かつてないくらいピュアな走りで魅了するランボルギーニ!「ウラカンEVO RWDスパイダー」【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

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昨今におけるランボルギーニの成功は、ウラカンによって導かれたのは間違いない。前作のガヤルドからはじまったV10ミッドシリーズ戦略は、多くの競合をもつ市場において着実な進化と戦術によって今やランボルギーニの屋台骨を支えるに至った。

そんなウラカンも気づけばモデル末期。2024年までにはすべてのモデルをハイブリッド化するなど次世代の計画も発表済みだから事実上、今回紹介するウラカンEVOシリーズがベーシックグレードの最終形となる。

と、まぁここまでは最近よくあるパターンだ。シリーズ最終章に相応しいネーミングで、ちょっとだけパワーアップを図ったり、装備を豪華にしたりと、わりと予想の範囲に収まる程度のスペシャル感というのが実情だったが、このウラカンEVOシリーズは本質的に違う。特にここで取り上げるウラカンEVO RWDという後輪駆動モデルは前作の出来とは桁違い。まさにエボリューション=進化の真髄を見せつけられた気がする。

というのも、元来ウラカンはAWD(4WD)を基本に開発され、高次元のパフォーマンスをダイナミックかつ安定的に楽しませるというのが真の狙い。ポルシェで例えるならカレラよりもカレラ4、911ターボもAWDのみというように、膨大なパワー&トルクを使うにも安心感をもって接することができるようにしたスーパースポーツだ。

ルーフにはソフトトップが採用され、四輪駆動モデルのスパイダーと同様に車速50km/hまでなら走行中でも開閉操作が可能。17秒以下でリヤフード下に収まる。キャビン後方にはウインドーが備わり、これはソフトトップの状態を問わずに開閉できるため、クローズド時でもV10エンジンのサウンドをダイレクトに味わうことができる。

無論、ガヤルド時代を前後してスポーツカー市場はAWDが好まれる傾向にあったから当然のように思っていたのだが、デビューから約2年を経過した2016年に突然リア駆動モデルを追加、ウラカンLP580-2というネーミングでラインアップに加えた(後にウラカンRWDに車名変更)。

しかし、実際に試乗してみると、どうにも納得できない印象で、すべてにおいて未完成のように感じられた。当時、完成度が高かったAWDのLP610-4と比較すると、その差は歴然。正直「何故こんなモデルを造ったんだろうか?」と疑問にまで思ってしまった。

シャシー性能は中途半端に感じられるし、ハンドリングもダイレクト感に欠け、いまひとつ。旋回中も希薄な印象で、さらに直進安定性もとても褒められるレベルになかった。このときから筆者の中では“買ってはいけないスーパーカー”の1台に名を連ねることとなった。

ところが、だ。このウラカンEVO RWDは、そんな過去を消し去るかのような進化を見せたのだから目からウロコ状態に陥ってしまった。何しろ、シャシー性能の進化は著しく、ほぼ別物という印象。思わず「やればできるじゃん!」と上から目線でつぶやいてしまった。

外装色とコーディネートされた紫のアクセントが施されるコクピット。センターコンソールやエアアウトレットにはマーブル模様のカーボン素材であるフォージドコンポジットが装着されている。

技術的な注目点は、専用に開発されたP-TCS(パフォーマンス・トラクション・コントロール・システム)の効果だ。ドライビングモードに連動するこのシステムの特長を記すと、ストラーダ(いわゆるノーマルモード)では、後輪のグリップを路面状況に応じて制御し、グリップが低い路面ではP-TCSが先を予測してトルクを管理するなど常に安全方向に抑えるのが基本。一方のスポーツモードでは、ドリフト走行を楽しめるようダイナミックな方向に制御しつつも、オーバーステアが急激に大きくなるとシステムが検知しトルクを制御するなど、コントロール性を重視した設定となる。

セミバケットタイプのシートもフレームはカーボン製で軽量化に貢献している部分だ。こちらも外装色に合わせた紫のアクセントが備わっており、シートバックには「ウラカンEVO」のステッチも施されている。

そしてコルサモード(サーキットモード)では、後輪のスリップを調整することによりコーナー出口で最適なトラクションを可能にし、最大限のパフォーマンスを引き出すというものだ。筆者の印象が悪かった前作のウラカンRWDと比較すると、30%もスムーズに作動し、コーナー出口でのトラクションは20%向上、オーバーステアは30%も向上しているというが、体感的にはこの数字以上に感じられたのは事実である。

