【国内試乗】「トヨタ・ミライ」静粛性と走行性能が飛躍的に進化

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2014年に発売された初代から6年、2代目へとバトンタッチしたトヨタ・ミライ。新型はレクサスLSと同じプラットフォームを採用し、エコカー的なスタイルからスタイリッシュなプロポーションに生まれ変わった。その進化のほどは?

ドライバーズカーとしての走りの楽しさも獲得

初代のミライは、世界初の量産FCEV(燃料電池電気自動車)として2014年に国内発売が開始された。FCEVは、水素をエネルギー源として燃料電池により酸素と結合させることで発電しモーターにより走行する。水素の充填時間が約3分と短く航続距離も約650kmに達するだけに、一般的な電気自動車よりもまさに“未来”志向のクルマなのだ。

ボンネットの下には燃料電池ユニットが搭載される。最高出力は174psを発揮し駆動用バッテリーのアシストによりモーターの最高出力は182ps以上で最大トルクは300Nmに達する。水素の充填口はボディ左側後方に。

だが、課題もあった。プリウスαのプラットフォームから派生したので、ボディサイズが大柄なのに車格に見合う走りの質感という意味では物足りなかった。モーター走行により優れた静粛性が期待されるが、ロードノイズが大きめなことも気になった。室内スペースも、大きな水素タンクを搭載するため犠牲が少なくなかった。

こうした課題の克服に取り組んだのが、2代目となる新型ミライだ。フラットフォームは、TNGAに基づきクラウンが採用するGAーLから派生。そのため、駆動方式はFFからFRに変更。水素タンクはセンタートンネル内に縦置き、駆動用モーターの前後に横置きで計3本搭載し室内スペースを拡大しながら航続距離は約850kmまで大幅に伸びている。

初代のエクステリアはディテールの未来感こそあったがスポーティとはいえなかった。2代目はデザインで選んでもらえるロー&ワイドなプロポーションに生まれ変わった。

開発責任者に取材したところ、走りの質感を向上するためにクラウンではなくレクサスLSに匹敵するポテンシャルを得ているという。ボディやサスペンションメンバーを高剛性化し、気密性が増したことで異次元感覚となる静粛性の獲得を目指したそうだ。
実際に、ザラついた路面を通過してもゴーッという低周波域のロードノイズがほとんど耳に届かない。ザーッというロードノイズは聞こえるもののフィルターを通したかのように音量が抑制され響くこともない。さらに、試乗車が装着していた20インチタイヤはリム部を中空構造にしたノイズリダクションホイールを採用。そのため、ヒャーッという高周波域のロードノイズも軽減。なるほど、クラウンではなくLS次元の静粛性を得ている。

インテリアは未来感を演出したのだろうが価格に見合う上質感は得ていない。前席はドライバーズカーとして満足できるスペースを確保。後席は3名がけが可能となり乗車定員は5名に。トランクスルーは備わらない。

さらに、試乗車のZ“エグゼクティブパッケージ”は前方以外の後席を囲むように吸遮音材を追加。後席はリアタイヤに近いだけにロードノイズが大きめに聞こえかねないが、前席と変わらない静粛性が確保されていた。
乗り心地の快適さを含め、新型ミライはショーファーつきで乗るVIPカーになるだけの上質な走りの実現に成功している。ところが、水素タンクに加えて減速時の回生により電気エネルギーを回収して蓄える駆動用2次バッテリーを後席の背後に搭載しているので室内長が制限される。そのため、室内スペースは初代よりは拡大したが、Dセグメントのセダンと比べても足下スペースは広くない。

それでも、ドライバーズカーとして考えれば魅力はある。ステアリングの切れ味がスッキリしていることもありノーズが軽やかに向きを変えるので、FRならではの洗練された操縦性が楽しめる。アクセル操作に対する加速の入り方は、感心させられるほど滑らかであり実に気持ちがいい。

試乗車はオプションの20インチタイヤを履きダーククロームに輝くブラックスパッタリング塗装を施すノイズリダクション機能を備えるホイールを装着。

水素の充填時間は、タンクが大容量になりながら約3分と変わらず実用性も高い。だが、水素ステーションはまだ少なくインフラ整備は重要課題として残る。早急な課題克服というわけにはいかないが、水素がエネルギー源として有望なことは間違いのない事実だ。

リポート:萩原秀輝 /フォト:小林俊樹 ルボラン2021年4月号より転載

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