連載【桃田健史の突撃!キャンパーライフ「コンちゃんと一緒」】~「キャラバン マルチベッド」とコンちゃん、揃い踏み~

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じっくり見て、感じて、走って分かった両車の違い

なんだこれ!?
日産のプレスリリースを見てハッとした。コンちゃんとは同業他社の間柄にある、商業車「キャラバン」の架装車である「マルチベッド」を使って、一般ユーザーに向けに車中泊体験の実証試験(2022年4月28日~5月17日)をするというのだ。
このご時世、車中泊ブームでもあり、また日系メーカーとして唯一、メーカーによるカタログモデルとしてのライトキャンパーである「キャラバン マルチベッド」のプロモーションを強化という流れが見えてくる。

今回の実証試験では、様々なアクティビティ体験も。右が実証試験用の車両。

実証実験の舞台は、茨城県高萩市。人口約2万7000人で海と山の自然豊かな土地柄で、近年は”アウトドアの町”を観光振興策として打ち出しているので、日産とのコラボも十分に理解できる。
そこで、このタイミングを使って、筆者自身が以前からやろうと思っていた企画を実行に移すことにした。コンちゃんと「キャラバン マルチベッド」との比較である。
本来、ガチンコでの比較をするならば、コンちゃんの仲間である「イージーキャンパー」が対象車になるのだが、そもそも「ハイエース」と「キャラバン」を比較をしたかったこともありので、今回の対決図式となった。

2台を並べてみて感じることは?

まず、日産グローバル本社を通じて、高萩市での実証試験で使うモデルと同型の「キャラバン マルチベッド」を借りてきた。コンちゃんとの初対面の場所は、本連載で以前からご紹介している、筆者が個人で仕立てた千葉県房総半島内の屋外スペース「キョンちゃんスタジオ」の近く、通称キョンちゃんスタジオ・サイトBを選んだ。

両側ベッドを倒してテーブルを付けた状態。

日頃、街中や高速道路では「キャラバン」に出会う機会は多いが、こうしてじっくり並べてみると、なるほど、いろいろ違う。ボディ寸法では、コンちゃんが、全長4695mm×全幅1695mm×全高1980mm、ホイールベースが2570㎜。対する「キャラバン マルチベッド」は、全長4695mm×全幅1695mm×全高1990㎜、ホイールベースが2255㎜だ。

このように、全長と全幅はまったく同じで、「キャラバン マルチベッド」が全高で10mm高く、ホイールベースで15mm短い。実際に2台を正面、真横、後面で並べてみると、「キャラバン マルチベッド」の方が”ほっそり背高”なイメージ。これは、フロントグリル・バンパー・ヘッドライトの形状や、ルーフの最前部でコンちゃんは”なだらかな形状”をしていることに起因する。
インテリアについて、「キャラバン マルチベッド」は乗用ミニバンのイメージが強い。また、車内から見たフロントガラスが「キャラバン マルチベッド」の方が上部が少し広く感じる。ただし、フロントウインドの下部の位置は、コンちゃんとほぼ一緒の印象で、交差点などでの前方の見切りは両車で大きな差は感じない。
次に、スライドドアを開けて後席に乗り込もうとすると、床の高さが「キャラバン マルチベッド」はコンちゃんより”少し高い”ことが直感的に分かる。そしてシートアレンジなど、後席から荷室にかけては、2モデルそれぞれではっきり違うことで、逆にそれぞれの良さもしっかり見えてきた。

フロアの高さの違いははっきり分かる。

コンちゃんは、備え付けのサイドボードや、組み込み式の電源システム、天井のLEDライトなどによって「まさにリビングルームのような部屋感覚」であることを改めて実感した。ボディカラーとサイドボードとシート表皮の色見が近いため、全体的に明るく広いイメージだ。

フルベッドスタイルでのんびり過ごす。両方ベッドを倒してテーブル装着。

一方、「キャラバン マルチベッド」は、大きな荷物を気軽にドンドン詰める。また、シートアレンジにかかる時間も短く、荷室のイメージは大きく変わる。部屋というよりは、やはり「ギア感」が強く、多様な実用的という感想だ。コンちゃんと並んでの比較は、ここまでだ。

