【比較試乗】「メルセデス・ベンツ Eクラスクーペ vs BMW 4シリーズクーペ vs アウディ TT RSクーペ」同じジャーマン・プレミアムでも異なるベクトル。最新クーペ、それぞれの流儀

スタイリング命のTTとクーペらしい4シリーズ

スタイリッシュでも実用的、という点では新型4シリーズもまたドイツ産のクーペらしい。こちらも乗車定員は4名だが、それを除けば実用度はハイレベル。いまやBMWのクーペというと全般的に4ドアのグランクーペが主力となっている。だが、後席の使用頻度が高くないのならスタイリングをはじめとするクーペらしさを優先して2ドアの4シリーズを選んでも問題はないはずだ。

BMW M440i xDrive COUPE/4シリーズとしては2代目となる新型は、フロントマスクに縦型キドニーグリルを採用してMに通じるマスクで独自性を強くアピールする。

そのスタイリングだが、新型における最大のトピックはフロントマスクにMモデルと共通する縦型キドニーグリルを採用、独自性が一層鮮明になったことだろうか。古くは3シリーズクーペの時代から外板パネルの大半がセダンと別モノである一方、イメージだけはそれに似せてきた経緯を思うと、これは大きな変化だ。その出来映えに関する是非は人それぞれだろうが、BMWのラインナップにおける4シリーズ(2ドア)の位置付けが従来よりもエクスクルーシブになったことは間違いない。

BMW M440i xDrive COUPE/日本仕様は3L 6気筒ターボ+xDrive(4WD)のMパフォーマンスモデル、M440iと2Lターボの420iが導入されている。

先代より押しの強い外観、そしてBMW製という期待に違わず走りはスポーティな味付け。今回の試乗車がMパフォーマンスモデルのM440iということでそれが強調されている部分もあるが、Eクラスクーペを“柔”とするならこちらは“剛”だ。カッチリと強固なボディと適度に引き締まった足回りによる路面からの豊富な情報量、そして正確なハンドリングは常にクルマを操る行為を愉しみたい武闘派をも満足させる出来映え。他方、ライド感は洗練されているので日常的な使用環境でも問題はない。Eクラスの味付けを好む人には多少煩わしい性格かもしれないが、「クーペはスポーティであるべき」という嗜好の持ち主なら選ぶべきはこちらだ。

AUDI TT RS COUPE/何者にも似ていないアウディの「異端」。現行型は1998年に衝撃的デビューを飾った初代の個性を現代に受け継ぐ3代目。

さて、そんな2車と比較するとTTはドイツ流クーペの括りから完全に外れている。持てるステータスをスタイリングに“全振り”したといっても過言ではない成り立ちは新しくも古風なテイストを創出、TTならではの持ち味となっている。現行型は1998年に登場した初代から数えてすでに3代目だが、ここまで世代を重ねられたのは後からアウディにA5という伝統派が追加されたからだろう。

AUDI TTRS COUPE/タイトな室内は事実上の2シーターで、ドイツ産クーペとしては思い切ったパッケージングだ。

試乗車は、TTの中でも番外編となるTT RS。もはやクーペというよりリアルスポーツ級の性能が与えられるモデルということで、外装はリアウイングを筆頭に重武装が施される。それだけに、TT本来の持ち味とは多少異なる佇まいではあるが、前出2車と並べてもスタイリングの鮮度に衰えはない。同じドイツブランドとはいえ、もはや他と比べるものがないTTの造形は、ある意味で最もクーペらしい仕上がりと言えるだろう。反面、実用度は事実上2シーターと割り切る必要があるが、この姿カタチに惚れた人ならそれは些末な問題に過ぎないはずだ。

日本仕様は2Lターボモデルがスタンダードで、TTRSは別格的存在。

また、最新のTT RSは剣呑な見ために反してライド感も文化的だ。当然、乗り心地は硬く自慢の5気筒ターボも大人しく走らせるよりアクセルを踏んだ方が楽しい性格ではある。だが、無駄な動きを排した身のこなしは日常域でも不快な類ではなくエンジンにしても扱いやすい。それだけに、乗り手さえその気にさえなれば日常のアシに供することも決して非現実的な話にはならない。
ともあれ、それぞれに独自の味わいが見出せる今回の3車。本来が私的な存在であるクーペなだけに、そのどれが選ぶ人の琴線に触れるかが選択基準となるはずだ。

フォト=宮門秀行/H.Miyakado ルボラン2021年2月号より転載

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小野泰治
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