駐車スペースもタイプに合わせて棲み分けされている
まだまだ暑い日が続くドイツですが、一雨ごとに少しずつ空気感が変わり、夜は秋の虫の声も聞こえるようになってきました。エアコンのない寝苦しい日が続いたこの暑いドイツの夏ももうちょっとで終わりかとゴールが見えてきた感じです。
他のドイツの都市も含めて、ミュンヘン市ではここ数年でブームとなっているのがLastenrad(ラステンラート)というもので、日本ではカーゴバイクと称されているのでしょうか。電動自転車の前に箱状の荷物入れ、もしくは子供2人位が乗れるスペースがあってシートベルトも付いているようです。まだブームになる前には主にデリバリー等で利用されていたように思いますが、ブームになってからはママ・パパが主にお子さん達との日常のアシとして利用されている風景をよく見掛けます。
ドイツでは保育園や幼稚園はもちろんの事、小学校もご両親やご親族、ベビーシッターさん等の送迎をしなければならないようです。日本の学校のように集団登校の制度がありませんので、慌ただしい出勤前になかなか毎日大変ですよね。小学校は大体4年生位までは親御さん達の送り迎えで登下校しているようです。
都市部では狭い道も多い上、中心部や幹線道路沿いの保育園・幼稚園・小学校の送り迎えにクルマを停めるのも大変な所も多々ある事から、クルマでの送迎を禁止している学校もあるようですので、このカーゴバイク人気に火が付いたのかも知れません。実際に私の借りている地下ガレージの真上は保育園で、送り迎えの保護者の方のクルマがガレージの入り口に何台も停まっていて出られない時もありますので困ります。そんな時はクラクションを鳴らしてください、と大家さんから言われていますが、住宅が密集している地域ですから近隣の住民の方にはご迷惑になりますので躊躇してしまいます。
このカーゴバイク、元々はキャンプのテントのような生地製で、電動ではない自転車に牽引するタイプのモノが主流で、小さな子供なら1~2名が乗れるのでそれで送り迎えをしている方がおられましたが、このタイプは減少傾向になっていると感じています。自転車と切り離すと手押しのベビーカーのようにもなるので便利そうですよね。
最近では荷台が前にある木製のしっかりしたものが急増してきました。モデルにもよりますが、お安いものでもお値段も2千ユーロ台後半(約40万円)から8千ユーロ(約130万円)程まで幅が広いようですが、いずれにしても非常に高価な事は間違いないですね。日本でも保育園や幼稚園の送り迎えに電動ママチャリをご利用されている方も多いと思いますが、それと同じ感覚なのでしょうね。ワンちゃん等のペットを載せておられる方も見掛けますし、デリバリー業者の他、ご家族向けには子供さんとちょっとした買い物の荷物を積めるので大変重宝されているのですが、このカーゴバイクは結構大きいのです。
高価なだけに盗難も心配なところですが、一般の駐輪場には大きすぎて停められませんので、歩道に停めておられる方も多いのですが、場所によっては歩道が狭く、ベビーカーや車椅子の方の通行の妨げにもなり得るだけに悩ましいところです。私のお向いの方はこれ施錠付きの2万円以上するガレージを別途借りておられます。
恐らくこのカーゴバイクは車重も重く、内輪差も大きいのではないかと思いますが、電動モーターのお陰で軽々と運転出来るのでしょう。しかし、狭い自転車レーンでは大き過ぎるのです! もちろん、交通ルールや運転マナーをしっかり守っておられる方が大半だと思うのですが、小さなお子さんを載せているのに、猛スピードでコーナーを攻める、車道にはみ出る、歩道を走行する、突然車道を斜め横断する、赤信号を無視する、狭い自転車道なのに無理やり追い越しをする、逆走をする、スマホを触りながら運転、通話をしながら走り周りを全く見ていない等、驚きの運転をする方も多々おりヒヤリとしてしまいます。幼いお子さん連れで毎日時間に追われておられるのは十分理解出来ますが、赤信号を無視して交差点へ入って事故に遭ったら元もないと思うのですが……。
ミュンヘン市内では歩道が狭く、十分な自転車レーンが確保出来ない場所や自転車の交通量が著しく多い場所等に自転車優先道路が随分と増え、そこでは自動車もバイクも走行可能ですが、30km/h規制です。このエリアではこのカーゴバイクは全く問題ありませんが、私の自宅近辺の一般的な自転車レーンの幅を計ってみたところ150~180cmでした。
ドイツのメディアではこのカーゴバイクに乗るママたちに皮肉を込めた報道をしているところもありますが、ルールを守れば便利な乗り物なんですけどね。
ドイツでは2023年12月までEVやハイブリッド車の購入にあたり、かなりの高額な購入助成金を導入していたのですが、目標金額に達した為に途中で打ち切りになりました。環境にニュートラルな乗り物への助成金は2023年6月1日から受付が開始し、対象となる車両の種類によっても助成金の額は異なるようですが、大体が車両価格(税抜き)の25%まで、最高金額は幾らまでという規定があるようです。電動アシスト付き自転車やカーゴバイクも対象の助成金とあり、2024年はこれらのカーゴバイクを購入する方が増えたのでしょうか。
ドイツのフランクフルトの北に約100kmのマールブルグ市では、自家用車を1年間登記を抹消して、公共交通機関や自転車、徒歩、カーシェアリングに換えると様々な特典が付くようです。例えば、カーシェアリングには最高800ユーロ、公共交通機関の乗車券補助は最高600ユーロと選択肢が用意され、それに加えて市内の商店や飲食店で利用可能なクーポン券も最高400ユーロまで支給されるようです。
様々な組み合わせで、1年間、最高1250ユーロがお得に暮らせますよ、というものらしいのです。地方都市であるマールブルグに訪れた事はありませんので、街の規模や生活圏がどのようなものか分かりませんが、ライフスタイルのよって車なしの生活が問題なく可能な方とそうではない方でくっきりと分かれそうな気がします。
それこそ市街地にお住まいで、自家用車を殆どご利用になっていない方にはカーゴバイク等で十分事足りますので、ぴったりな制度ですね。この制度、日本のシニアの方の免許返納の時の特典にも似ていますね。
地球環境保護、CO2削減、渋滞緩和等の観点から自動車の稼働を制限するというのは理解出来ますが、その一方でドイツでは日本同様に自動車産業は国の経済を大きく支えている事も忘れてはいけません。EV化に移行が始まった頃から、昨今の不景気も重なり、古くからある自動車部品メーカーの倒産や大人数のリストラのニュースが相次いでいて心を痛めます。
国を支える大きな産業を取り巻く様々な関連企業やその下請けの町工場まで数多くの方たちの生活が奪われてはいけないと思うのですが……。必ずしも自動車=悪なのではなく、利用の仕方次第ではないでしょうか。
この記事を書いた人
武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。
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