも英国的な1台と言えます。しかも正規で日本に輸入もされまして、価格は399万円でした。アウディ80が約400万円、メルセデスの190Eが約500万円だった頃の感覚では安いような気もしますが、少なくともユーノス・ロードスターのライバルにはなりえない価格なのは間違いありません。なんでパワー&ゴージャスの方に走ったのかな? と今更ながら疑問に思っちゃいますよね(笑)。あ、ちなみにエランは1992年の段階で665万円でした。遥かに高いやないか(号泣)。でも大学生だった僕にはどちらも憧れのクルマだったのです。
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。
■関連記事
- 35歳以下限定のイベント「YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~」で感じた”若い世代がつむぐクルマ趣味の未来”
- 【スクープ】排気量も「AE86」の再来に!? トヨタ「GR86」の次期型は攻めたデザインでデビューする!
関連記事
【スクープ】「MG3」が13年ぶりフルモデルチェンジでついに電動化! そのスタイルはメルセデスAクラスにソックリ!?
スクープ
2023.09.18
ボクらのヤングタイマー列伝:第52回『Z31型日産フェアレディZ』1980年代的なモダニズムを備えた3代目フェアレディZ
ボクらのヤングタイマー列伝
2023.04.22
【国産旧車再発見】国産スポーツカーのエバーグリーン、トヨタが世界に向けて羽ばたいた『トヨタ2000GT』
カーマガジン
2023.04.20
ボクらのヤングタイマー列伝:第51回『アウトビアンキY10』A112から一転、イタリアンモダンの極みのようなデザインに
ボクらのヤングタイマー列伝
2023.04.09
愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?
複数社を比較して、最高値で売却しよう!
車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。
手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!
一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!
【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>