電動車には48万円もの補助金が! ドイツの太っ腹な新車購入補助制度【池ノ内ミドリのバイエルン日記】

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ディーゼル車は3000ユーロ(約36万円)、古い排ガス規定の車両から乗り換えは更に1000ユーロ(約12万円)加算

新型コロナウイルの感染拡大防止を受けて6週間以上ものロックダウンの末に、やっと外出自粛令が緩和されたドイツ。死者数は8000名を越え、ピーク時よりは随分と減ったとはいえ、一日の感染者数は数百名単位と、依然と多く、まだまだ予断を許せない状態だ。
コロナの影響で起きた経済的ダメージはリーマンショックを大きく上回ると予想され、世界屈指の経済大国ドイツにも深い傷跡を残した。ロックダウン解除を受け、徐々に経済復興が開始したとはいえ、大幅に収入が減ったり、失業した者も多くおり、経済活動が回復するには長期のスパンでみる必要があるだろう。

消費経済が低迷する中で、一般庶民が自動車を買うという事はかなり思い切った決断を要するのだが、そんなコロナ禍中の景気回復策のひとつとして、ドイツ経済を大きく支える自動車販売を活性化させるべく、新車購入補助制度を導入する事がわかった。その内容は、新規にガソリンやユーロ6dTEMPに適合したディーゼル車を購入には3000ユーロ(約36万円)、電気自動車・プラグインハイブリッド・水素車には4000ユーロ(約48万円)とかなり太っ腹だ。

ユーロ3や4の古い排ガス規定の車両から乗り換える場合には『リサイクリングプレミエ』が適用され、更に1000ユーロ(約12万円)加算される。また、既に実施されているメーカーや市町村のエコカー購入補助等と組み合わせると、もっとお得に新車を購入する事ができるとあり、特にエコカーの購入を検討している人にはかなりお得となるだろう。

中古車価格の値下がりが少なく高額で取引をされるドイツとあり、新車購入補助に適応される車種やメーカーは限られているとはいえ、これらの補助金をうまく組み合わせて新車を中古車よりも安く購入できるチャンスでもあるのだ。現時点では、街中でハイブリッド車を見掛ける機会は徐々に増えてきたと実感できるものの、いまだ電気自動車はごく僅かだ。
2020年4月のドイツ国内新車新規登記数をみると、電気自動車は僅か3.8%、ハイブリッド車は13.7%(その内プラグインは4.6%)と、ガソリン車は49.9%、ディーゼル車は32.1%と依然ドイツは内燃機関に需要が高い。その理由のひとつには、ドイツ人の生活スタイルにも関係しているのかも知れない。陸続きのヨーロッパの中央に位置するドイツでは、仕事やレジャーにも自動車の使用率はかなり高い。特に外回りの営業や技師等の多くは社用車のコンビ(日本ではツーリングワゴン)率が高く、アウトバーンを使っての遠出の出張も多い。一方で、バカンスシーズンには国をいくつも超えて、片道数千kmを走行しての旅行もごく当たり前というのがドイツのカーライフの主流となっている。

ドイツのナンバープレートの末尾に『E』がつくものは電気自動車専用ナンバーである。

ドイツに長年住む日本人の私自身を例として挙げると、仕事を中心に年間おおよそ25000~30000㎞程を走り、愛車のガソリン車で片道1300km以上を一日で、私ひとりで運転する事も年に数回はある。大半はドイツのアウトバーンを走行するのだが、速度制限解除区間は以前に比べて随分減ったとは言え、空いている早朝や夜中の時間帯には時速180~220㎞を出す事も頻繁にあるという状況で、もしも電気自動車に乗っていたならば、長い充電休憩を取りながら、もしくはこまめに充電しながら一日で1000数百kmの移動はほぼ不可能であり、それを見込んで1日早く出ると余計な経費の支出が発生してしまう。従って、電気自動車を長距離移動の仕事用に購入している者は私の周りでは誰一人いないのが現状で、重いバッテリーを搭載しているハイブリッド車もアウトバーンの走行では燃費が悪くなってしまう事から、いまのところ電気自動車と同様に選択肢に入れるのは難しい。また、大型連休の前後やバカンスシーズンには国をまたいでの大渋滞が起こる事から、もしも、電気自動車を運転していてバッテリー量にハラハラしなければならない状況になったら・・・と考えると冷や汗ものだ。

もうひとつの例を挙げると、私のオランダの友人が昨年購入したテスラで、自宅から息子が出場するル・マン24時間レースまで片道約700kmを応援の為に家族でやってきた。しかし、道中には2回のフル充電が必要で、そのために計3時間半の休憩が余技なくされたという。オランダからフランスのル・マンまでは、ドイツを経由しない為、途中を通過するベルギーも含めて高速道路の制限速度は最高120~130kmと高くはない。テスラのどのモデルかにもよるのかも知れない上、大人4名が乗車しての事とあり、必ずしもスペック表通りの『電費』とは言えないようで、急ぎの用事の時には充電時間も含めてかなり早めに家を出る必要がある。


また、都市部在住者には充電が自宅アパートの駐車場に備わっていない場合が大半であり、自宅近郊に充電ステーションがあるという恵まれた環境の人はまだごく少数派。実質的には戸建てに住む人以外には『必要な時に必要な場所で都合よく充電できる』環境には程遠く、充電ステーションを探すのにも一苦労しそうだが、郊外の一軒家に住み、毎日の通勤や買い物・家族の送迎等で電気自動車を利用するには文句なしに利点が豊富で、そのような目的で購入するユーザーは今後増加する可能性は高いと考えられるだろう。

電気自動車やプラグインハイブリッド車用の充電ステーションのインフラ問題は別として、国を支える一大産業である自動車を経済復興の足掛かりのひとつとして、新車購入補助という形でまずは国内消費を促し、一方でその機会を利用して古い排ガス規制の自動車からEV化へと導きは、ユーザーのカーライフスタイルにマッチすれば好条件と言えるのではないだろうか。

この記事を書いた人

池ノ内 ミドリ

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

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