これは想像以上の完成度! ヒョンデの新型BEV「アイオニック5」が切り拓く新境地

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独創的デザインと確かな走行性能

HYUNDAI(ヒョンデ)がBEV「アイオニック5」とFCV「ネッソ」の2台をラインナップして、日本再上陸を果たした。再上陸の理由を単刀直入に、デザインチームへ尋ねると、「商品に自信があるから」とのこと。試乗した印象はまさにその答え通り、デザインも走りも一級の仕上がりと言えるだろう。

特筆すべきは動的質感の高さ

1974年のトリノ・ショーに出品された、ジウジアーロがヒョンデのために制作した作品「ポニークーペ・コンセプト」のDNAを受け継ぎ、タイムレスなデザインを目指したという。

2月8日、韓国の自動車メーカー「ヒョンデ」が、日本に再上陸することを発表した。かつてソナタやサンタフェなどを日本市場で販売していたが、2009年末に撤退。そして、新たに本国での発音に近い「ヒョンデ」として12年ぶりに日本市場に復帰したのである。

今回日本市場に導入されるのは、BEVのアイオニック5とFCVのネッソという2台のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)。今後、日本市場ではZEVのみに絞った車種展開となる。

販売方法はオンラインのみで、自社ウェブサイトおよび専用スマホアプリで、5月から注文を受け付け、7月にデリバリー開始となる予定。また、サブスクリプションも展開される見通しである。

2月19日に東京・原宿にポップアップ・スペース「Hyundai House Harajuku」がオープン(5月28日まで)。今夏には試乗や購入相談ができる「ヒョンデ・カスタマーエクスペリエンスセンター」が、神奈川県横浜市に開設され、その後も主要都市に展開されるほか、カーシェアリングサービスの「エニカ・オフィシャル・シェアカー」にも試乗車が用意される。

点検や整備は全国の協力工場で実施されるが、ヒョンデも自社工場を用意し、日本におけるサービス体制も整えられている。

今回は神奈川県小田原市で試乗会が開催され、導入が発表された2モデルの実力を体験した。

特に衝撃的だったのはアイオニック5だった。BEV専用のE-GMP(エレクトリック・グローバル・モジュラー・プラットフォーム)を採用し、前後ホイールベース間に58kWhまたは72.6kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、後輪駆動と前後アクスルにも電気モーターを備えた4WDの2タイプが用意される。今回の試乗車は「ラウンジAWD」という一充電航続可能距離577kmの最上級グレードだ。

ヘッドライト&リアコンビランプは「パラメトリックピクセル」のテーマを象徴するデザイン。無機的でありながらハイテク感と懐かしさが同居したアイオニック5のアイコンだ。

空力性能を考慮しながら未来思考的なデザインを採用したエアロホイール。ホイールアーチにも線状のデザインパターンが施される。

一見するとCセグメント並だが、全長4635mmと大柄で個性的なプロポーションをしている。「パラメトリックピクセル」というテーマを用いた、先進的で個性が強いデザインも、車両全体に引き締まった印象を与えている。

最も感銘を受けたのは動的質感の高さだ。前後の電気モーターは、合計で305ps/605Nmものスペックだが、発進から高速域まで一貫してアクセルレスポンスが絶妙に緩く、BEV特有の過敏さがない。もちろん右足を深く踏み込めば、2.1トンの車両重量をものともしない力強い加速を披露するが、この”緩さ”のおかげでとても運転しやすいのだ。ワンペダルドライブでギクシャクしないのも、緻密なチューニングの賜物である。

インパネはシンプルなデザイン。メーター&ナビのディスプレイは、どちらも12.3インチだ。シフトセレクターはロータリー式のコラムレバータイプ。Pボタンは先端に備わる。

ハンドリングもレスポンスが良く、とても正確だ。ステアリングフィールも自然で、操作は軽めだが接地感も伝わってくる。特筆すべきは直進性の良さで、特に高速走行時の高い安心感を生んでいる。

快適性はヘタなプレミアムカーを完全に凌駕する。足回りは比較的カチッとした印象だが、ゴツゴツとした感覚や不快な振動はなく、乗り心地は極めてフラット。静粛性も抜群に高い。Cd値は0.32と特に低くはないが、高速走行時も風切り音は小さく、長距離移動でも疲労は最小限だろう。

前席は電動オットマン付き。後席は電動スライド機能が備わり、全席メモリー機能も搭載。センターコンソールもスライド可能だ。後席足元には16AのAC100Vコンセントを装備。

ラゲッジスペース容量は通常時で527リッター。フロア高は高いが使い勝手は悪くなさそうだ。ボンネット下のトランクは24リッター確保される。

他にもV2L/V2H機能や、最先端のADAS、ナビゲーションベースのACC、遠隔スマート駐車補助、ARヘッドアップディスプレイ、OTAによるナビのアップデートなど、先進的な機能も多数搭載するアイオニック5。ドイツ系最新プレミアムカーに迫る内容を、車両価格500万円台で実現しているだけに、電動化を急ぐ世界の自動車メーカーに大きなインパクトを与えるだろう。

【SPECIFICATION】ヒョンデ・アイオニック5 ラウンジAWD
■車両本体価格(税込)=5,890,000円
■全長×全幅×全高=4635×1890×1645mm
■ホイールベース=3000mm
■トレッド=(前)1628mm、(後)1637mm
■車両重量=2100kg
■モーター形式/種類=EM07/EM17/交流同期電動機
■モーター最高出力=305ps(225kW)/2800-8600rpm
■モーター最大トルク=605Nm/0-4000rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■総電力量=72.6kWh
■航続距離(WLTP)=577km
■サスペンション形式=(前)マクファーソンストラット、(後)マルチリンク
■ブレーキ=(前)Vディスク、(後)ディスク
■タイヤ(ホイール)=(前後)255/45R20

ZEVはBEVだけじゃないFCVのネッソも上陸!

FCEVのネッソは、2018年デビューのコンパクトSUV。156L(52.2L×3本)の水素タンクを搭載し、820kmの航続距離を実現する。FCスタックは最高出力95kWで、1.56kWhの駆動用リチウムポリマーバッテリーも搭載。フロントに備わる電気モーターは、163psと395Nmを発揮。駆動方式は前輪駆動のみの設定で、海外仕様にも4WDはない。「リバーストーン」をモチーフとした流麗なデザインのネッソは、乗り心地はしなやかで、十二分に力強くスムーズな走りを見せるが、高速域での直進性はもう一歩。とはいえSUVとしての出来映えはなかなかのものだ。

ヒョンデ公式サイト

フォト:神村 聖/S.Kamimura ルボラン2022年4月号より転載

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