最大のライバルは従来モデル!?「BMW 1シリーズ」【JAIA輸入車試乗会】

山口礼
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2020/03/09 11:00

ARBの効果でFF化のネガを払拭

昨年末にモデルチェンジを行ったBMW1シリーズ。その最大のトピックはなんと言っても駆動方式をFRからFFに変更したことだろう。
このセグメントのライバル車種は軒並みFFもしくはFFベースの駆動方式を採用する中で、BMWが1シリーズで頑なにFRを使い続けるのは、メーカーとしての一つの拘りなんだろうと感じていた。しかし、それがFF化されてしまうとなると、そこに一抹の不安と寂しさのような感情を抱くBMWファンも少なくないはずだ。

ご存知のように、BMWのメーカーフィロソフィーは「駆けぬける歓び」であり、その優れたドライブフィールがFF化によって1シリーズから失われてしまうのではないか? というのが、その不安の正体なのだと思う。

ただし、FF化によって得られるメリットは多く存在する。やはりその中でも最も大きいのは室内空間だろう。室内空間を広く取ることができれば、当然同じサイズの車を作ったとしても後部座席には余裕が生まれ、荷室には荷物がよりたくさん積める、ということになる。


要するに1シリーズを求めるユーザーにとっては、新生1シリーズがその走りと使い勝手のバランスにおいて、BMWらしい哲学を守ったまま納得できる“落としどころ”を見出だせているのか、というのが一番の疑念であり期待のはずだ。今回はそこを主眼に試乗を進めていきたいと思う。

まず外観を簡単にチェックしよう。最近のBMWらしく一体型の大きなキドニーグリルを採用している部分などを除けば、概ねコンサバティブな進化と言える。とくに奇をてらうようなこともなく、多くのユーザーに抵抗なく受け入れられるはずだ。
また、全幅も広がり見た目の安定感も増したとは言え、その数値は1800mmと日本の都心部に問題なくマッチするサイズ感を保っており、ほぼ全ての立体駐車場にも入庫が可能なのも嬉しい。

室内スペースはどうだろうか。やはり注目すべきは、FF化によってより広くなった後席以降のスペースだ。後部座席の足元スペースはより広く取られ、大人の男性が座っても窮屈な思いをすることはない。そして、荷室スペースも大幅な拡大が図られ、後部座席のシートアレンジも多彩で、非常に使い勝手が良さそうだ。
車を走らせる前のチェックの段階では、内装の質感において物足りなさを感じる場合もあるかもしれないが、その使い勝手や居住性に関して大幅な進化を果たしたと評価できる。

いよいよ気になる走りをチェックしよう。結論から言ってしまうと、“諸元表に後輪駆動という文字がどうしても欲しい”あるいは“氷上コースなどでリヤタイヤをパワースライドさせてドリフトしながら走りたい”というユーザー以外であれば、FFになったデメリットを感じる瞬間はまず訪れないはずだ。
最高出力140ps、最大トルク220Nmを発揮するパワーユニットは過不足無く、3気筒でもBMWらしい滑らかな吹け上がりを楽しめる。また高速域におけるステアリングの直線での座り感と直進安定性はBMWらしくピカイチ。いざステアリングを切ってコーナリング体勢に入っても、コーナーの進入・旋回・脱出の全ての領域において、フロントタイヤがドライバーの意に反してコーナーのアウト側に膨らむ、いわゆるFF車特有のアンダーステアが現れる事は決してない。これは嬉しい驚きだが、コーナリング性能全体の味付けとして、むしろFRの先代よりもステア操作に対して軽快に反応する印象すらあった。


試しに、わざとフロントタイヤに意地悪をしてステア舵角を残したままアクセルを踏み込むような操作をしたとしても、アンダーステアが顔を覗かせるその一瞬手前で、電子制御の要とも言えるARB(アクチュエーター連続ホイールスリップ制限)と呼ばれるタイヤ・スリップ・コントロール・システムの効果が発揮され、違和感をほとんど覚えさせることなくノーズがドライバーの意図した方向に向きを変えていく。

このARBは、センサーが車体の姿勢を常にモニタリングし、従来のDSCを経由すること無く制御を行うので、従来に比べて約3倍の速さで姿勢制御が可能となる代物だ。
この制御に自信があるからこそ、基本性能としてのハンドリングは思い切って軽快な方向に振ることができているのではないだろうか。
走りの面において、この新型1シリーズの最大のライバルは自身の前モデルだという思想で開発が行われたそうだが、その点におけるこの車の開発は成功したと言っていいだろう。

車全体のパッケージとして評価するならば、室内スペースの拡大でハッチバックとしての使い勝手が大幅な進化を果たし、さらには走りの面においても成熟の域に達していた先代を凌ぐ走りをFFにして実現しているのだから、BMWはユーザーが納得行く“落としどころ”などに甘んじること無く、その想像をも凌駕する車として、自信を持って世にこの1シリーズを送り出しているのだろう。

【Specification】BMW 118i PLAY
■全長×全幅×全高=4335×1800×1465mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1390kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/1499cc
■最高出力=140ps(103kW)/4600rpm
■最大トルク=220Nm(22.4kg-m)/1480-4200rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前ストラット、後マルチリンク
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤサイズ=前後205/55R16
■車両本体価格(税込)=3,750,000円

お問い合わせ
BMWジャパン https://www.bmw.co.jp/

フォト:柏田芳敬(Y.Kashiwada)

この記事を書いた人

山口礼

1983年生まれ。16歳よりモータースポーツ活動を開始し、英国でフォーミュラカーレースに参戦しながら本場のドライビング理論を学ぶ。帰国後は活動の幅を広げ、豊富な経験を活かして自動車ライターとしても活動を開始。そのドライビング技術を活かしてクルマの素性を引き出すリポートを得意としている。

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