【大矢アキオの イタリアでcosì così でいこう!】イタリアでもネット中古車市場拡大中。涙の体験記とともに

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Così così(コジコジ)とはイタリア語で「まあまあ」のこと。この国の人々がよく口にする表現である。毎日のなかで出会ったもの・シアワセに感じたもの・マジメに考えたことを、在住23年の筆者の視点で綴ってゆく。

有力サイトでは6割が「車」イタリアでもインターネットの中古車市場が活況を呈している

自動車専門サイト「ニュースアウト」が2019年3月に紹介したニールセン調査によれば、イタリアで車購入における最初の情報収集手段として「インターネット」を挙げた回答者は29%で、「販売店」の26%、「友人・知人」の13%を上回った。

イタリアの中古品総合検索サイト「スービト」によると、2018年の同サイトにおける自動車関連取引高は59億ユーロ(7200億円)で、中古品市場全体(98億ユーロ:約1兆1000億円)の6割を占める。「スービト」は月間ユーザー数1100万人を誇り、他アイテム同様、自動車もプロ・個人双方から出品が行われている。

背景にあるのはインターネット普及率の向上だ。イタリア中央統計局によると、2006年のネットユーザー数は国民の32.1%に過ぎなかったのに対し、2016年は倍近い61.3%にまで上昇している。ヘビーユーザー数の伸びはより顕著で、同じ期間に14.1%から43.9%へと3倍以上に増加している。

一部インポーターは2000年代に入ると、早くも認定中古車検索ページを公式サイト内に設け始めた。2019年5月、ミラノのメルセデス・ベンツ販売店で。

筆者が知るセールスパーソンが勤めるシエナの自動車販売店も、ネット検索サイトに掲載するようになって久しい。本人は基本的に新車の営業だが、傍らで中古車も担当している。そのため、少し前に訪れたときも売り物の車をショールームの前に引っ張り出し、熱心に車内外各部をコンパクトカメラで撮影していた。
彼は「ネットは販売スタイルを変えてゆくうえで重要なんだ」と説明する。目下の目標は3台に2台をネット販売にすることだという。

立ちはだかった4つの難関

筆者がこれまで23年のイタリア生活で買った車は4台。いずれも中古車である。検索サイトができる前夜は、当然のことながら自らの足で中古車販売店を回っていた。何軒も訪ねるうち気がついたのは、セールスパーソンの説明には典型的ともいえるパターンがあることであった。「この車は週末だけ使われていて、常にガレージ保管だった」に加え、「前オーナーは大学教授」がやたら多いのである。

個人売買においてもネットは便利だが、やはり手数料は発生する。節約したければ“売りたし(VENDESI)”の貼り紙を付けて走りまわるのがいちばんだ。効率はさておき。

車検証には歴代オーナー名が記されているから、それが本当かは調べれば一発でわかってしまう。それでもそうした口上に頻繁に遭遇した。教授、教授ってYMOの坂本龍一かよ、と突っ込みを入れたくなったものだ。

それはともかく、毎回困ったのはオートマチック(AT)車探しである。近年は都市部の高級車が牽引役となってAT比率が高まってきた。それでもようやく25%(2020年予想)である。筆者が住むような地方都市で、それも過去にAT車を探すのは至難の業だった。そのため今の車とその前の車は、AT車在庫が比較的豊富にあることから、はるばる380km離れたミラノのメーカー直営ディーラーで探した。

それがインターネット中古車サイトの普及により、イタリア各地に点在するAT車在庫が簡単に物色できるようになった。少し前、今乗っている車が走行10万キロに達したのを機に、かなり真面目にインターネットで車を検索したことがあった。条件は前述のATに加え、4つあった。
1.ここ10年以上のイタリア定番3色(白、黒、シルバーメタリック)でないこと
2.カーナビ
3.禁煙車
4.アダプティヴ・クルーズコントロール付き

である。

1は容易ではなかったが、販売店までの距離に目をつぶれば、なんとかクリア。
いっぽう2のカーナビは、「ディスプレイは付いているが専らオーディオコントロール用で、カーナビ機能は後付け」、つまりreadyの場合もあったが、説明を熟読すれば解決した。

難航したのは3である。筆者が知る限りイタリアで「禁煙車」を指定できる検索サイトは存在しない。商品説明にその旨書いてある店もあったが、極めて稀である。
個別にメッセージ欄で問い合わせても返事がなかったり、返答があっても「当店では全車、納車前に規定に従って消臭します」という、だからどうなんだよ的なものだったりした。
数百キロかけて実車を見に行き、ドアを開けた途端タバコ臭かったら、たまったものではない。