高萩へ向かいながら感じた走りの良さ

翌日、都心方面から茨城県高萩市を目指した。首都高速から常磐道に入り、高萩ICまで片道約160km。日曜の朝だったが、交通量はこちらで想定していたよりかなり少なくてひと安心。一方、想定以上のことも感じた。
それは、走りの良さだ。エンジンは2Lで7速ATなので、余裕のパワーというより、走行シーンに応じて最適な力を引き出すという感じだ。また、エンジンと排気系などからの車内に対する音や振動も商用車としてはかなり少ない。

今回お借りした2.0Lガソリン搭載の「キャラバン マルチベッド」のエンジン。

最も驚いたのはハンドリングの良さだ。実に、軽快なのだ。操舵に対してクルマ全体の動きが過敏ではないのに、クルマ全体の動きに対する追従性が自然だ。乗り心地も商用車にとしてはかなり質が高い。そのため、実際のボディサイズよりひとまわり小さいクルマに乗っているような感覚になる。日産でいえば、「セレナ」といった感じであろう。
また、タイヤはノーマルのLT(ライトトラック用)を履いているのだが、路面の凹凸に対して尖った感じもないし、路面の凹凸によってリアサスが一気に跳ね上げるような動きもない。
対して、コンちゃんの場合、2.8Lディーゼルエンジンによる迫力あるトルク感で、重量級がグイグイ走るという雰囲気だ。むろん、コンちゃんより車重が軽い「ハイエース」2Lガソリン搭載車では、今回試乗した「キャラバン マルチベッド」に近い走行感になるだろう。

キャブオーバーはエンジン搭載位置がフロントシートの真ん中。コンちゃんの2.8Lディーゼルはかなりのどっしり感だ。

いずれにしても、「キャラバン マルチベッド」は実に乗りやすく、なんといってもドライバーの疲れが少ない。同乗者も、クルマの動きの自然さや乗り心地の良さを実感したとコメントしている。

海や山でしばしのんびり

高萩市内の車中泊スポットは5カ所あり、今回はそのうちの2つ、「高戸小浜海岸」と小高い丘の上にある「さくら宇宙公園」でミニキャンプを楽しんでみた。

高萩市が車中泊の実証スポットに設定した、高戸小浜海岸。

高戸小浜海岸では、「両側ベッドスタイル」とした。操作方法は実に簡単で、ベッドを固定しているフックと、ベッドの足を折りたたむレバーを押すという2アクション。片方のベッドの内側に固定されているテーブルとテーブルの足を取り出し、硬質フロアにテーブルの足をくるくると回してねじ込み、その上にテーブルを固定。その連結部もしっかりしているのでテーブルがぐらつかないのが良い。海風を感じながら、自宅から持参した軽食や飲み物と、往路で仕入れた食事を出して、ゆったりブランチ。

次に、大型パラボラアンテナが特徴的な「さくら宇宙公園」へ。こちらでは、ベッドの中央に、ベッドと同じ材質と表皮の2枚のボードを組み込んで、フルフラットベッドにした。そのうえで、ゴロゴロしながら、ゆったり気分。

さくら宇宙公園でも、ミニキャンプ体験。

高萩市には、一般的なキャンプ場があるのだが、オートキャンプ場がない。また、宿泊施設も近隣の日立市のような大型ホテルがない。そうした社会状況で、”アウトドアの町”をアピールしていくのためには、車中泊を公共施設などで行うルール作りや、車中泊が可能なレンタカーのよる観光パッケージ化など、様々なことが考えられる。
高萩市観光商工課の細金満寿さんは「今回の実証試験でのアンケート調査や、応募して頂いた1800組の皆さんの声なども踏まえて、車中泊の実用化に向けて取り組んでいきたい」と、車中泊に対してとても前向きな姿勢を見せた。

今後は是非、コンちゃんと一緒に高萩でじっくり車中泊をしてみよう。

フォト=桃田健史 K.Momota

この記事を書いた人

桃田健史

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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桃田健史
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2022/05/29 15:00

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