ツヤツヤのプラモに飽きたらこんなのもイイかも!タミヤ製「ポルシェ959」で空力実験車両を再現【モデルカーズ】

全ての画像を見る

”オッティファント”ことC29

このポルシェ959は1/24スケール・プラモデルの作例だが、ポルシェ959の廃車体でもモデリングしたのか、それとも仕掛り品が掲載されているのだろうか……そんな疑念を持った方もおられるかもしれない。これは、ポルシェ959の開発過程で作られた、空力実験用スタディモデルを再現したものである。その車両が造られたのは959の市販から遡ること4年、1982年のことだが、しっかりと現存しており、ポルシェ・ミュージアムに「ポルシェ959 エアロダイナミクススタディーカー C29」として展示されている。

彼の地では、その独特な姿から“オッティファント”の綽名で知られているようだ。オッティファントとは、ドイツのコメディアンであるオットー・ヴァルケスが考案したキャラクターの名前である。象のような見た目のこのキャラは、アニメやゲームに登場しており、シュタイフのぬいぐるみにもなっているので、あるいはご存じの方もいるかもしれない。このC29だが、実際に風洞実験に供されていたときの写真を見ると、現在の展示の状態とは細部が色々と異なっているものの、基本的には当時のままである。

ポルシェ959は1983年のフランクフルトショーで「グルッペB」の名で発表され、1985年に市販へと移されたが、この発表時のネーミングが示す通り、当時のグループBでの活躍を想定して開発されたモデルだった。搭載されるエンジンは、956や962のそれをベースとした水平対向6気筒DOHC、2.85L。シリンダーヘッドのみ水冷化され、ツインターボを装着することで最高出力は450psを発揮する。このハイパワーはフルタイム4WDシステムによって4輪へ伝達され、最高時速は317km/hに達した。

この4WDシステムはコンピューターによって制御され、運転状況によってトルク配分を40:60から20:80まで自動的に調節する。またサスペンションも車高やダンパーの利き具合をモード選択によって調整可能とするなど、959は当時の最新技術のショールーム状態であった。それと併せて、最高速300kmオーバーを成し遂げた要因のひとつが、空力的に磨き上げられたボディと言ってよいだろう。一見したところ911に似てはいるが、共用しているボディパネルは皆無だという。

前述の通りこのC29が造られたのは1982年のことで、徹底的な風洞実験によりCd値(空気抵抗係数)0.3を実現。さらに揚力を0に抑えることに成功したという。そのボディ形状は959にほぼそのまま踏襲されたのだが、C29は赤いボディカラーの部分と素材がむき出しになった部分とが混じり合い、また寸法計測用の基準線や数値、イタズラ描きなどが書き込まれ、一種異様なルックスである。959のボディ素材はアルミのほかポリウレタンやケブラー、FRPが使用されているので、C29の無塗装の部分もそうした材質であろうか。

ポルシェ959のプラモデルは1/24スケールに限定するとタミヤやグンゼ(現GSIクレオス)、エッシーなどがあるが、この作品はタミヤのキットをベースに、市販型との違いを逐一再現していったものである。

素材の質感や汚し、書き込みがポイント!
タミヤの959はフロントフード前端位置に違和感があるので2mm前方に彫り直した。そしてダクトの形状変更や埋め戻しなどを行う。ヘッドライトは丁度の大きさにプラ板を切り抜き、落とし込んで接着。リア下部はプラ板でスリット等を加工、エッジを立て気味にして粗削り感を演出。フードグリルも911流用なのでパーツを切り詰め、ボディ側開口部はプラ板で狭める。リアデッキのリベット痕にはドリルを使用、曲率の合うテンプレートを固定して作業した。フード周辺は等ピッチにケガいた後、ニードルで彫り込む。穴の外周が微妙に盛り上がり表情が出る。リアパネルのリベットも同様だ。

フジミ製964のボディからプラ板で型を取ってサンルーフのラインを彫った後、全体にグレーサフを塗って様子を確認し、赤部分の下地にピンクを塗装。ハーマンレッドを塗装し、クリアーコートと研ぎ出しを済ませてからマスキング、黒サフで下地塗装。セールカラーをベースに調色したアイボリーを、下地の黒を若干透かせながら塗る。さらにマスクして、リアウィングのグレーを塗装。リアフェンダーのFRP部分を表現するため、まずきれいな面を「おゆまる」で型取りしておき、当該部分を切り抜いた。

取った型をハメて裏から透明UVレジンを流せば、透明樹脂がインサート成形された状態に。樹脂部分はウェザリングマスターで彩色。大雑把に擦り付け、エナメル溶剤等で消しつつ試行錯誤。マスキングの上に赤いカッティングシートを貼り、イメージを掴む足掛かりとした。サイドステップは赤の上にアイボリーをドライブラシで重ね、乾燥後2000番ペーパーで馴染ませる。FRP部分にはエナメルのクリアーイエローやクリアーグリーンを薄めて塗り重ね、クリアーブラックで整えた。パテ盛り部分はエナメルカラーにベビーパウダーを混ぜたもので表現。ボディ各部の書き込みを、耐水性極細ペンで描き込み。

書き込みにはコピックの0.03mmを中心に使用、終ったら保護のためにトップコートを一度軽く吹いた。左フロントフェンダーのイラストはフリーハンドでは難しいので、デカールを自作して貼っている。各所の黒やグレーのテープは、黒いベタデカールの切り出しで再現。長さや重なり方もできる限り実車通りに。最後に再びトップコートを吹いたらマスキングを剥がし、アイボリー部を3000番スポンジヤスリやメラミンスポンジで軽く擦って、樹脂本来のテカり感を表現。赤い部分は傷防止のため再度マスキングした。トップコートでつやが消えたのでFRP部にはエナメルクリアーをハケ塗り。透明度にご注目を。

展示用に暫定的に取り付けられたと思しきBBSホイールとタイヤは、それぞれ別キットから流用加工。スタッドボルトの孔を、ポルシェ特有の大径PCD 130mmを意識して、大きめピッチで開けると雰囲気が伝わる。最後に作者のひとこと、「ミリタリー系の作品では色々な塗料やコーティング剤を駆使した数多くの技法が存在し、その多彩な表現に羨ましさも感じていた。下地処理して塗装・クリアーコートし研ぎ出し……カーモデルのこんなワンパターンに飽きていた所もあり、今回は少しだけ新しい世界を垣間見ることが出来て、とても楽しく制作作業が進められた」とのことだ。

作例制作=飯塚健一/フォト=服部佳洋 modelcars vol.287より再構成のうえ転載

■関連記事

2022/05/20 12:00

関連記事

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業電話ラッシュをなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

関連中古車物件情報

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!