秋のドライブ日和に、BMWとメルセデス・ベンツの電動コンパクトSUVから、最新モデルのiX2と、先日マイナーチェンジが行なわれたばかりのEQAを乗り比べ。注目の2大ジャーマンブランドが繰り広げる勝負の行方は如何に――⁉
BEVでありながら“らしさ”を打ち出す
BMWのiX2 xDrive30 Mスポーツは、66.5kWhの駆動用バッテリーを搭載、前後にモーターを配置する4輪駆動で満充電での航続可能距離は460km(WLTC)と公表されている。対するメルセデス・ベンツEQA250+は70.5kWhのバッテリーで前輪のみを駆動し、航続距離は591km(WLTC)。充電環境がBEVを乗り回すにはいまだ十分とは言えないこの国において、BEVの善し悪しの判断基準は航続距離みたいなところにあるのは事実であり、それも仕方ないとも思う。その観点だけで見れば、iX2に100km以上もの差を付けたEQAの勝ちということになってしまう。ただ、自動車の魅力は操縦性や動力性能や乗り心地などをブレンドして抽出された味に凝縮されているわけで、それはBEVだろうがエンジンだろうが変わらない。
この2台の航続距離もよく考えてみれば、バッテリー容量が少し多く前輪しか駆動しないEQAのほうが長いのは当たり前だ。ちなみに車両本体価格は、EQA250+の771万円に対してiX2 xDrive30 Mスポーツは約30万円安い742万円となる。
ボディサイズはEQAが全長4465mm、全幅1835mm、全高1610mm、ホイールベース2730mm。iX2は同4555mm、1845mm、1565mm、2690mm。iX2のほうが長く背が低いが、EQAのほうが全長は短いのにホイールベースは長く、室内の前後方向には外から見た感じ以上の余裕がある。ホイールベースはバッテリーの搭載量(=航続距離)に関係している。
EQAは昨年本国でフェイスリフトを受け、今年になって日本導入が開始された。フロントグリルがEQSなどと同じスターパターンをあしらったものに変更、ステアリングの意匠も刷新されるなどしたが、もっとも大きな変更箇所はバッテリー容量の拡張だった。実は以前の容量はiX2とまったく同値の66.5kWhだったのである。だから容量を増やしたのか? とちょっと勘ぐりたくもなるけれど、単なる偶然だったようである。iX2はX2のフルモデルチェンジと共に登場したばかりのニューモデル。新型X2/iX2のプラットフォームは基本的に従来型を踏襲するが、電動化にも対応できるようにした改良版。したがって2690mmのホイールベースはX1と同値で、さらには新型のクロスカントリー改めミニ・カントリーマンとも同値である。ご存知のようにBMWの車名は偶数がクーペルックで、しかし従来のX2はそうでもなかったものの、新型になってようやく“偶数ルック”になった。
モーターひとつで前輪のみを駆動するEQAの最高出力は190ps、最大トルクは385Nm。190ps/247Nmのモーターを前後に置いて4輪を駆動するiX2のシステム出力は272ps、システムトルクは494Nmだそうで、出力とトルクの数値だけを見ればiX2のほうが圧倒的にパワフルである。参考までに車両重量はiX2のほうが30kg重いけれど、このパワーなら相殺しても余りあるだろう。
ダイレクト感のあるiX2と重厚感のあるEQA
実際に運転をしてみても、iX2のほうが軽いのではないかと錯覚するほど加速が俊敏だ。BMWのxDriveは駆動力配分が随時可変なので、状況に応じて前後トルクを配分するが、その指示は電気信号によってもたらされるから各車輪の反応は内燃機の機械式4WDよりも早く、トラクションの無駄遣いがほとんどない。加えて、アクセルペダルを踏む右足のわずかな動きも逃さず加減速するから、駆動系とのダイレクト感が心地よい。運転を司る手足の動きとクルマの動きをリンクさせることにこだわりを持つBMWは、内燃機でももちろんダイレクト感を感じられるが、BEVになるとさらにその部分に磨きがかかって輝きを増したようにすら感じる。
EQAの動力性能自体は、普段使いの範囲で不満を覚えるようなことはないはずだ。しかし、今回のようにiX2からすぐに乗り換えると大人しい印象を受けてしまう。ターンパイクのような登り勾配が続くシーンでは、明らかにiX2よりも深くアクセルペダルを踏み込んでいるのが分かるから、せっかく大きなバッテリーを積んでいても、残りの航続距離が見る見るうちに減っていくような気がした。ただ、おそらくパワフルではないことを逆手にとって、ひと昔前のメルセデスによく見られた味付けにあえてしているのではいかと想像する。アクセルペダルを踏み込むと、すぐに加速は始まらず、ジワジワとでも確実の速度を上げていくアノ感じである。これがEQA全体にそこはかとなく漂う重厚感のような乗り味の形成にもひと役買っているようにも思う。
