「高級車」はサルーンのものだけにあらず。いまはコンパクトクラスにも言え、ハッチバックやSUVでも小さいからこそ成り立つ高級感を押し出すクルマは増えている。しかし、個性が際立っているかと思えば機能や走行性能が拮抗しているなど、そのクルマ選びは悩ましい。そこでカテゴリーに分けた、購入時に悩むであろうライバルを比較し、モータージャーナリストが買うべき一台を本音で語った!最後は「アウディA1スポーツバック vs ミニ5ドア」のキャラクター編!
コンパクトカーの解釈を独自路線で構築
2000年代に入り、最も進化した自動車プレミアムは全長4mのコンパクトカーだと思う。その筆頭は問答無用でミニだ。それまでもニュービートルなどがあったが正直一過性。キャラクター性とプレミアム性と走りの良さが相まり、愛着と共に楽しめる小さな高級車が突如21世紀版となって出現した。プレミアムと呼んでいいかは少々迷うところだが、後のフィアット500もミニの座狙いと言っていい。
そして、キャラクターを異にしてミニの座を脅かす筆頭格は、2011年日本上陸のアウディA1だろう。実際デビュー直後の初代A1クーペには驚いた。リアシートは正直狭い。ミニ3ドアと同様だが、とにかく見た目からインテリアまでクオリティが圧巻だ。アルミをあしらったかような質感のピラーに、スペース効率より可愛らしさを追求したキュートなフォルム。室内には独自インターフェイスのMMIに加え、ソフトパッドまで備えていた。知り合いが「ゴディバのチョコレートのよう」と言ったがまさにその通り。クラス無視のピュアなアウディクオリティが詰まりまくっていた。
対するミニもまたコンパクトであることを感じさせない質感、ボディ剛性、ハンドリングが詰まっており、引けを取らなかったが少々キャラクター性が強すぎるというか分かり易すぎた。ミニじゃ少々ガキっぽいという人がA1に流れた可能性があったのだ。
あれから約10年、ミニは3代目、A1は2代目となったがぶっちゃけ差は縮まっている。ミニは定番ハッチバックという変わらぬキャラクターを持ちつつ微妙にデカくなりBMW化した。
ミニのダイレクト過ぎるゴーカートフィールは微妙に減って乗り心地、ハンドリング共に上質で滑らかなBMWテイストに。特に売れ線の5ドアはギリギリ全長4mを守り、そこそこ後席の広さと扱い易さを両立している。街中でもシャープなハンドリングを楽しめ、高速でも駆けぬける歓びが味わえる。小沢はいまだに初代BMWミニを持っているが、最新ミニの5ドアはマジメに小さな高級車だ。1.5Lターボは136psに230Nmのパワー&トルクを発揮し、実にキモチいい。直3エンジンがゆえのラフさは残っているが悪くない。
かたやA1はこの世代から3ドアを廃止し、5ドアのスポーツバックに一本化。正直、かつての可愛らしさは少し減った一方、凄く使い易くなった。全長が4mを微妙に越えただけでなく、ホイールベースが旧型比で95mm伸びてリア席に大人が普通に座れるようになった上、ラゲッジルーム容量も65L増えて355Lに。コイツは278Lのミニ5ドアより露骨に大きく、さらなる魅力はモダンなバーチャルコクピット。センターには10.2インチのMMIタッチスクリーン備わる上、操作感覚もスマホライク。アウディらしくスイッチ類がカチカチと気持ち良く押せるだけでなく、ほとんどの操作がタッチで行える。
ヤンチャっぽさを微妙に減らして行き、よりBMWサルーン化したミニに対して、可愛らしさを減らしつつ実用性を増したA1スポーツバックの勝負という構図なのである。
正直、乗って面白いのはミニだと思う。現行A1はそれを越える味や濃厚キャラではなく、実用性やハイテクインターフェイスで対抗する。つまり、何気に勝負のフェーズは変わっているのだ。
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