クルマの本質を見極めるには、やはり距離を走ってみるのがいい。じっくりと向き合い対話することで、それまでは気づかなかった意外な一面が露わになってくるからだ。このグルメ/温泉編では、Aクラスセダンとマツダ3セダンで温泉とランチが楽しめる新城の湯谷温泉を目指した。
長距離走行がラクになるAクラスのトルク特性
コロナ禍のまっただ中、旅に出るには慎重な判断が必要になる。まずは、移動手段だ。公共交通の利用に不安を感じている人が少なくない。そこで見直されているのが、自家用車での移動だ。そのため、クルマの販売は一気に落ち込んだが早くも回復傾向にある。
目的地も、人ごみは避けたい。散策こそ旅情感が増すものの、クルマから絶景をめでることもできる。あるいは、旅館などの宿泊先が目的地でもいい。不特定多数との接触が避けられ、趣のある料理が供され良質な温泉に浴せば心まで和む。宿泊しなくても、日帰りのひとときでの非日常の体験となる。このページでは、そんな旅を誌面で再現してみることにする。
遊び道具をたくさん積み込むならSUV、親子3世代で移動するならミニバンという選択がある。ただ、その必要がなければCセグメントのセダンが果たす役割で十分だ。いや、旅に出ないときに余計な空間を動かす必要がないだけに、積極的な選択となる。
Aクラスのセダンは、4ドアクーペのCLAとモデル内で競合しそうだが棲み分けはできている。後席の頭上スペースは十分な余裕こそないが、大柄な男性が4名乗車をしても窮屈感がない。
ただ、後席に乗員がいると路面の段差などを通過した後にフロントに対するリアの振動が一瞬だけ遅れて収束することがある。後席で確かめたところ、揺れ残りを伴うことはなくまったなく同行者が不快感を覚えずに済む。
その意味では、日帰りができる程度のショートトリップでも快適な走りが約束される。運転席での印象にしても、意識すれば気づくだけなので快適性を損なうことはない。試乗車のA250は、スポーツコンフォートサスペンションを装備するので設定は少しだけ引き締まっているが、揺れではなく路面からの衝撃が伝わる場面でも高剛性ボディがそれを抑え込む。
ステアリングは、切れ味がスムーズでいて直進時はセンターが落ち着いているので高速道路の移動距離が長くても負担にならない。2Lの直列4気筒ターボエンジンは、低回転域から充実したトルクを発揮。走行車線から追い越し車線に移り先行車を抜く過程でも、アクセルを少し踏み足せば回転数をジワッと上げつつDレンジのままでこと足りてしまう。
温泉地といえば、多くは山間部にある。そこまでのワインディングロードも、Aクラスで移動すれば旅の楽しみになる。コーナーを攻めるような走りは同行者のヒンシュクを買いかねないが、気持ちよく駆けぬけたくなる思いは伝わるはずだ。コーナリング中のボディがムダに動かないので安定性が高くクルマに対する信頼感が抱けることは、後席でも変わりがないからだ。
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