【ニューモデル情報通】Vol.9 複合ジャンル系SUVの「マツダMX-30」に、「ペルソナ」や「エチュード」の流れを見る

2021/01/06 18:00

各メーカーが魅力的なSUVを用意する時代。マツダも、コンパクトな「CX-3」、ミドルクラスの「CX-5」、その3列シート版の「CX-8」、そして「ちょうどいい」サイズとしてCX-3とCX-5の間のサイズを取った「CX-30」など、きめ細やかなラインナップを展開している。

現代流のスペシャリティカー、MX-30。魂動デザインを用いずとも、マツダのクルマだと思わせる同社のデザイン力は流石だ。

そして2020年、さらに「MX-30」が登場。「RX-8」以来の観音開きドア(フリースタイルドア)を採用したことでも話題になった。SUVという視点から見ると難解なクルマだが、昨今流行のいわゆる「SUV+クーペ」で、さらにプレミアム感を高めた複合ジャンルクロスオーバーモデルだと知れば、なるほど、これはかつて当たり前に存在した「スペシャリティカー」の末裔なのだ……と気づく。そう考えると、MX-30を見て、ふと過去のマツダが生み出したいくつかのスペシャリティカーが頭をよぎるのは筆者だけではあるまい。そこで今回は、MX-30に到るまでのマツダ車を、いくつかピックアップしてみよう。

マツダ注目のマイルドハイブリッドモデル「MX-30」の試乗インプレッション&動画

売れなかったけど、記憶に残る「エチュード」

1987年から1989年頃まで販売されたエチュード。エンジン1.6L DOHCのB6型一種類のみ。「アーバン・チューンド」というキャッチコピーも懐かしい。総生産台数は1万台ほどで、2020年現在、路上で見かけることは奇跡に近い。写真は最上位グレードのGi。

スペシャリティカー(スペシャルティカー)といえば、トヨタ・セリカ、日産・シルビアやホンダ・プレリュードが思い出される。いずれの車種も、一時代を築くほどに売れた時代があった。厳密には、スペシャルティカー(そもそもが和製英語)に定義はないが、スポーツカーほどカリカリしていないもののスポーティな走りができて、車内は広くはないが2+2程度の居住性は確保されている、実用車をベースにしたクーペ(もしくはハッチバック)、というスタイルが一般的だろう。1970年代から、各メーカーともにたくさん車種を擁しており、マツダでは2代目コスモもその一員に含まれる。

そんな中、1987年に登場したのが「エチュード」だった。6代目ファミリア(BF型)をベースに、独自デザインが与えられた3ドアハッチバックのスペシャリティカーで、ベースのファミリアより全長を115mm伸ばし、車高も35mmほど下げてスタイリッシュさを強調していた。洗練されたライフスタイルを持つ、時代を先取りするファッショナブルなユーザーに向けて作った……とされるモデルで、同クラスのファミリアよりも装備は充実しており、現在でいう「プレミアム・コンパクト」の性格も有していた。

エチュードの内装。ダッシュボードの一部にベースのファミリアとは異なる専用デザインを用意したが、シートを含めたインテリアの雰囲気・素材選びなどに違いはあまりなく、「スペシャル感」が薄かったのは否めない。

たしかに凝った外観デザインはシンプルで好ましいものだが、スペシャリティカーの「スペシャル感」は少々薄く、内装でもファミリアとの差別化はあまりできていなかったこともあり販売台数は低空飛行。途中で車種追加を行った以外、マイナーチェンジをすることもなく、わずか2年・生産台数約1万台でその生涯を終えてしまった。そんな当時からレアでマイナーな車種だったのだが、何か新しいクルマというイメージがあったのか、クリス・レアが歌うCMが超絶にカッコよかったからなのか、不思議と今でも記憶に強く残る一台ではないだろうか。そして、実用性の高いハッチバック的なクーペ・スタイルに、MX-30との近似性も感じさせる。

ちなみに、これは完全な余談だが、南アフリカでは一部世代のファミリアが「エチュード」を名乗っていた。(下記画像は、ファミリアの海外版「プロテジェ」)。

斬新極まるインテリアが注目された「ペルソナ」

水平基調ながらもRがついた肩、各部の丸いデザイン処理によって、優しくエレガントな雰囲気を持っていたペルソナ。エンジンは1気筒3バルブSOHCの1.8L(のちにDOHC化)、4バルブDOHCの2Lがあり、本革仕様の「タイプB」、布シートの「タイプA」というシンプルなグレード体系を持っていた。なお、兄弟車に「ユーノス300」があった。

車種整理がどんどん進み、定番ジャンル以外、冒険するような新車種も出にくくなった昨今、複合ジャンル系SUVで、新しい価値観を生み出そうとしているMX-30の存在はエキセントリックに映る。そんなギョッとするようなクルマを、これまでも時折マツダは出してきた。「ペルソナ」も、その一台だろう。

