ミュンヘンの消防署ではEVのVW e-ゴルフが活躍中!?【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

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新型コロナウイルスの感染予防対策により、ロックダウンで在宅する時間が長かったためか、昨年はなんだかいつもより短く感じ、あっという間に2021年になってしまいました。昨年11月から始まった第二回目のロックダウンは幾度か延長になり、1月末まで再び継続される事となり、生活必需品以外のお店は全てずっと閉まっており、飲食店はテイクアウトのみで営業している状態ですが、もうすっかりと慣れてしまいました(笑)。

さて、昨年末の寒い早朝に、私の住むアパートの上階でボヤ騒ぎがあり、怒号などで目覚めた時には、部屋の目の前に上階へ延びる長いはしご車が! 自宅近辺は多数の消防車と救急車に囲まれビックリしたと同時に、消防署のみなさんの素早い消火活動で大事に至らずにほっとしました。

昨年発売されたGolf8 e hybridだが、ドイツ国内でも見掛ける事は非常にまれ。

偶然にもその数日後にミュンヘン市の消防本部の広報のクリスティアン・エムリッヒさんとEモビリティについてのインタビューをさせて頂く機会があり、自分が居住する建物で火事騒ぎが起き、かなりパニックだったと、エムリッヒさんに振ると、当たり前ですが至って冷静なご対応で、日頃から備えていない自分が恥ずかしくなりました(苦笑)。

今後更に増えていくだろうEモビリティについて、消防署の方にインフラや現状況について、疑問に思っている事をエムリッヒさんに伺ってみました。私自身も電気自動車やプラグインハイブリッド車を所有した事がなく、全くの知識不足の状態です。

――欧州委員会やドイツ政府のCo2削減政策により、今後さらにEモビリティ化が加速するかと思いますが、ミュンヘン市内の急速充電装置や家庭用ウォールボックスの設置状況等を教えてください。新築の大型集合住宅では急速充電装置が設置されている所もありますね。
【エムリッヒ氏】ミュンヘン市ではここ3~4年で急速にEモビリティ用のインフラが整っています。今後、徐々に設備は更に増えて行く計画です。集合住宅の設計士や行政等と共に視察やワークショップを重ねて、狭い地下ガレージにも急速充電装置やウォールボックスの設置は十分可能だという見解を示しています。

――例えば、現在私自身が借りている非常に狭い地下の機械式のガレージでは、それらの充電設備の設置は非常に難しそうに思えますが……。
【エムリッヒ氏】専門業者に依頼して設置工事をすれば問題はありません。消防局としては、実際に市内の狭い地下駐車場を含め、数多くの物件を定期的に建築家や有識者らと見分して、将来的なインフラの調査を行っています。

――とは言うものの、私が借りているような極狭地下の機械式ガレージで全台から充電ケーブルが伸びている状態は想像できません(笑)。クルマを出入りさせる場合にケーブルを外さないと機械に絡まりそうな気が……。そして万が一に充電中に火災が起きたらと思うと、気が気じゃありません。
【エムリッヒ氏】自動車以外にも、近年ではスマートフォン用のモバイルバッテリーをはじめ、家電に内蔵されていたり、電動バイクや電動スクーター、電動キックボードをはじめ、蓄電池等、リチウムバッテリーが含まれたあらとあらゆる物が毎日のように燃えていますので、消防署としてはさほど驚く事ではないんですよ。電気自動車(プラグインハイブリッドを含む)には火災警告システムが搭載されていますので、むしろリチウムバッテリーが搭載された物の中では最も安全だと言っても過言はありません。
消防庁及び、各市町村の消防局を統括するドイツ消防連合組合では、自動車メーカーやバッテリーメーカー、自動車工業会等、各種専門機関が定期的に安全に関する講習会や対策会議を行っており、日々最新の情報にアップデートされ、その情報を共有しています。

アウディe-tron のリースはインゴルシュタットナンバー(IN)なのか、ミュンヘン市内で多く見掛けるがミュンヘンナンバー(M)はごく僅か。

――リチウムバッテリーが搭載された車両や物が火災を起こした場合には、なにか特殊な消火装備や消火剤が必要になるのでしょうか?
【エムリッヒ氏】消防員の装備が変わる、消火剤が変わるなどと言う事はなく、基本的にリチウムイオンバッテリーの消火には水を使用します。いち早くバッテリーの温度を下げなければいけませんからね。サーモグラフィーカメラで燃焼しているリチウムバッテリーの温度をチェックしながら消火に当たります。鎮火しているように見えてもバッテリー自体の温度が下がっていない場合は、再発火の原因となってしまいます。

――ドイツのニュースでたまに見掛ける電気自動車の火災事故の後に、水を張ったコンテナのような大きな容器に事故車両を入れて冷却するというのを見掛けますが、本当に行われているのでしょうか?
【エムリッヒ氏】電気自動車のバッテリーの冷却が十分に行われていないと再発火の可能性がありますので、火災車両を24~48時間水没させて冷却するというこの方法が火災後に適用される事もあります。

