【国内試乗】「BMWアルピナ B3」「M」とは違う刺激とエレガンス

萩原秀輝
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2020/10/09 11:00

BMWとの協力関係を基にエクスクルーシブな高性能モデルを輩出してきたアルピナの、先の東京モーターショーで世界初披露した新型ミドルサルーンが日本上陸を果たした。新搭載となるBMW M製ユニットの振る舞いも含めて一般公道でチェックしてみよう。

M製ユニット搭載ながら、ならではの洗練度を保つ

BMWアルピナの新型B3リムジンは、とても興味深いモデルだ。アルピナとしてはじめて、高性能なBMW Mモデル専用であるS系エンジンをベースにして搭載してきたからだ。

BMW Mスポーツ仕様をベースにアルピナ専用のエアロをプラス。エキゾーストエンドはオーバル形状の左右デュアル出しとなる。

従来通りの取り組みなら、B3は3シリーズが積む直列6気筒のB系エンジンをベースにしたはずだ。そうしなかった理由の発表はないが、シングルターボが前提のB系では、ビターボ=ツインターボ化することが困難という判断があったのかもしれない。ツインターボを組み合わせるS系であれば、アルピナのセオリーと合致する。

次期M3/M4にも搭載される462ps/700NmスペックのBMW M製3L直6ツインターボ・ユニットを採用。

ただ、新型M3に先行して搭載されたX3Mなどが積む新世代のS系を単純に移植したわけではない。X3Mが積むS系エンジンの最高出力は480ps、高性能版のコンペティションは510psを発揮。B3が462psを得るにとどまるのは、BMWの高性能サブブランドである「M」の位置づけを踏まえた、アルピナならではの紳士的な配慮といえるだろうか。

8速スポーツATとフルタイム4WDに専用設計タイヤとなるピレリPゼロを組み合わせ、0→100km/h加速3.8秒、巡航最高速度303km/hを実現する。

だが、エンジンをディチューンしたわけではない。最大トルクはX3Mの600Nmを大幅に超える700Nmに到達。なおかつ、フラットな特性をあえて狙わず、最大トルクは3000rpm以上の中回転域でピークに達するのだ。

最新世代BMWと共通のインターフェイスながら、フルデジタル液晶メーターはアルピナ独自のブルーとグリーンで彩られる。

それだけに、日常的な場面でも力強さの盛り上がりが確かめられる。アルピナ専用デザインのデジタル・メーター・ディスプレイにトルクを表示すると、2000rpm以下でもアクセルを少し踏めば400Nmに迫るほどだ。周囲の流れに先行する程度の加速なら、この領域で事足りてしまう。

アルピナ・エンブレムをあしらったスポーツシートなど、上質な本革素材を惜しげもなく使ったインテリア。

山岳路などで走りを楽しむ場面では、アクセルを踏み足せば強大なトルクが立ち上がる。アルピナとZFが共同開発した8速スポーツATは、ステアリングのボタンでマニュアル操作が可能なスウィッチ・トロニック付きだ。3速にホールドすると、50km/hで2400rpmとなり加速の勢いが増す過程がリアルに体験できる。

ステアリングには手作業によるブルーとグリーンのステッチが施される

コーナー進入時に2速にシフトダウンすると、50km/hで3500rpm。この回転域からのコーナー脱出時には、劇的ともいえる加速が始まる。4000rpmを超えると、じつはシーケンシャルターボで3基目が起動したのでは? と疑いたくなるほど強烈に加速が勢いづく。刺激を控えめにしてきたアルピナとしては、近年にはなかった特性といえる。

正規モデルを証明するシリアルプレートはiDriveダイヤルの手前に配される。

しかも、アルピナ・エキゾースト・システムにはサウンド・プロファイルが組み合わされる。走行モードが「スポーツ」なら、4000rpm以下までは軽やかだったエンジン音に迫力ある低周波のビートが重なる。そして、高回転域ではビートが連続しコォーンという快音を響かせつつ一気に6500rpmまで吹け上がるのだ。

とはいえ、こうした場面でもドライバーを緊張感で縛り付けることはない。アルピナ独自設定となるAWDにより、圧倒的なスタビリティが保たれるからだ。サスペンションのストロークがスムーズなだけに、ボディの動きが実感しやすいことも安心感につながる。それでいて、ステアリングの切れ味がスッキリしているだけに、操作に対してスイッと軽やかに向きを変えるアルピナらしいハンドリングを楽しませてくれる。

乗り心地は、それこそMスポーツ・サスペンションを装備する3シリーズよりも快適なほど。ザラついた路面で聞こえるゴーッというロードノイズも、フィルターを通したかのようで少しも耳障りではない。速度が一定なら、エンジンは優れた静粛性が保たれる。
つまり、新たにS系エンジンをベースにしてもB3はアルピナならではの走りの洗練度はそのままだ。アグレッシブなMスポーツ顔さえ、エレガントに見えてくる。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年11月号より転載

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