最大の難関は4だった。さすがにメーカー認定中古車店ではなかったものの、「アダプティブ」と記されていても、よく見ると普通のクルーズコントロールだったりすることが幾度もあった。

ホワイトは、20年来イタリアで価格帯を問わず定番色のひとつである。2020年6月、シエナで。

問い合わせてみると、店の人が双方の違いを理解していなかったり、自動衝突回避ブレーキと勘違いしている店もあった。
そもそも前述したようにATさえまだマイノリティの市場なのだから仕方ない。ただのクルーズコントロールかアダプティブか、掲載写真のステアリングコラムまわりを自分で拡大して確認する日々が続いた。
やっとのことでアダプティブ付きを突き止めても、今度は色が定番色だったり、店の評価が低かったりする。さらに、ディーラーの名前で売っていても、実は前オーナーからの受託販売というケースもあった。安いのだが、経費の一部として計上したい領収書が面倒なことになる。そうこうするうちに疲労困憊した筆者はネット検索を断念。オドメーターが14万キロを回ってしまっても、同じ車に乗り続けている。

シエナのFCA系販売店が、新車ショールームとは別に設けている中古車展示場。2019年6月撮影。

ネット販売ならではの苦労も

筆者の場合、イタリアにおいてレアな条件の連続で自らハードルを上げてしまった。したがって、イタリアの中古車ネット検索事情を締めくくる話題としては相応しくなかろう。

そこで再び冒頭の検索サイト「スービト」のデータを参照すると、2018年にイタリアで最も検索された自動車ブランドは「BMW」で、以下「メルセデス・ベンツ」「アウディ」の順という。
ここ20年、イタリアにおけるプレミアムブランドの人気御三家そのままであるとともに、ある程度好みを仕様に反映させたいユーザーが多いブランドである。いっぽう冒頭に記した知人のセールスパーソンは、今回さらに面白い話を聞かせてくれた。彼の店では、とくにオープンモデルの反応が良いという。

イタリアでは極めて珍しいレクサスSC430。フィレンツェにて。こうしたオープンモデル探しは、ネット検索が極めて効率的だ。2020年月現在の現地相場は円換算で約140〜220万円。

メーカー自身のラインナップ削減に加え、年々上昇する夏の平均気温で、イタリアの路上でオープンモデルは絶滅危惧種である。そうしたなかニッチなファンの車探しに、中古車検索サイトは大きく貢献しているのだ。そういえば彼が撮影していた車も、プジョー308CCだった。

彼によると、インターネットならではの苦労もあるという。ネットショップ開始当初、委託販売の車を掲載したところ、ナンバープレート部分をうっかり消去しておかなかった。そのため、ある閲覧者が持ち主を特定。「先に成約されてしまったんだ」と振り返る。それはともかく彼は、より大切なことを話す。
「ネット販売では、詳細な写真やビデオを提供するとともに、書類を整備し、お客さんへの提案を反映した契約を明確に提示する必要がある。加えて、購入体験のエモツィオーネ(エモーション)をどのように創り出してゆくかということも考えなくてはいけなくなったね」。そしてこう締めくくった。
「対面で販売する以上に、お客さんの信頼を獲得してゆく必要があるのだよ」

いっぽう、これも筆者が知る別のディーラーは、少し前から二輪もインターネットで扱い始めた。所長によると「ネットを始めてみると、多くが州外からのお客さんでした」と驚きを隠さない。

レクサスはドイツ系プレミアム御三家を相手に主にSUVで奮闘中。ただしネット中古車市場の人気ランキングで浮上するのには、まだ時間を要しそうだ。

この販売店は、もともと日系2ブランドの4輪車を扱ってきた。日本車、とくにプレミアムモデルが付加価値を高めてゆくと、よりエンスージアスティックな顧客が増えるだろう。そうしたなかで、2輪のネット顧客が、彼らの扱う4輪にも興味をもつというシナジー効果も期待できないか、と筆者はみる。

新型コロナウイルス対策のリモートワークで、イタリア人の生活にインターネットはさらに浸透しつつある。筆者自身もテレビ会議システムを通じて、ぎこちなくも数回取材をこなした。そうしたなか、インターネットを通じた新車・中古車販売は、さらに加速すると考えられる。

ちなみに今回取材したセールスパーソン各氏の名誉のためにいえば、「教授が乗ってた」を彼らの口から聞いたことはないし、それを連発していた世代の販売員よりもずっと若い。それでも書いているうち、あの怪しい対面販売の口上が、ちょっぴり懐かしくなってきた、天の邪鬼な筆者である。

文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA

この記事を書いた人

大矢アキオ

イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを学び、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。NHK「ラジオ深夜便」の現地リポーターも今日まで21年にわたり務めている。著書・訳書多数。近著は『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)。

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