2023年も新たな旅へ向けて出発
先回の旅の続きで、舞台は三重県鈴鹿サーキット。スーパー耐久シリーズ最終戦で、自動車メーカー各社の社長、役員、そしてチームスタッフなど、自動車業界関係者と様々な要件で意見交換した。その際、「東京からここまでハイエースキャンパーで走ってきました。この後は、お伊勢参りをしてから伊勢湾フェリーに乗って…」と話すと、少々小難しい話題の議論でも相手の気持ちがほぐれて、本音を聞き出すことができたように思う。
そうした中、気になったのがトヨタが世界初公開した、ピックアップトラック「タンドラ」の燃料電池車によるキャンピングトレーラーだ。燃料電池車「MIRAI」に搭載している燃料電池スタックとリチウムイオン二次電池をそのまま使い、また水素タンクは「MIRAI」では3本のところ「タンドラ」には5本積み、航続距離とトーイングキャパシティ(牽引能力)を上げているのが特長だ。日本でトヨタのピックアップトラックといえば「ハイラックス」が代表格だが、ピックアップトラックの本場であるアメリカでは、トヨタはフルサイズピックアップトラックが「タンドラ」で、ミッドサイズピックアップトラックは「タコマ」になる。
アメリカでは「タンドラ」でキャンピングトレーラーを牽引しながら、家族でサマーキャンプを楽しんだり、またコンサートやスポーツイベントでも会場周辺に主催者が大規模な駐車スペースを設けてそこで数日間に渡りキャンプを楽しむといった人が少なくない。
日本でも最近、キャンピングトレーラーを使うオートキャンプも徐々に広まってきている。だが、一般ユーザーにとってはキャンピングトレーラーを日頃どこに停めておくかが大きな課題となるは、日本では当然のことだろう。トヨタ関係者によると、今回の展示はあくまでも「水素社会実現に向けたコンセプトとしての提案」にとどめており、実用化については「荷台スペースを制限しているなどまだまだ課題は多い」と話す。
ここで、時計の針の90年代まで戻すと、アメリカではSUVブームの初期段階であり、またピックアップトラックが本来の商業車から乗用化する動きが全米に拡がっていた。特にV8搭載のフルサイズピックアップトラックでは、GMシボレー「C/Kシリーズ(シルバラードの前身)」、フォード「Fシリーズ」、そして当時クライスラーのブランドだったダッジ「ラム」が御三家であった。
筆者はテキサス州ダラス近郊に本拠地とし、「ラム」を愛用して全米各地へ自走していた。例えば、ニューヨークマンハッタンまでは3日近く、またロサンゼルスまで丸2日かかった。1日の走行距離は1000マイル(1600キロ)に達することも珍しくなかった。そうした中で、レースマシンをトレーラーで牽引することもあったことを思い出す。
日本でも今後、機会をみてキャンピングトレーラーでのキャンプ体験をしてみたいところだ。その際は、コンちゃんではなく相棒は「ハイラックス」になるかもしれない。
リモートオフィスとして大活躍
鈴鹿サーキットを後にして、コンちゃんと一緒に紀伊半島を南下。目指すは伊勢志摩エリアである。このあたりは、若い頃に鈴鹿サーキットでレース参戦していた際、また近年は中京地域での仕事の際などで何度か来ているが、まずは、コンちゃんでのお伊勢参りとなった。外宮(げくう)前でコンちゃんと記念撮影をしてから、外宮周辺を歩いた後、内宮(ないくう)に移りゆったりとした時間と空間を味わった。
それから鳥羽に移動して各所を散策していたのだが、そんな時でも各方面からメール、SNS、そして電話で仕事の連絡や各種の問い合わせが来る。そうした要件でじっくりと話す必要があったり、またはオンラインでの記者会見に参加する時は、コンちゃんの中を移動オフィスとして活用し対応している。
最近は、比較的に安価に各種の照明機器が手に入るので、それをスマートフォンやパソコンに装着してzoomやTeamsを使っている。さらに、コンちゃん車内のLEDライトも併用すると画面がとても明るくなる。
コロナ禍になった3年以上が経ち、こうして屋外や自宅からのリモート会議がすっかり当たり前になったが、3年前はソフトウエアの使い方がよく分からないなど初歩的な苦労もあった。そんなことが今では笑い話になってしまうほど、リモート会議は定着したと思う。
そして、コンちゃんがウチに来てから2年弱の間、コンちゃんの中から日本や海外の各地を結んだリモート会議を数多く行ってきた。まさに、リモートワークである。そんな中、最近多いのはテレビのニュース番組への出演だ。突発的な事件や事故、または国や地方自治体の記者会見に対して解説するのだ。そのほとんどが生放送であり、出演依頼は放送当日の場合が少なくない。
また、キー局(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)の地上波放送やBS放送のみならず、準キー局や地方局のローカルニュース番組への出演依頼も、リモート会議システムが一般化したコロナ禍になって一気に増えた。
今回の移動中も、中京地域向けのテレビ愛知から、夕方のニュース番組への出演依頼があった。リハーサルで技術的なチェックを行うため、放送開始1時間前からこちらはスタンバイする必要がある。
そのため、こちらの移動スケジュールを微修正しながら、また渋滞など交通事情も考慮しながら、コンちゃんの中から対応するのか、またはホテルの部屋から対応するのかなど、いろいろ考えながら移動した。
結果的には、伊勢市内のホテルに早めにチェックインできたため、コンちゃん車内で使っているリモート会議用機材一式を部屋に入れて、部屋にある椅子や机などを上手く組み合わせて仮設スタジオを作った。
題材は、軽EV(電気自動車)である。日産「サクラ」と三菱「eKワゴンEV」がカーオブザイヤーを獲得するなど、軽EVが人気を博しているところだが、さらなる普及に向けた課題などについて、名古屋のテレビ愛知のスタジオにいるキャスターとの一問一答形式で対応した。CMを挟まず約10分間の出演枠は無事終了。ディナーは、未だにコロナ禍であることを十分に配慮して、地元で人気のイタリアンのピザをテイクアウトすることにした。
翌日は、午前9時過ぎに鳥羽港から伊勢湾フェリーに乗り渥美半島まで約1時間の船旅。渥美半島についてから、農産物販売店で地元野菜などを調達した。
さらに渥美半島を東へ走り、浜松市内に入り、「うなぎパイ」製造工場にちょっと寄ってから、「発動機」ではない「ヤマハ」本社で所用。「ヤマハ」には筆者の幼少期から音楽関連でいろいろお世話になった。
浜松浜北ICから新東名高速に乗り、途中の静岡SAで「静岡おでん」をコンちゃん車内でゆっくり味わう。東名高速に入ってからは渋滞の名所、厚木ICから横浜町田IC間の渋滞が緩和するまで神奈川県中井PAで、コンちゃん車内で4泊5日の旅での荷物整理をしたり、後部で足を伸ばして各地で買ったお菓子とお茶でゆっくり休憩。午後7時半頃には多摩川を超えて東京に戻ってきた。
いろいろあった2022年、2023年もコンちゃんと一緒に新しい旅に出たい。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。
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