ジャガーに31年ぶりの栄光をもたらした名車
1980年代、ル・マン24時間レースではポルシェが7連覇と勝利を重ね、圧倒的な強さを見せていたが、そこへ果敢に挑んだのがジャガーであった。1988年のル・マンに、TWRジャガー・チームは5台のXJR-9を揃える必勝態勢で臨んでいる。好天に恵まれたこの年のル・マンはスプリント並みに速いペースで進行し、序盤からポルシェ・ワークスの962C・17号車とジャガー2号車による抜きつ抜かれつの一騎打ちとなった。
ル・マンの長い歴史上でも稀に見るほどの激戦を制したのはヤン・ラマース/ジョニー・ダンフリーズ/アンディ・ウォーレス組のジャガー2号車で、中段グループを走っていた21/22号車を従えた3台編隊でのチェッカーフラッグは、実に31年ぶりのジャガーによるルマン制覇として、今に至るまでの語り草となっている。
XJR-9はもともとジャガーとトム・ウォーキンショー・レーシングのジョイントで1987年シーズン用に開発されたグループCカー・XJR-8を、北米IMSAシリーズの車両規定に合わせて改修したものだが、ル・マンにはC1カテゴリーにエントリーした。基本デザインを手掛けたのはトニー・サウスゲイトで、カーボン製モノコックに前後ともダブルウィッシュボーン式のサスペンションを具え、ミッドシップに縦置き搭載されるV型12気筒エンジンは量産車XJ-SのそれをベースにTWRとコスワースが共同開発している。
ここでお見せしているのは、このXJR-9を再現した、ハセガワの1/24スケール・プラモデルの完成品だ。ハセガワのキットは1989年にリリースされたもので、まったく同じ仕様のキットがタミヤからも出ているが、あちらはエンジンやサスペンションが再現された精密なフルディテール・キットなのに対し、こちらはシンプルなプロポーション・キットとなっている。リアカウルの合わせや車高・車体姿勢の細かな調整を必要としない分、手軽に組立てを楽しめると言えるだろう。
素組みながらちょっとひと工夫
何度も再販されているキットだが、制作に使用したのは新製品当時のもの。まず、ボディとシャシーの合わせに噛み合うツメやダボなどがないので、前後4箇所を時計ネジで留めることにした。フロントはライト下あたり、ボディ内側に3mmプラ角棒を接着しガッチリ乾いてからネジ穴を開ける。リア側も3mmプラ角棒だがタイヤに干渉するので、上の方を斜めに削った。位置は後輪スパッツ前あたり。スパッツの前のパネルは別部品だが、左側は間違えてスプリント仕様の部品を取り付けてしまったので、後で修正。
フューエルコック周りのパネルは本来ボディと一体なので輪郭をパテ埋め。コックは挽き物に交換するので、孔を開けておいた。左フェンダー上の丸い蓋も別部品化。ルーフ中央のアンテナベースとドアヒンジのモールドも同様に作業、ワイパー孔そばのキルスイッチのモールドも削り取り、穴を開けておいた。後輪スパッツのクイックリリース・ノブのモールドも削り落とし、金属部品化。ルマン仕様のリアウィングは1枚もの、上下貼りの合わせ目をMr.SSP瞬着パテで埋めて滑らかに仕上げておいた。
塗装前のアシ付けやサーフェイサーの下研ぎは、3Mのスポンジヤスリ(1200~1500番)を使うと簡単に速く出来る。GSIクレオスのMr.サーフェイサー1200で下地を仕上げ、ガイアカラーEXホワイトを3回塗装。パープルの部分はデカールを使わずにマスキングして塗り分けた。調色はデカールに合わせ、Mr.カラーC67パープル+C3レッド+ガイアカラーNo.032アルティメットブラックで。部品の選択を間違えた左リアフェンダーのインテークは、正しい部品に似せて0.3mmプラ板で作ったカバーを被せた。クリアーを1回吹いた後デカールを貼り、クリアーコート後コンパウンドで磨いて仕上げている。
ボディ左右で「Silk Cut」の「u」の字体が異なっているが、「Cut」のデカールはちゃんと2通り入っている。これはキットのミスではなく、実車の2号車のみの特徴だ。左側のインテークカバーはレースの現場で急遽追加したもので、その時にカッティングシートの切り方を間違えた、ということらしい。ハセガワの取材力に感服である。
塗り分けのマスキングの邪魔になるゼッケン灯やサイドマーカー、ドアヒンジなど、ボディ表面の細かいモールドはすべて削り落としたが、市販の汎用部品や自作の別部品で別体化したことで外観の解像度が上がり、精密感が大きく向上するという副次的効果があった。キットにはボディ側面のインテークやウィング、テールライトなど、WSPCスプリント仕様の部品も混じっているので、間違えないように注意されたい。
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