――ここ僅か数年で、電気自動車のEU内の登記数は大幅に増えていると見聞きしますが、車両を実際に目にする機会はさほど多くありません。フォルクスワーゲンの販売店にも伺ったのですが、政府の電気自動車の新車購入助成金制度がかなり充実しているにも関わらず販売数は振るわないとの事ですが、その実状に関してはどうお考えですか?
【エムリッヒ氏】リチウムバッテリー本体が高額な上、メーカーが指定する年数で交換をする必要がある為に、現在走行している電気自動車の大半はリース契約だと推測しています。

――近い将来には、EU圏内は電気自動車やEハイブリッド車が主流になる方向ですが、消防車や救急の車両もEV化へと向かうのでしょうか?
【エムリッヒ氏】ミュンヘンの消防本部では、現在25台のe Golfが広報や調査用に採用されており、追加で更に25台を発注しています。また、実働部隊の車両も将来的には電動化される予定です。持続走行の問題も考慮して、水素自動車の導入も視野に入っています。従って、既に大型の消防車両も含めて、救急車等もそれらのプロトタイプで試験運転をしています。実は、ドイツでは1902~10年頃まで電気消防車が消火活動に出動していたのですよ。それから内燃機関へと移行し、また電気へと回帰しているのです!

スーパーマーケットAldi Südの駐車場に設置されている電気自動車用と電動自転車の無料充電装置:現在ドイツ国内の90の支店に設置されており、お店の屋上に設置されたソーラーパネルで蓄電された電力をお買い物中に1時間無料で充電ができます。その他のスーパーマーケットチェーンやマクドナルド等でも同様の試みが始まっているそうです。予約は不可で、空いていれば充電できます。

エムリッヒさんにはこれ以外にも数多くのなぜナニ? にお答え頂き、またドイツ語でびっしりと書かれた資料を頂きましたので、今後の電気自動車の普及に向けて少しずつ勉強していきたいと思います。ドイツ国内の新聞やニュースで、電気自動車(プラグインハイブリッド車を含む)の事故で火災が起きたり、充電中にガレージやお家が燃えたりするのを見聞きする度に、やはり躊躇してしまいます。一番良いのは自分で購入してとことん乗り回す事なんですけどね!

ミュンヘンと札幌はほぼ同緯度。そして、ミュンヘンオリンピックが開催された1972年には、札幌で冬季オリンピックが開催された事もあり両都市は姉妹友好都市なのです。ミュンヘン在住の札幌出身者には、それがとても誇りであり、自慢なんだそうです。

本来は雪国なのですが、地球温暖化なのか? ここ数年は豪雪になる事は殆どありません。この冬、日本では大雪に見舞われて、数多くのトラックや自動車が長時間に渡って立ち往生をしているようですが、もしも電気自動車で遭遇し、バッテリーの残量が減って行くと思うと気が気じゃありません。前出のエムリッヒ氏によると、ミュンヘン市やその周辺で電気自動車のバッテリー切れで立ち往生になった事はまだないとの事ですが、日本の大雪のニュースを観ると、ここでもいつそんな状況があるか分かりませんね。
ドイツの自動車連盟ADAC (日本のJAFと同様の役割を果たす)の調査結果によると、電気自動車で時速30~50㎞の都市部において外気が0℃の場合に暖房を入れて走行する場合、20℃の時と比較すると最大50%まで航続距離が減少するそうです。日本の日本海沿岸部や東北、北陸、北海道等の寒冷地では日中最高気温もミュンヘン同様に氷点下になる日も多いですので、今の電気自動車だけで生活する日常に不安はないと言い切れないですね。

現在、G20加盟国の中で一般家庭用の電気代がぶっちぎりで高いのがドイツ! 毎年のように電気代の値上げが問題視されるドイツですが、自動車まで電気になると月々の電気料金を考えるのが恐ろしくなります。
1kwhあたりの価格 (単位:USD-Cent)
1位:ドイツ 43,9
2位:イタリア 33,4
3位:トルコ 32,3
4位:インドネシア 30,6
5位:日本 29,9
6位:イギリス 29,3
7位:ブラジル 28,7
8位:インド 26,7
9位:南アフリカ 26,3
10位:フランス 24,8

昨年はコロナの影響を大きく受け、ヨーロッパ内の国境を超えるには制限があった事もあり、イタリアやオーストリア、スイスにドライブや取材に行く事が出来ませんでした。昨年から延長が続くロックダウン中につき、ドイツ国内ですら自由に愛車で走り回るのは難しい状況ですが、少しでも感染者が減るように、また私自身も感染・拡大をしないように、引き続きStay Homeを心掛けたいと思います。

この記事を書いた人

池ノ内 ミドリ

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

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