【海外試乗】「BMW X5M/X6M」コンポーネントは共通でも似て非なるSUVの“M”

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新型X5およびX6をベースに、レーシングカー並みの走行性能と日常での実用性を両立する“M”仕立てを施したハイパフォーマンスSUV、X5MとX6Mが日本でも受注開始となった。ここでは、ひと足早く、アリゾナで開催された国際試乗会で体感したパフォーマンスをお届けしよう。

SUVにも共通する“M”の魅力とは

基幹車種が登場すれば兄弟車も刷新されて、ちょっと待つと“M”が追加されるというBMWの商品企画のルーティンに則って、X5が出てX6もそれに続き、新たにX5MとX6Mがラインナップに加わった。それぞれに“コンペティション”と呼ばれる仕様もあるので、計4モデルとなる。

パワーユニットはM5と基本的に同じV8ツインターボ。組み合わされるトランスミッションは8速のステップトロニックで、エンジンとのマッチングは抜群だ。日本にはコンペティション仕様が導入される。

専用のエンジン/サブフレーム/サスペンション/エンジンマウント/制御プログラムが採用されている点はいつものMの流儀である。V8ツインターボはM5などでお馴染みのユニット。最高出力600ps/6000rpm、最大トルク750Nm/1800-5600rpmのパワースペックは両者共に共通で、コンペティションは625ps/6000rpm。750Nm/1800-5800rpm。ノーマルよりも+25ps、最大トルクの発生回転数の上限が+200rpmの差を一般道で感じるのは難しい。4000rpm以下でも並々ならぬ加速力が得られるからだ。一切のストレスなく気持ちよく回り、トルクの付きも低回転域から良好で、瞬発力にも優れるこのユニットは、現代の“ベストV8”のひとつに数えられる。

X5Mはノーマルよりもスポーティでありながら、見た目通りの安定感ある走りが特徴。

エンジンだけでなく、トラクション性能の高さもX5M/X6Mの魅力のひとつである。xDriveによる前後駆動力配分の最適化や、アクティブMディファレンシャルによる後輪左右の駆動力配分の妙により、状況に応じて欲しいと思う駆動力が欲しいと思う車輪にかかっているので、トラクションロスがまったくない。750Nmもの最大トルクを有効に使うために、電子デバイスがいい働きをしているからなのだけれど、それはそういう絶妙なセッティングを施したMのエンジニアの技術力の高さの証明でもある。

X6Mは全体的にスポーティな印象だが、乗り心地や旋回挙動がもう少し洗練されるといいかもしれない。ただ今回の印象は個体差の可能性もある。

「ボディ以外は基本的にまったく同じです」との説明を受けたが、両者の乗り心地と操縦性には明らかな違いがあった。どの速度域でもX5Mは安定感があって乗り心地の変位量が少ない。X6Mはよく言えば全体的にスポーティな乗り味。路面からの入力は身体まで伝わることが多く、減衰が速いのでバウンシングがやや気になる。同じセッティングのはずなのに、X6Mのほうが引き締まった足周りのような印象を受けた。

ダッシュボード回りの風景は両者とも同一。リアシートの居住性はボディ形状から想像できるようにX5Mのほうが上下方向に余裕がある。

X6MはX5Mよりも全高が低く重量も若干軽いので、ハンドリングはスポーティであろうと想像していた。ステアリングの切り始めの反応は確かに速いものの、旋回姿勢が整うまでの過渡領域でたまに不安定な挙動を示すことがあった。X5Mは直進時でも旋回中でも基本的に挙動がとても安定している。もちろん、ノーマルのX5よりはステアリングレスポンスがよく、車高の高さがほとんど気にならない。どちらの車両にも電子制御式アクティブロールバーが装備されているので、ロール方向の動きは巧みにコントロールされるが、その効果がX5Mだとより実感できる。

例によってシャシー/エンジン/ステアリングのセッティングを任意で変えられるだけでなく、両者ともブレーキとxDriveも調整可能なのは嬉しい。ブレーキは制動力の立ち上がり方が変更できるが、思ったほどその差は大きくなかった。ただ、“M”の魅力は走りながらいろんなセットアップが楽しめるところにもあって、この2台のSUVも例外ではなかったのである。

フォト=BMWジャパン/BMW JAPAN ルボラン2020年5月号より転載

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2020/05/14 11:00

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