厳密にいえばセグメントの違うこの2台は、直接比較対決するのは難しいかもしれない。しかし、乗って楽しく見ても楽しい、コンパクトフレンチハッチという部分は共通。次期ファミリーカーを物色中だという竹井氏の琴線に触れるのはどちら?
次期ファミリーカー選びに本気モードで挑む!
いつもふざけているわけでないが、この2台は本気の試乗である。別稿でも触れたが現在初代208を気に入って乗ってはいるものの、ルームミラーを見ると大きくなった子供たちが3人ギューギューに座ってたり、2人分のスーツケースを積むのにも手こずったりするもので、謎に安いメガーヌエステートなどを物色中なのである。
そんな訳で大いに興味があるのはまずCセグメントの308だ。思い返せば2022年4月のオートモビルカウンシル2022でたまたま見かけたのが、実物の3代目308との出合いだった。長らく306カブリオレに乗っていたこともあって会場でばったり会った旧知の編集者に感想を求められ、「もう立派になりすぎちゃって手の届かないところに行っちまったなって感じです」と答えたのを覚えている。会場でライトアップされたグリーンメタリックのボディはそれくらいキラキラしていた。
あらためてソリッドの白いボディの308GTハイブリッドを目の前にして、色あせることなくかっこよろしいのに加え、こなれ感があるのがまたすかしてらっしゃると思った。がんばってメイクしてきましたって感じじゃなく、だってきれいな形に生まれちゃったんだものという佇まいなのだ。
この伸びやかなフォルムを可能にしているのは、狭い道路や駐車場が多い日本でコンパクトカーと呼ぶには大きすぎる絶対的サイズだ。全幅1850mmの308をBセグメントのルーテシアと並べるのはちょっとずるい。やっぱりこれくらい幅の広さを確保すると、曲線基調であっても低く構えたクールな雰囲気をまとわせることが可能になるのだろう。例えば全幅1810mmの3代目フォルクスワーゲン・シロッコのかっこよさなんて近しいんじゃなかろうか。それはまた流麗さを醸すサイドビューに貢献する全長もしかりだ。
その恩恵は当然後部座席にももたらされ、膝前のスペースも充分。後席用のエアコンレジスターもきちんと用意されているから、家族の評価も期待できる。そんな後席も前席も、GTのシートは黄緑色のステッチがアクセントに入ったアルカンターラとテップレザーのコンビで、座り心地はしっとりしている。乾きがちな大人の日常にしっとり感は大切だ。
控えめなサイドサポートが大人スポーティな運転席に乗り込んだら、天地が平らな小径ステアリングホイールの上からメーターパネルが見える位置までシート高を上げてiコックピットの準備はOK。すっきりシャープでゆるやかに囲まれ感のあるコクピットはやはり大人スポーティな眺めだ。
出足は電気のみのするするっとしたもので、まだ眠りの中の早朝の住宅街ではひたひたと進むEV走行がありがたい。スピードを上げるといつの間にやらエンジンが目覚めている。コーナーではビシッと両足を踏ん張りつつ、上下には穏やかに細かな振動も大きな突き上げも吸収する乗り心地は余裕たっぷり。ガソリンモデルに乗っていないので比較ができないのだが、PHEVはガソリンモデルに比べておよそ300kgの重量増だが、むしろその重さはしっとり感に貢献しているんじゃなかろうかとも思う。そしてこのパワフルさはPHEVならではなのだろうか。どの速度域でも息つくことなくずっと力が満ちている。
そしてプジョーらしい微アンダーにして美アンダーなステアリングにはうっとりする。思い通りに向きは変えつつ、鼻先をコーナーの出口にじわじわと押し込むように切り増していける感覚が楽しい。ああ、しっとりもちもちで贅沢だ。どこまでも、ずーっと走って行けそうだ。
エレガントな308スポーティなルーテシア
308はサイズを生かした美しさを実現しているのに対し、実寸制約のあるBセグメントでありながら、筋肉質な踏ん張り感と今にも風を切って走りだしそうな前進気勢を感じさせるルーテシアのスタイリングもまた秀逸だ。しかもこのE-TECHエンジニアードというスポーティグレードは、ブラックアウトされたエンブレムやフロントバンパー下部に艶消しゴールドのF1ブレードが効いて一層筋肉質。流行りの手法なのか、近ごろ外観のアクセントとして見掛けることが増えた気がする艶消しゴールドも素敵だ。ゴールドのアクセントは、ダッシュボードやエアコンレジスターのルーバーやステアリングホイールといったインテリアにも取り入れられて、一見地味な室内も質感が高い。
エレガント路線の308に対して、ルーテシアの走りはかなりすっきりスポーティだ。パワートレインはとにかくパワフルで、出足も鋭い。欧州車としてはレアなフルハイブリッドだけに優れた燃費性能が謳われているが、電気はただ、パワーを追加するためだけにあるかのようだ。
それでいてがさつさがまったくない。たとえばエンジンとモーターの間をドッグクラッチで繋いでいると聞いていたからどんだけガツンと来るんだろうと身構えていたけれど、なーんにも起こらず、がっちりとパワーが繋がり続ける。308より硬質だけれど、きちんきちんとよく動いて路面を蹴り続ける足はしなやかで、308がつきたて餅ならルーテシアは2日目の餅くらい硬いけど確かな弾力が気持ちいい。