ペルソナは、4代目カペラ(GD型)をベースに、エレガントなピラーレスハードトップのボディを載せて1988年に誕生した。居住性を犠牲にしても屋根を削った、スタイル優先の4ドアハードトップとして出現し、ヒット作となった「トヨタ・カリーナED」と同じ、「4ドアスペシャリティカー」である。ペルソナの大きな特徴は、ラウンドしたソファーのようなリアシートを持つインテリアで、グレードによっては手縫いの本革まで用意された。灰皿レスが標準だったことも、「禁煙」が基本の現代を先取りしていたのかもしれない。現在では、「メルセデス・ベンツCLS」や「BMW6シリーズクーペ」など、4ドアクーペは当たり前になりつつあるが、その先鞭をつけた80〜90年代の国産4ドアハードトップは、先見の明があったといえるだろう。

今見ても驚きの、ペルソナの内装。ラウンジ風のリアシートは、「シートは座るもの」という機能性を減らしてでもデザインを優先していた。アームレストを担うクッションも凝っている。

クロノスファミリーの一翼を担った「アンフィニMS-8」

4年のモデルライフを終えたペルソナは、1992年に「アンフィニ(Ẽfini)MS-8」にバトンを渡した。この頃のマツダは、「マツダ」「アンフィニ」「ユーノス」「オートザム」「オートラマ」の5チャンネルを構えており、販売網ごとに専用車種を配するという、今では考えられないほど贅沢なラインナップを誇っていた。旧マツダオート店を発展させたアンフィニ店は、マツダ店よりも少し上位、かつ個性的なモデルを用意しており、アンフィニ店専売のMS-8も、センターピラーを持つ4ドアハードトップとして誕生。カペラの後継車「クロノス」兄弟唯一の4ドアハードトップである。大きくなった車体は凝ったデザインで、ベンチシート風の前席・ダッシュボードから生えるシフトノブなど、内装も個性的。サンルーフに太陽電池を納め、換気と充電ができる「ソーラーベンチレーション」をオプションで装備可能など、随所に散りばめられた意欲的な新しいアイデアも楽しかった。販売台数は多くなかったものの、クロノス兄弟ではいちばん最後まで残り、1998年まで販売が継続された。

クロノスファミリーの一員だったアンフィニMS-8。エンジンは2L/2.5Lで、いずれもV6。ボディは3ナンバーサイズとなり、ペルソナより大柄になった。ペルソナほど個性は強くないが、全体的に「何か新しい価値観のクルマを作ろう」という思いが溢れていたように思う。

小さな高級車を狙った、隠れたロングセラー「ベリーサ」

小さな高級車的なポジションを狙ったベリーサは、2004年登場。小型車ながらも丁寧に作り込まれた内外装デザイン、インテリジェンスキーなど豊富な装備を持っていた。エンジンは1.5LのZY-VE型。

車格に関係なく装備が増え、質感も上級車種に負けないほど高くなっている昨今では、小さなクルマの「プレミアムコンパクト」化が進んでいる。しかし以前は、高級コンパクトカーはまだまだ珍しい存在だった。2004年にデビューした「ベリーサ」は、まさに小さな高級車を目指したモデルで、2代目デミオ(DY型)のプラットフォームを用いて開発されていた。デミオと同じ5ドアハッチバックだが、グリルレス風の落ち着いたデザインを採用。室内もオプションで本革シートを設定、装備も豊富としてデミオとの差別化を図っていおり、小型ハッチバックのスペシャリティカーとも言える存在だった。

 

12年に及ぶモデルライフで外装に大きな変化はなかったが、幾度も特別仕様車が設定されたため、内装のバリエーションは多い。

ベリーサは、その生涯を通じてヒット作とまでは言えなかったものの、コンパクトカーゆえの乗りやすさと実用性、高めのアイポイントからくる運転のしやすさ、適度な上質感・高級感などが評価され、なんと2015年まで製造が継続した。実は、隠れたロングセラーモデルだったのだ。

今回取り上げた車種たちとMX-30との間には、技術的・系譜的なつながりは全くないが、各車種を改めて見直すことで、「何か新しいジャンルを構築しようというマツダの気概」に共通点があるように思う。

フォト=マツダ

この記事を書いた人

遠藤イヅル

1971年生まれ。商経系大学を卒業後カーデザイン専門学校に入学。メーカー系レース部門の会社へ就職し、デザイナーとして勤務する。その後一般企業のデザイナーやディレクターとして働き、独立してイラストレーター・ライターとなった。実用車、商用車を特に好み、クルマの歴史にも詳しい。

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