ステアリングボトムにあるスイッチにより、通常走行の「ストラーダ」、スポーティな走りが愉しめる「スポーツ」、そしてサーキット走行に最適な制御の「コルサ」の3つのモードを切り替えることが可能となっている。

特にトラクション性能の向上には眼を見張るものがあり、コルサモードではとにかく俊敏! 右足と連動するかのように敏感にV10エンジンも反応し、瞬時に変速する7速DCT(これもプログラムを見直しているように思えるが)と相まって思いのままに楽しませてくれる。

しかも、それだけではない。電気機械式パワーステアリングのセッティングを改良しているところも効果は大きく、直進安定性は抜群! コーナーにアプローチする際も秀逸なライントレース性を見せるだけでなく、旋回中もインフォメーション性に優れているから実にコントロールしやすい。もちろん、前後サスペンションも文句なしの動きで魅了するとあって、何から何まで好印象。全体的に動きが良いこともあり、一体感だけでなく軽快感まで得られてしまう。以前ならこうはいかなかったから本当に驚きの連続だった!

車両ミッドに搭載される5.2L V10ユニットは、最高出力610ps、最大トルク560Nmを発生。スパイダーモデルでは残念ながらエアインテーク部分までしか見えないが、その分ドライバーズシートには迫力あるサウンドを届けてくれる。

自然吸気式V10エンジンもそのサウンドが見直されたらしく、以前にも増して快音を奏でるのも特筆すべき点。特に今回の試乗車がスパイダーだから尚さらだ。アルミニウムとカーボンを使用するハイブリッドシャシーも好印象で、剛性はすこぶる高く、例えオープンボディでも弱点を見いだせないレベルにまで達している。パワー&トルク値は、610ps&560Nmと30ps&40NmほどAWDモデルよりも抑えられているが、ウラカンEVO RWDはダイナミックかつピュアな走行性がウリであることを思えば、何ら気にすることはないし、これで十分以上だ。

“EVO”では、フロントおよびリアバンパーの周りのデザインが通常モデルと異なっており、ディフューザーなどは、より空力性能が高められた形状とされている。

これだけ進化しているからまさにEVO! と最後に言いたいところだが、筆者からすれば、実は“KAI”という印象。つまり、改善のKAIである。勝手にネーミングしては失礼にあたるが、ひと言で表するなら、これに尽きる。

試乗車には20インチの10ツインスポークデザインホイールが装着。組み合わされる対YはピレリPゼロだ。

それに今まではウラカン買うなら絶対にAWDモデルと答えていたが、今は自信をもってEVO RWDとお勧めしたい。いや、これに限るとまで付け加えたいほどだ。かつてないくらい、ピュアな走りで魅了するランボルギーニだと今回思い知らされた次第だ。

センターコンソールに一体化された8.4インチタッチスクリーンシステムは、オーディオやナビゲーションなどの操作のほか、車両各部の機能設定や、スマートフォンと接続し様々なエンターテインメントを楽しむこともできる。

最後に、ランボルギーニ・ジャパンさんにひと言申し上げたい。今回のウラカンEVO RWDスパイダーに乗って思うのは、これだけ出来が良く、ピュアな仕上がりなのに、この広報車の仕様はちょっといただけません。すごく誤解を招くカラーリングです。これだけで逃してしまうカスタマーもいるかもしれません。イメージは極めて重要。筆者なら、ありきたりかもしれませんが、純粋なホワイトにしたいところです。本当にそんなイメージです。どうか今後の参考にして頂けることを願っております。あしからず。

【Specification】ランボルギーニ ウラカンEVO RWDスパイダー
■全長×全幅×全高=4520×1933×1180mm
■トレッド(前/後)=1688/1620mm
■ホイールベース=2620mm
■車両重量=1509kg
■エンジン種類/排気量=V10DOHC16V/5204cc
■最高出力=610ps/8000rpm
■最大トルク=560Nm/6500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:Wウイッシュボーン
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前:245/35ZR19、後:305/35ZR19
■車両本体価格(税込)=26,539,635円
公式ページ https://www.lamborghini.com/jp-en/%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB/huracan/huracan-evo-rwd-spyder

フォト=望月浩彦/H.Mochizuku

この記事を書いた人

野口優

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

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野口優
AUTHOR
2021/11/23 12:00

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