サイドサポートのしっかりしたスポーツシートは肩までぴったりフィットして、フェイスマスク並みに装着感がいい。ワインディングを走っていると車線いっぱいにライン取りを楽しむことができて、コンパクトであることは正義だと思った。後席に大人を乗せるなら2人がいいとこ、できれば長距離は避けたいが、そんなことはどうでもいい。大人とか家族とか差し置いて、ひとりでずっと山の中を駆けていたくなる。
ちょっと贅沢で大人な308にも惹かれるし、雑味なくコンパクトカーの楽しさを享受できるルーテシアも魅力的だ。さて、次期ファミリーカーにはどっちが相応しいのでしょうね。
ちょっと贅沢で大人な308、コンパクトカーの楽しさを享受できるルーテシア
【SHORT IMPRESSION】渡辺慎太郎
RENAULT LUTECIA/小さなFF車作りに一日の長がある
試乗車のルーテシアには、駆動用とスターター兼ジェネレーター用のふたつのモーターを備えたハイブリッドシステムが搭載されていた。その制御は以前に比べるとずいぶんとスムーズになって使い勝手も向上している。だからといって日本車のハイブリッド車のように30km/Lなんて燃費をいとも簡単に叩き出せるわけではないけれど、それでも輸入車1位の低燃費(25.2km/L)を謳っている。ドライバビリティは決して悪くないし、ルーテシアというクルマのキャラクターを邪魔するものでもない。
マイルドな乗り心地とドライバーの意図通りに気持ちよく曲がる操縦性は健在で、ルノーには小さなFF車作りに一日の長があると再認識した。
【SHORT IMPRESSION】野口優
PEUGEOT 308/普段はEV走行、あとは遠慮なしにロングドライブ
まさに今の時代にちょうど良い極めて現実的な308GTハイブリッド。180psを発揮する1.6L直4DOHCエンジンと110psを発する電気モーターをフロントに組み合わせ、システム総合出力225psと文句なしのPHEVである。EVのみの走行可能距離も64kmと実に良いところを狙っている。しかも、12.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しているため車重は重くなってはいるものの、体感的にはトルク特性が優れているおかげで、ほとんど気にならない。もちろん、快適性は高く、ハンドリングも日常で扱いやすいよう適度なフィーリングでとにかく乗りやすい。普段はEV走行のみで買い物に使い、あとは遠慮なしにロングドライブに連れ出したくなる。
【SPECIFICATION】RENAULT LUTECIA E-TECH ENGINEERED
■車両本体価格(税込)=3,790,000円
■全長×全幅×全高=4075×1725×1470mm
■ホイールベース=2585mm
■車両重量=1310kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1597cc
■最高出力=91ps(67kW)/5600rpm
■最大トルク=144Nm(14.7kg-m)/3200rpm
■モーター最高出力=49ps(36kW)/1677-6000rpm
■モーター最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/200-1677rpm
■トランスミッション=マルチモードAT
■サスペンション=前:ストラット、後:トーションビーム
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:205/45R17
問い合わせ先=ルノー・ジャポン TEL0120-676-365
【SPECIFICATION】PEUGEOT 308GT HYBRID
■車両本体価格(税込)=5,727,000円
■全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
■ホイールベース=2680mm
■車両重量=1660kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1598cc
■最高出力=180ps(132kW)/6000rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1750rpm
■モーター最高出力=110ps(81kW)/2500rpm
■モーター最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/500-2500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:ストラット、後:トーションビーム
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:225/40R18
問い合わせ先=ステランティスジャパン TEL0120-840-240
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