【国内試乗】最新のGT3はまさに究極の911だった!「ポルシェ911GT3」

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996ベースの初代から数えて7世代目となる最新のGT3が日本に上陸した。新開発のスポーツサスペンション、高効率エアロダイナミクスをはじめとするほぼすべてのディティールにモータースポーツで培った技術を投入。まさに公道を走れるレーシングカーといった仕上がりとなっている!

レーシングテクノロジーをロードカーに

モータースポーツ直系という言葉はもはや常套句のようになっているが、このクルマに関して言えば、それは100%ガチだ。ついに上陸した最新型ポルシェ911GT3は、実戦で鍛えた技術とノウハウによってパフォーマンスを大幅に向上させた、まさに〝ウェポン〞である。

1999年、タイプ996の時代に登場した初代911GT3は、ほぼ安全装備などを追加しただけのスペックでポルシェ カレラカップに使われる、サーキットとダイレクトに結びついたモデルだった。通算7世代目となる新型もまた、レースの現場で鍛えられた技術がふんだんに導入されている。

カーボン製のフロントリッド、軽量ガラスウイ
ンドー、軽量エキゾーストシステムなど徹底
した軽量化を実現。軽量カーボンルーフは
59万3000円のオプション。

一番のトピックはダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションの採用だ。長年、それこそ911のデビュー以来使い続けられてきたストラット式に代わってついに使われたこの新しいサスペンションは、911ではル・マン24時間でクラス優勝を果たしたRSRで初めて使われ、続いて最新のGT3カップにも装備されている。これがロードカーにも、いよいよ展開されたのである。

そしてエアロダイナミクス。大きな開口部を持つフロントバンパーのデザインは、まさしく最新型)11RSRを彷彿とさせるものだ。ここから取り込まれた空気はブレーキとラジエターに振り分けられ、さらにラジエーター後方からフロントリッドに開けられたエアアウトレットに向けて排出されてフロントの揚力低減を実現する。
911RSRもそうだったのだが、事前に写真を見ている限りでは、ちょっとのっぺりとした感じに見えて微妙かもしれない……とも思っていた。しかしながら実車はひたすらに精悍で、やはり実戦で鍛えたデザインは違うなと感服した次第だ。

足元には軽量・高剛性な鍛造ホイールを装着。

スワンネック型マウントを採用したリアウイングも、911RSR由来のデザインである。ウイング下面を通る空気の流れを乱すことがないため、ここでも効果的にダウンフォースを獲得できる。また、リアビューでは大型のフィンを持つディフューザーの存在も目をひくところである。
軽量化も徹底された。フロントリッドはCFRP製とされ、ブレーキディスク、ホイール、エキゾーストシステム、すべてのウインドーガラスは重量をさらに軽減。バッテリーも軽量タイプとされた。

スワンネックと呼ばれ
る巨大なリアウイングによって効率
よくダウンフォースを発生させる。

結果として車両重量はPDK仕様で1435kgと、先代の5kg増に留まっている。全長がわずかに伸び、フロント20/リア21インチのより幅広いタイヤを履くなどといったことを考えれば、優秀と言っていいだろう。試乗車のCFRP製ルーフはオプション。重心高低下に大きく寄与するアイテムだ。

510ps/470Nmを発揮する自然吸気4L水平対向6気筒エンジンを搭載。トランスミッションは6速MTまたは7速PDKから選択可能となる。

そして忘れてはならないのがエンジンである。タイプ991後期型から搭載されている水平対向6気筒4L自然吸気ユニットは、911RSRや911GT3カップのエンジンと基本骨格を共用するレーシングエンジン。新型では最高出力が10㎰増の510psに、最大トルクも10Nm上乗せされて470Nmに達している。トランスミッションは6速MTと7速PDKで当然、後輪駆動である。

最高レベルにあるパワートレイン

いよいよ室内へ。オプションのフルバケットシートに身体を収めると、PDKのシフトレバーがカレラ系とは異なる専用品となっていることに気づく。マニュアル変速はパドルだけでなく、こちらのレバーでも可能だ。アナログ回転計以外はTFTモニターとなっているメーターには、表示を走りに関係する項目のみに限定するトラックモードが用意される。

コクピットの意匠は992モデルに準ずるが、新機能のトラックスクリーンが採用され、サーキット走行に必要なミニマムな情報だけを表示。試乗車はオプションのフルバケットシートと、ロールケージを設置したクラブスポーツパッケージを装着。

