プレステージカーの電動化をリードするベントレーの旗艦『フライングスパー・ハイブリッド』を通して同カテゴリーの電動化について考えてみる

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社会的にそれなりの地位にある方々が所有するであろうハイエンドサルーンだけに、その社会的責任を考えれば、CO2削減は喫緊の課題。ここでは同カテゴリーの電動化について、最新のフライングスパー・ハイブリッドに乗って考えてみた。

ベントレーの旗艦らしい余裕綽々のパフォーマンス

車両価格で2000万円を超えるプレステージカーの電動化は、プレミアムカーやポピュラーカーに先行する可能性が高いと個人的には見ている。その理由は、市場が先進国の大都市中心で、充電ネットワークが早く普及するというのが一点。もうひとつは、プレステージカーを購入する富裕層にとって電動化に伴う車両価格の上昇は大きな問題ではなく、さらにいえば複数台所有が基本なため、航続距離の短さなどが障害にはならないと思われるからだ。

そうしたプレステージカーの将来的な”電動化ロードマップ”を予想すれば、まずはPHEV、続いてBEVという流れで2030年代には一定の電動化を完了する、ということになるだろう。

もちろん、こうした移行のスピードは、ブランドによって多少のバラツキがある。たとえばベントレーやロールス・ロイスのようなハイエンドサルーン系は完全BEV化を2030年までに達成する計画を立てているが、ランボルギーニに代表されるスーパースポーツカーブランドは、PHEV化を2020年台中ごろまでに完了しても、完全BEV化には慎重な姿勢を見せている。「BEVで十分なパフォーマンスが得られるのか?」という懸念がその最大の理由だが、いっぽうでカーボンニュートラル・フューエル(eフューエル)や燃料電池への期待も完全に捨て去っていないという事情が関係しているように思える。

いずれにせよ、ハイエンドサルーン市場で電動化をリードしているのがベントレーであることは間違いのないところだ。彼らは2018年に初のPHEVとなるベンテイガ・ハイブリッドを発表。当初、このモデルは日本に導入されなかったものの、2021年にベンテイガがビッグマイナーチェンジを受けると、そのハイブリッド版を国内でも発売。これに続くPHEV第2弾として登場したのが、ここで紹介するフライングスパー・ハイブリッドである。

【写真7枚】プレステージカーの電動化をリードするベントレー・フライングスパー・ハイブリッドの詳細を写真で見る

こういった場合、多くのブランドでは基本的に同一のパワートレインを2台に搭載するが、ベントレーは実に手間のかかる手法を選択した。というのも、ベンテイガに積まれているエンジンはアウディが主体となって開発した3L V6であるのに対して、フライングスパー用はポルシェが中心に開発した2.9L V6。しかも、前者の過給器はシングルターボのデュアルスクロール、いっぽうの後者はツインターボのシングルスクロールと、ここでも差別化が図られているのだ。

結果として発揮されるシステム出力とトルクは、ベンテイガの449psと700Nmに対して、フライングスパーは544psと750Nmと大きくリード。ミュルザンヌなき後、実質的にベントレーのフラッグシップを務めるフライングスパーに相応しいパフォーマンスを生み出している。

実際に試乗した印象は、まさにベントレーそのもの。電気モーターで走れば限りない静寂性を堪能できるうえ、スロットルペダルを大きく踏み込めばエンジンが始動して、ベントレーにふさわしいトルキーな走りが楽しめる。そのときにV6エンジンが発する意外なほどの快音に、胸をときめかせるベントレー・ファンは少なくないはず。これであれば、彼らが進める今後の電動化も安心して見守っていられそうだ。

【SPECIFICATION】ベントレー・フライングスパー・ハイブリッド
■全長×全幅×全高=5316×1978×1483mm
■ホイールベース=3194mm
■車両重量=2505kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ツインターボ+モーター/2894cc
■システム最高出力=544ps(400kW)
■システム最大トルク=750Nm(76.5kg-m)
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/Vディスク
■タイヤサイス(F:R)=265/45R20:295/45R20
■車両本体価格(税込)=24,200,000円
■問い合わせ先=ベントレーモーターズジャパン☎0120-97-7797

フォト=郡 大二郎 ルボラン2023年4月号より転載

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