【国内試乗】「フェラーリ・ローマ」ロマンチックでスパルタンな究極の2面性を持つ最新の跳ね馬

一層官能的になったサウンドが心地いい

乗り心地も超が付くほど良好だ。タイヤの硬さを意識させず、路面の凹凸をサスペンションがしなやかに吸収。ゴツゴツ、ガタガタ、ザラザラなど濁音をつけて表現されるような不快な要素はきっちりと排除されていて、しっとりとした潤いを感じる乗り味だ。上質、洗練といった言葉が頭に浮かび、これなら美しいベルリネッタを生活のなかに入れたいという、コテコテのエンスージァスト以外のユーザーにも歓迎されるだろう。快適だからといってフワフワとしているわけではもちろんない。路面からの入力をソフトにいなしながらも車両の姿勢は見事に安定していて、路面が荒れていてタイヤが上下動してもボディは揺るがないフラット感が得られている。

FERRARI ROMA

新たに5ポジションとされたマネッティーノにより、様々なドライビングスタイルや路面状況にも対応。快適なドライブを提供する。

公道でフェラーリのポテンシャルをすべて引き出すことは不可能だが、少しだけアクセルペダルを踏み込んでみる。ゼロ発進で強く加速させるとFRだけにリアタイヤが軋んでパワーのすべてが路面に伝わりきらないが、それでもトラクションコントロールが働く寸前を維持しながら前へ前へと突進。0km/hから完全にクラッチミートするのは2000rpm程度で、そこから猛烈な回転上昇をみせて一気に7500rpmまで。2速上限ですでに日本の公道では試せない領域になってしまうが、そこからシフトアップすると3速6000rpm。8速化でギアレシオが4%ショートになっているので加速が小気味いい。シフトアップ&ダウンともにスピードは23%短縮されているというが、まさに電光石火でシフトそのものがめちゃめちゃに楽しい。

FERRARI ROMA

フロントはボリュームのあるフェンダーラインとアダプティブマトリックスLEDヘッドライトが特徴だ。

さらに興奮させられたのがサウンドだ。フェラーリがカリフォルニアで初めて直噴化したとき、サウンドはそれまでよりも低く、やや濁った感じになったが、ローマのそれは全域で澄み渡っていて官能的だ。シフトダウン時のファンッ! というブリッピングがこれまでにも増して気持ちいい。

FERRARI ROMA

リアのシャープなコンビネーションランプも他モデルと差別化が図られている。

コーナーでの動きはもちろんシャープだ。ステアリングの操舵力は適度に軽いが、インフォメーションはしっかり伝わってくる理想的なもの。FRだから公道のワインディングで、それほど荷重移動を意識しなくても素直な感覚でノーズをいきたい方向に向けるのがたやすく、アクセルを踏み込めばしなやかなサスペンションがリアタイヤを路面に押しつけてくれる安心感がある。E-DiffにSCC(サイドスリップアンドコントロール)、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(ブレーキ・トルクベクタリング)など統合的な電子制御システムは、あまり制御感をもたらさないままドライビングプレジャーとパフォーマンス、安全性をバランスさせる。今回はそれを存分に試すまでいかなかったが、狙ったコーナリングラインを正確に、速く楽しく、安心感をもって走れたのは確かだった。

FERRARI ROMA

タイヤはフロント245/35ZR20、リア285/35R20のミシュラン・パイロットスポーツ4Sが装着される。

マネッティーノは5ポジション。コンフォートやウェットならばちょっと無茶してみても安定しきっている。スポーツなら誰もが楽しめて、スキルがあればレースが最高。さらに、ESC OFFなら完全にイブニングガウンを脱ぎ去ることもできる。

FERRARI ROMA

トランク容量は272Lで、リアシートを倒すと345Lに拡大可能(オプション)。

エレガントで美しく、乗り味もフレンドリーな新種のローマだが、真の部分はやはりフェラーリ。マネッティーノを右方向にひねっていってアクセルペダルを踏み込めば、F1を彷彿とさせるスーパースポーツの血が流れていることを思い知ることになるのだ。

FERRARI ROMA

なだらかに収束するルーフラインにせり上がったリアフェンダーなど、”流麗”という表現がしっくりくる美しいリアビュー。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2021年1月号より転載

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石井 昌道
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2021/01/01 17:00

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