【国内試乗】「フェラーリF8トリブート」最新のGTB V8エンジン継承者

フェラーリF8トリブート
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ついに日本上陸を果たした、フェラーリF8トリブート。過去への敬意を表し集大成的な意味をもつこのニューモデルは、フェラーリとしては異例の流れを汲むミッドシップスポーツだ。一部では、これをもって純内燃機関に終止符を打つとの噂も……。それゆえにシリーズ最高の完成度を見せている。

異例の流れでデビュー! ミッドシップ最終進化系

フェラーリの主力モデルとなる最新作「F8トリブート」がついに日本上陸を果たした。1975年の308シリーズからスタートしたこのV8ミッドシップ・シリーズは、ほぼ全モデルにおいてヒットを飛ばし、常にフェラーリの屋台骨を支え続けていた存在。今回のF8トリブートもその流れを汲む最新型ではあるが、実は少々意味合いが違う。

488ピスタ譲りのV8ツインターボを搭載。3902ccの排気量から最高出力720ps、最大トルク770Nmを発揮。これに7速DCTを組み合わせ、最高速度340km/h、0→100km/h加速2.9秒を誇る。

このF8トリブートに積まれる3.9L V8ツインターボユニットは、前作488GTBから派生した488ピスタのものを継承している。本来、ニューモデルであれば同じV8エンジンをベースにしていても必ず刷新して搭載してくるのが通例だったが、ワンメイクレースマシンのロードバージョンとして位置づけされる488ピスタのエンジンをほぼそのまま搭載してきたのは過去の流れから見ても異例。しかも車名に〝トリブート〞と示されているように、V8ミッドシップ・シリーズの集大成として用意している。

前作の488GTB比で空力効率は10%向上しているF8トリブート。ラジエターのレイアウトを変更するなど冷却系も進化している。

それだけにエクステリアには過去へのオマージュとして、一部デザインを応用しているのが特徴。丸形4灯のテールライトは308シリーズ、スリット入りのリアエンジンカバーはF40からと、フェラリスタにとっては心憎い演出が施され、通常のニューモデルとは異なる意味深なアプローチが見て取れる。とはいえ、フロントノーズ下からボンネット上部にエアを排出することで強烈なダウンフォースを生み出す大胆なSダクトは488ピスタから受け継がれるなど、エアロダイナミクス面では一切妥協なし。相変わらずの徹底ぶりだが、それは走行性能にも進化として表れているから見事である。

488からわずかにリファインされたコクピット。試乗車にはオプションのカーボンシートと助手席用ディスプレイが装備されていた。

ミッドに積まれるV8ツインターボは、最高出力720ps、最大トルク770Nmを発揮するが、これは先にも触れたように488ピスタとまったく同一値。実質、直接の前作となる488GTBと比較すると、50ps&10Nm向上していることになるが、このエンジンで注目すべきはそのレスポンス。チタン製コンロッドで1.7kg、クランクシャフトで1.2kg、フライホイールで1.5kgと、ムービングパーツの軽量化を図ると同時に、車両全体でも40kgほどライトウェイト化されていることもあって俊敏性が向上している。しかも、電子制御システムも見直され、トラクション性能やブレーキバランスも格段に向上、最新の電子制御ディファレンシャルも第3世代となったEデフ3を組み合わせたことで、シリーズ最高のコーナリング性能を実現している。

特にタイトコーナーにおけるF8トリブートの速さは感動ものだ。中でもレースモードを選択した場合、ノーズは思うがままに〝スパッ〞と入り、旋回中も的確な舵角とインフォメーションを伝え、強烈なトラクションで素早く脱出させる。この一連の流れがドライバーの手足のように一体感が得られ、まるで小型ライトウェイトスポーツカーを操っているような感覚に陥る。しかもコーナー間の移動も488よりも明らかに上。だから連続するコーナーでも自分で思っている以上の速さを見せる! もちろん、高速道や一般道での快適性も向上しているが、はやりこの旋回性能を知ってしまうと、これだけでも買う価値を見出せる。

さすがはフェラーリだ。この実力と感覚は他に類を見ない。またもや競合に大差をつけたと思う。

リポート=野口 優 フォト=郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン9月号より転載

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2020/08/17 11:00

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