この重厚感は乗り心地からも感じられる。路面からの入力がサスペンションだけで処理しきれなかった分については、ばね上をゆっくり動かすことで全般的にゆったりとした乗り心地としている。角があるようなショックが少ない点も、乗り心地がいいと感じてしまう要因のひとつだろう。この点に関してiX2は、減衰を早くしてボディの動きを抑えにかかろうとするいわゆるドイツ車のセッティングゆえ、人によっては硬めの乗り心地という印象を持つかもしれない。ただ、決して乗り心地自体が悪いわけではなく、サスペンションはよく動いているし、タイヤが跳ねるようなことも皆無だった。
この2台、BEVでありながら、とてもBMW的でありメルセデス的でもあると思った。パワートレインや乗り心地の印象は前述の通りだし、曲がりたがるiX2に対してひたすら正確なEQAの操縦性も、我々がBMWとメルセデスに抱くイメージ通りである。BEVが出始めの頃は、どこへ向かうのか心配になった時期もあったけれど、両社とも経験を積むことでBEVの作り方がこなれてきて、しっかり自分の物にしたようだ。
BEVの誕生から時間が経ち、両社ともに作り方がこなれてきた
【SHORT IMPRESSION】竹井あきら
Mercedes-Benz EQA/王道のメルセデスらしさを持つ走り
エンジン音のないBEVということもあってロードノイズは大き目だが、それすら美点と思えるほど力強く前進する。BEVらしいトルク感に満ちた出足の良さと、内燃機関のメルセデスから乗り換えても違和感のない出力の躾には王道を感じる。シルバーリング輝くタービン風エアコンレジスターはいかにも強い冷風を供給してくれそうで、酷暑でぐずぐずになった日本人を強く引き寄せる装備だ。コンパクトカーというにはボリューミーな体躯だが、後席も膝前に余裕がある。それでいて東京都なら最大180万円、それ以外でも最大120万円弱の補助金やら減税措置が受けられるというのは、まさに至れり尽くせりだ。
【SHORT IMPRESSION】西川淳
BMW iX2/走りを楽しみたい人へオススメのBEV
X1とiX1を憎からず思っていたから、そのクーペ版には人一倍関心があった。残念ながらエクステリアデザインにはX1ほどには惹かれなかったけれど、そのドライブフィールは予想通り、X1よりもグッと密度が増して、クルマとの一体感を楽しめるモデルになっていた。今時のたいていのBEVは基本、街乗り重視でいい。ワインディングを立派に走る必要などないのだけれど、そこはプロペラエンブレムの意地というものだろう。すぐに馴染んで走り出し、ひらりひらりと行く手に迫るカーブをクリアする。この感覚はX1より確実に上。積極的に走りを楽しみたい人向けのクオリティがあるという意味でもオススメのBEVだ。
【SPECIFICATION】Mercedes-Benz EQA 250+
■車両本体価格(税込)=7,710,000円
■全長×全幅×全高=4465×1835×1610mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=1980kg
■総電力量=70.5kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=591km
■モーター最高出力=190ps(140kW)/3550-7000rpm
■モーター最大トルク=385Nm(39.3kg-m)/0-3550rpm
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:235/45R20
■問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610
【SPECIFICATION】BMW iX2 xDrive30 M Sport
■車両本体価格(税込)=7,420,000円
■全長×全幅×全高=4555×1845×1565mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=2050kg
■総電力量=66.5kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=460km
■モーター最高出力=190ps(140kW)/8000rpm
■モーター最大トルク=247Nm(25.2kg-m)/0-4900rpm
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:245/45R19
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437
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