瀬戸内海に面する土地探しから始めた夢のガレージづくりは、高校時代の友人との二人三脚で
広島県の海沿いに、英国製ハンドメイド「モーガン・スリーホイラー」を収めた新築のガレージがある。オーナーであるKさんは海に面した土地を3年かけて探し、約420坪の土地を取得、新しい土地での生活と夢のガレージ作りをスタートさせたという。
3人の子どもたちを海辺で育てたいと、ビーチに直接アクセスできる土地を選んだKさんは、母屋を住宅メーカーで新築し、フィアット850やポルシェ911を収めるためのシダーガレージをあわせて建築。しかし、雑誌記事でモーガン・スリーホイラーに一目惚れしたことで、愛車を潮風から守るガレージがさらに必要となり、モーガン用のガレージを増築することとなった。
今回ガレージの設計を依頼したのは、岡山県を中心にモダンな木造建築を手掛けている「アトリエ・エリア一級建築士事務所」の妹尾重義さん。施主のKさんとは高校時代からの友人であり、家族ぐるみでバーベキューを楽しむ仲だそうだ。妹尾さんは岡山県で古民家再生プロジェクトにも参画するなど、木造の構造についての知識があるため、Kさんは新しいガレージのプロジェクトを依頼しようと考えていたとのこと。妹尾さんにとってはガレージ単体の設計、建築ははじめてのことだったが、Kさんの希望や所有するクルマに対する理解を深め、土地の特性を活かしガレージの設計を進めていった。
焼杉の壁板が似合う日本伝統の木造在来工法が、モーガンにハマる
ガレージ設計において最大の問題となったのは、土地が海に面していること。ガレージからの景色は抜群にいいが、クルマを入れるとなると、潮による塩害を考慮しなければいけない。潮風によりクルマに塩分が付着すると、金属が腐食してしまうため、風向きやガレージの材質を考慮する必要があるのだ。
当初、Kさんは外壁を母屋と合わせた洋風サイディングにしたいと要望していたが、建築家の妹尾さんは外壁に焼杉を使い、コールタールにより塩害対策を防ごうと提案。その材料からインスピレーションを受け、日本から伝統的に伝わる木造在来工法のガレージを描いたという。西向きの立地のため、陽射し対策のため軒を通常よりも長くし、目の前に広がる海と共存するガレージを目指して、建築はスタート。モーガンを収めるガレージ計画は見事に現実となった。
完成したガレージは、焼杉の黒い外壁と大きな片流れ屋根、和風な雰囲気のデザインが印象的。一階にはVツインエンジンがむき出しのモーガン3ホイラーが溶け込んでいる。内部に入ると、あらわしの柱が印象的で窓からは海が一望できる。1/1模型のようなモーガンと書棚がとてもよくマッチングされ、ソファでくつろぐKさんの様子はまさに男性の憧れのガレージそのものであった。
取材協力:アトリエ・エリア一級建築士事務所 http://www.atelier-area.com
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