フェラーリなのにフレンチ・トリコロール!?サニー製プラモ「フェラーリ250LM」を高解像度モデリング【モデルカーズ】

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250LMの中でも数奇な運命を辿った5995GT

1962~1964年に250GTOでGT選手権3連覇を成し遂げたフェラーリは、さらなる勝利を狙ってGTOをミッドシップ化した250LMを開発し、250GTのエボリューション・モデルとしてFIAに申請したが、さすがに認可されず、1965年度のGT選手権からワークスチームが締め出される結果となった。しかし車名の由来となった同年のル・マンでは、プロトタイプカーとして出場したN.A.R.T.とエキュリー・フランコルシャンの2台が1-2フィニッシュを飾って、マラネロの意地を見せた。

本来サーキットに生息する250LMだが、ごく少数がオープンロードに解き放たれており、中でも特に数奇な運命を辿ったのがシャシーナンバー5995GTだ。1964年に赤のショートノーズLMとして製作され、スクーデリア・セレニッシマのヴォルピ伯爵のもとでイタリア国内のイベントに出場したが、1967年にフェラーリが買い戻しロードカーに改造された。この際、プレクシガラス製リアウィンドウと前後バンパー、三角窓と巻き上げ式ウィンドウが追加され、ホイールはワイヤーから星形アロイに変更された。

その後あちこちのオーナーの下を転々とする間に、ダークブルーやグリーンに塗り替えられている。最終的には1996年にフランス人オーナーの手に渡り、シルバー&フレンチトリコロールという姿に落ち着いて、今も健在だ。

さて、ここでご覧頂いているのは、この250LMを再現した1/24スケール・プラモデル完成品だ。作例に使用したキットはサニーが1986年にリリースしたもので、1/24プラモデルでは唯一の250LMとして、当時は大変話題になった。その後アカデミーに移管され、ここ数年は入荷が途絶えているようだが、見かける機会は少なくない。メカニズムの再現は無く外装の解像度もほどほどだが、名原型師・川口幸男氏の設計だけあってプロポーションは良好だ。キットはショートノーズなので、5995GTを再現するには都合が良い。

リアデッキ形状の変更を中心に
普通の250LMのリアデッキはトンネルバックと呼ばれるスタイルなので、これを5995GTの形状に改める。実車の写真と見比べてルーフ後端のラインを描き込み、モーターツールで削り取った。リアウィンドウ下端の輪郭も実車写真を参考に決定。輪郭をマスキングテープに写し取り、型紙にして0.5mmプラ板を切り出す。フチ周りを幅1.5mmで切り取って、リアウィンドウの窓枠とする。

切り出した窓枠をボディに接着、その内側をスジ彫り用のタガネでなぞり、彫り込んで切り抜いた。この内側にガラスをハメ込むこととする。窓枠を切り出した残りのプラ板をヒートプレス用の型の元として利用、ポリパテを盛りつけて形を削り出した。この型を使って透明塩ビ板をヒートプレス加工し、リアウィンドウガラスを自作。ボディに合わせ、その内側にリアデッキ内側のパネルも入れて合わせを確認する。ボディは各部のインテークが塞がっているので、ドリルやナイフで開孔した。

このキットはしばしばボディの寸詰まり感を指摘されるが、これはむしろホイールアーチが少々大きすぎるのが原因のようなので、そこを改修する。0.3mmプラ板をホイールアーチよりひと回り大きく切り出し、ボディ内側に接着。モーターツールで内側を削り取り、ホイールアーチの形(元の形より全周で1.5mm小さい)を作った。この段差の部分に瞬間接着パテを盛りつけ、削ってフェンダーとツライチに仕上げる。フロント側も同様に作業、こちらは全周にわたって2mmほど肉を増やした。

キットは右ハンドルのレースカーなのに対しストラダーレは左ハンドルなので、ペダルと3連メーター、サイドブレーキを左側に移設した。ダッシュは下側のスイッチパネルとステアリング取付け部を切り取り、それぞれ位置を変更。右側のメータークラスター取付け位置の凹みはプラ板とパテで埋め、左側に同形の切り欠きを作り、メーターを左に移動した。グリルの格子は0.3mmの洋白線で自作。厚紙に格子を作図した上に両面テープを貼り、洋白線を図に合わせて貼り付け仮留めし、ハンダ付けしている。

前後バンパーは1.5mmのプラ板から削り出した。ホイールはキットのプラ部品だが、メッキを剥がして塗装したら思いのほかシャープな仕上がりに。5995GTのインテリアは資料に乏しく、ハンドル位置を左に移した以外はキットのままだが、実車は豪華なレザーのフルトリムになっている可能性が高い。フェラーリ好きモデラーにとっては見飽きた感もあるアカデミー製LMだが、シンプルな構成ゆえ改造工作の素材としてはハードルが低い。毛色の変わったフェラーリをご所望の読者諸兄にはぜひ制作にチャレンジして頂きたい。

作例制作・文章=北澤志朗/フォト=服部佳洋 modelcars vol.252より再構成のうえ転載

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