【STUDY 01】3ブランドのフラッグシップに与えられた「S」の記号性に揺るぎはないのか!? 「メルセデス・ベンツ」3ブランド

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現代の”高級車”に求められる要件とは?

「Sクラス」という言葉を聞いただけで思い浮かべるのは、常に最先端テクノロジーを搭載したフラッグシップというイメージだ。そこには高級車に求められる要件がすべて注ぎ込まれているからだ。ここでは、3ブランドそれぞれの「高級」について考えてみた。

「S」の名を纏ったラグジャリーモデル
メルセデス・ベンツは現在、4つのブランドを展開している。すなわちメルセデス・ベンツ、メルセデスAMG、メルセデス・マイバッハ、そしてメルセデスEQである。メルセデス・ベンツが基本の幹で、そこからよりスポーティなメルセデスAMG、よりラグジャリーなメルセデス・マイバッハ、BEV専用のメルセデスEQという3本の枝に分かれているイメージである。そうはいっても、すでにメルセデスEQのAMG版なんかが登場していて、分かれた枝がひとつになったりするもんだから若干ややこしい。

「つべこべ言わず、ここではAMGを除く3ブランドのいわゆるフラッグシップモデルを比べてみて、メルセデスが考える高級をあらためて明確にすることが目的です」と編集女史Kから依頼を受けた。が、さらにつべこべ言わせていただくなら、メルセデス・マイバッハの本当のフラッグシップはもはやメルセデスの中で唯一のV12気筒エンジン搭載モデルとなったS680であることを一応付け加えておきます。

メルセデス・マイバッハのGLS600 4MATICは3,982ccのV8ツインターボエンジン(ISG仕様)を搭載する。メルセデスのS580も3,982ccのV8ツインターボだが、よく見ると型式が異なっていて、あっちは「176」、こっちは「177」。マイバッハGLSの「177」は実はAMGで「63」と謳われているユニットと共通なのだ。だからこのクルマは”メルセデス・マイバッハGLS63AMG”と言えなくもないからやっぱりちょっとややこしい。

【写真24枚】メルセデスが考える「高級とは」をあらためて明確にする 

もちろん、エンジンの制御マップは専用で、AMGのようなアグレッシブな感じはなく、静かな力強さを持っている。BEVじゃないのに2,840kgもあるボディを、4輪がしっかりと路面を掻いてスムーズに加速させていく様はモーター駆動のBEVに少し似ている。エンジン音がほとんど聞こえないからなおさらそう思う。

メルセデスのGLSと比べて決定的に異なるのは後席である。メルセデスGLSの3列目シートを取っ払い、2列目シートを後方へ下げて特に足元のスペースを拡大したのがマイバッハGLSだ。大きなセンターコンソールにより左右独立となったシートは、電動調整でオットマンが出てきても前席に足が触れないほどのスペースが確保されている。

当たり前だけれどセダンよりも天地方向にもスペースがあるので、広々とした印象が強い。ショーファードリブンカーとしてSUVやミニバンを好んで選ぶ人が多いのも理解できる。でも自分はやっぱりセダン派である。SUVやミニバンでは、フォーマルのパーティに(たとえそれがたいそう高級なものであったとしても)デニムを履いていくように思えてしまうからだ。

各ブランドに与えられた「高級」の意味合い
“EVA2″とは、メルセデスがBEV専用として開発したプラットフォームの名称で、EQS、EQE、EQS SUV、そしてEQE SUVの4モデルがシェアする。昨年開催されたEQSの国際試乗会はSクラスと同じ場所だったので、「EQSはBEVのSクラスという位置づけなのね」と思った。しかし新型7シリーズがそうであるように、BEVでも格好はSクラスのままでもよかったのではないか? という声もあるらしい。なぜメルセデスはわざわざBEV専用のプラットフォームを開発したのか。

理由は主にエンジニアリング的こだわりである。コストや販売の観点ならエンジンもモーターも共通のプラットフォームにしたほうがいい。しかし、吸排気系やトランスミッションをもたないBEVはパワートレイン全体がエンジンよりも圧倒的に小さく、BEV専用ならエンジンルームを小さくできて空力に特化したスタイリングも可能となる。共有することによる無駄や無理を嫌い、BEVとしての理想型を追求したのだろう。

ボンネットが小さく、そして大きくスラントさせてキャビンを前方に寄せたEQSのキャブフォーワードのパッケージは、まさしくBEVならではのものである。0.20という量産車世界一のCd値が達成できたのも専用のプラットフォームとボディのおかげだ。そしてこの卓越したエアロダイナミクスにより、風切り音の大幅な削減と高速域でのスタビリティの高さなど、快適性をエンジン搭載車では到達出来ないレベルにまで押し上げている。

一方で”BEVのSクラス”の割には後席の特に天地方向のスペースがミニマムだ。ハッチゲートを持ち、リアウインドーが大きくスラントしているせいで頭上にやや圧迫感がある。ショーファードリブンというよりも、自らステアリングを握って楽しむクルマなのかもしれないと、個人的にはそんな気がしている。

マイバッハGLSが”仕様の高級”だとするならば、EQSは”技術の高級”、そして両者の基準となるSクラスは”様式の高級”と言えるかもしれない。世の中にはロースル・ロイス・ファントムなど、価格や格式でSクラスの上をゆくセダンが存在する。しかし、1000万円台の価格レンジで、フォーマルな装いとそこそこの威厳を備え、快適性と安全性と機能性がバランスよく融合し、自らの運転でもショーファードリブンとしても使える高級セダンの様式のようなものを確立したのはSクラスではなかろうか。

今回はまずマイバッハGLS、次にEQS、最後にSクラスに試乗したのだけれど、どういうわけかSクラスが1番ゆったりと運転できた。マイバッハGLSのほうが室内は豪華だし、EQSのほうが静粛性は高い。それでもSクラスの内外装に漂う空気感や、動力性能と操縦性が織り成す乗り味に、自分なんかはこれこそが正真正銘の高級セダンだと思ってしまうのである。”Sクラス”という記号性はもはやブランドになっている。高級にもっとも必要なものは結局それなのかもしれない。

◆問い合わせ先:メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610

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2022/12/08 11:30

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