PDKをDレンジに入れて走り出すと、その進化はコーナーをひとつ曲がるだけで、即座に実感できた。操舵と同時に間髪入れず、しかも正確にノーズが反応してスパッと向きが変わる。ギア比だけ高めたような強引な挙動ではなく、目線を向けた方にクルマが切れ込んでいくようなダイレクトな旋回感覚は、これまで911では経験したことがないものだ。
この辺りは、まさしくダブルウィッシュボーン式のキャンバー剛性の高さ、横力を受けないダンパーのスムーズな動きといったメリットが100%反映されているのだろう。もちろん、先代から採用されているリアアクスルステアリングも、その曲がる感覚には大いに貢献している。

最高速度は先代の911GT3 RSよりもさらに高速な320㎞/hをマーク。ニュルブルクリンクのノルドシュライフェにおいて、自然吸気エンジンを搭載した市販モデルとして初の7分切りを達成。

正直に言うと、先代ではこの後輪操舵、サーキットではよく曲がり、かつ安定したコーナリングへの寄与度が大きい一方で、一般道ではややリアから曲がる感じが強過ぎるようにも感じていた。しかしながら新型は、フロントのポテンシャルが大幅に高められたことで、トータルで一段上のレベルのシャシー性能を実現したと言えそうである。
パワートレインも、やはり刺激性は最高レベルにある。試乗の前に懸念していたのは、実はそのサウンド。厳しくなる騒音規制への対応で、迫力がスポイルされてしまいそうだという話が内外から聞こえてきていたのだが、いざ対面してみれば高回転型自然吸気フラットシックスの咆哮、存分に楽しむことができた。
最高出力510ps、最大トルク470Nmという数値自体は、今やさほど特筆すべきものではないかもしれないが、その最高出力を発生するのは8400rpm、そしてレヴリミッターが介入するのは9000rpmという設定である。こんなエンジン、今や世界中を見渡しても、そうそうない。

控えめな見た目を好む方にはこちらの「ツーリングパッケージ」も選択可能。固定式リアウイングを排する代わりに自動開閉するリアスポイラーを装備。フロントエンドもボディ同色とされるほか、インテリアンもエレガントな雰囲気に。価格は同じく2296万円となる。

排気量の余裕で低回転域でもむずがることはないが、やはり本領を発揮するのは中〜高回転域だ。単にスムーズに回るというだけでなく、回転上昇に応じて表情を移ろわせながら、回転数が高まるほどに爆発力を増すようにパワーを炸裂させていくフィーリングは、本当に堪らないものがある。ただし、2速でもトップエンドまで回せば制限速度を超えそうなほどなので、楽しむのはクローズドコースでということになるのがストレスが溜まるところかもしれない。
7速PDKとのマッチングにも非の打ち所はない。変速は速くて正確で、何より切れ味が鋭い。ダウンシフトだけでも快感だ。とは言え、6速MTのダイレクトな対話感も依然として捨て難いのは事実。こちらもいずれ試してみたい。
歴代911GT3には毎回、その走りに驚かされ、驚喜してきたが、今回の進化はその歴史の中でももっとも大きなものかもしれない。あるいは911というクルマ自体の新しい扉が開かれたようなハンドリングには圧倒され、そして感動すらしてしまった。
価格はまたも上昇したが、買える買えないはさておき、このパフォーマンスなら納得するしかない。取り巻く環境がこんな風だからこそ、その価値が一層際立つ、新しい911GT3の登場である。

【SPECIFICATION】ポルシェ 911 GT3
■車両本体価格(税込)=22,960,000円
■全長×全幅×全高=4573×1852×1279mm
■ホイールベース=2457mm
■トレッド=(前)1601、(後)1553mm
■車両重量=1435kg
■エンジン形式/種類=-/水平対向6DOHC24V
■総排気量=3996cc
■エンジン最高出力=510ps/8400rpm
■エンジン最大トルク=470Nm(47.9kg-m)/6100rpm
■燃料タンク容量=65L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=(前)Wウイッシュボーン/コイル、(後)マルチリンク/コイル
■ブレーキ=(前後)Vディスク
■タイヤ(ホイール)=(前)255/35 ZR 20(9.5J)、(後ろ)315/30 ZR 21(12J)
公式ページ https://www.porsche.com/japan/jp/models/911/911-gt3-models/911-gt3/

フォト:郡 大二郎/D.Kori ルボラン2022年4月号より転載

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島下泰久
AUTHOR
2022/03/07 15:30

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