クラス2位に終わったものの”雨×スリック”の木下兄貴の走りにシビれた!【BMW Team Studie代表兼監督「鈴木BOB康昭」のレーシングダイアリーvol.4 スーパー耐久富士24H編】

全ての画像を見る

皆様こんにちは。BMW Team StudieのBOB鈴木でございます。

ここまで我々のスーパーGTでの活動をお読み頂きましたが、実は今期は別のシリーズであるピレリ・スーパー耐久シリーズ2020にもBMW M4 GT4を2台参戦させております。こちらはBMW Team Studieとしてではなく新しく2つのチームを誕生させまして、そちらのお手伝いを運営面そして技術面からサポートする体制になります。

まず1台目はゼッケン20番、SS/YZ racing with Studie。兵庫県にあるSSオートとY’Z Oneというクルマ屋さんが母体となるチームで、ドライバーはブランパンを2年間共に闘った木下隆之選手と砂子塾長、そして鈴木宏和の3名がレギュラードライバーとなります。

もう一台のチームはゼッケン21番、Teamサントメ・プリンシペwith Studie。西アフリカ近郊にある小さな、本当に小さな共和国であるサントメ・プリンシペという国の日本でのPR活動の為に作られたユニークなチームで、ドライバーは東風谷高史、高橋裕史、眞田拓海の非常にフレッシュな3名となります。どうかスーパーGT同様熱い応援の程宜しくお願い致します。

スーパーGTと同じくコロナの影響でこちらのシリーズも開幕戦が遅れに遅れておったのですが、9月5日、6日にようやく開幕戦を迎える事が出来ましたので、今回はそちらのご報告とさせて頂きます。いきなり富士スピードウェイでの24時間レースです!

普段のスーパーGTのレースはおおよそ約2時間です。一年間で8レースありますので、合計で約16時間です。それの1.5倍もの距離を1日で走るワケですから、そう考えるといかに24時間レースというのが過酷で長いものであるのかわかって頂けると思います。この24時間レースにおいてはTeamサントメ・プリンシペwith Studieは不参加で(このレース出るだけでも消耗品含めると1,500万円掛かってしまうんです。)20号車のみの参加となりました。また非常に長距離のレースになるため、先に紹介したレギュラードライバー3人に加え、強力な助っ人として荒聖治とJPオリベイラ選手を招集しました。

チームを代表する二人のドライバーで競う予選は見事に荒聖治+鈴木宏和がポールポジションを獲得。非常に幸先の良いスタートです。決勝もスタートドライバーを努めたJPオリベイラ選手が抜群の速さを見せ、2位に30秒以上のリードを作ります。しかし、ここからが大変なレースになりました。第2スティント担当の鈴木宏和が走り出して間もなく、大粒の雨がコースを濡らします。とても走れる雨量ではなかったのでコースにはセーフティカーが入り45台のマシン達は非常にゆっくりな速度でコースを周回します。その後も雨脚は更に強まり、ついにはレッドフラッグが振られレースは一時中断となりました。

約4時間後の夜22時30分、ついにレース再開となりましたが、その後も天候は安定せず降ったり止んだりの繰り返しで、セーフティカーが入ったり解除になったりの繰り返しのままレースは進んでいきます。そして、この時何度かセーフティカーの入るタイミングに我々のチームとしては不運が続き、気付けば3番手まで順位を落としました。続く砂子塾長そして木下隆之選手もそんなコンディションの中でも必死に前を追いかけますが、勢いに乗るかというタイミングでまたもやセーフティカー、追い抜きを掛けようというところでフルコーションイエロー(全車50km/h走行での義務)といかんせんリズムが合いません。

それでも続く荒聖治のスティントで2位まで順位を上げ、更にTOP走るAMG GT4をもオーバーテイクして、皆さんが通常ならおやすみになられている深夜に再びTOPの座を奪い返しました。続く鈴木宏和のスティントではまた大量の雨でセーフティカー導入。続くJPオリベイラ選手の時は天気もやや回復し3時間連続ドライブのダブルスティントを敢行しましたが、やや燃費に優れるAMG GT4に、またもやピット作業の時間でTOPを奪い返され、更にまたもや悪いタイミングでセーフティカーが間に入り、そのギャップは3周にも開いてしまいました。
ここで今回のレースの大一番が参ります。今年還暦を迎えるMr.ニュルブルクリンクの木下隆之選手が乗り込んだ時に、またもや突然の雨が襲いました。その時走行していた全車、晴れ用のスリックタイヤを履いています。雨は大粒で雨量も非常に多かったので、たまらず全車ピットインしてウェットタイヤに交換します。しかし、木下隆之選手は「この雨きっとすぐ止むでしょ。オレはこのまま行くよ!」と、まさにあの悪環境のニュルを走り続けてきた経験からくるドライビングテクニックを披露し、ウェットタイヤに履き替えたトップを走るAMG GT4の3〜5秒落ちで走行を続けます。

そして、その言葉どおり雨は直に止み、今度は全車スリックタイヤに履き戻す為にピットイン。つまり木下選手以外の44台はこの数周で二度もピットインしタイヤ交換を余儀なくされているのに、木下選手だけが一度もピットインしなかったのです。これにより3周あったトップと同一周回まで挽回する事が出来ました。まさにベテランの味。ニュルブルクリンクの神様が降臨した瞬間でした。
そして、最終スティント。最後のステアリングを荒聖治に託し、トップでのフィニッシュを信じてチーム一丸となって荒のドライビングを見守りましたが、結果は僅か及ばずの2位で、SS/YZ racing with Studieの初陣が終わりました。

チーム発足から初のレースで二位は上出来ですよね。そんな事を口にするスタッフは一人もいませんでした。皆の顔に悔しさと24時間闘い抜いた疲労が重なり、とても準優勝したチームとは思えない重苦しい雰囲気に包まれましたが、これこそがプライドなのだと思います。今シーズンのチャンピオンシップを獲得する事が最大の目的ですので、まだ始まったばかりです。そのスタートとしては決して悪いモノではなかったと思います。しかしながら、勝てたレースを勝てなかった想いは、やはり全員が感じていました。どうでもいい事ですがレース中のファステストラップは見事にBMW M4 GT4で獲得しました。どうでもいいことですね。と、ついついレースも長かったのでコラムも長くなってしまいました(笑)
今後もこのスーパー耐久シリーズの事も書いて参りますので、引き続きご愛読のほど宜しくお願い申し上げます。開幕が遅れたせいで、今は毎週末がレースです。悔しんだり落ち込んだりしている時間はありません。前を見て、上を目指して闘って参ります。
最後までお読み頂き誠に有難うございました。

それでは

ブーーーーーーン✈

フォト=田村 弥/W.Tamura

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!